意外と可愛い所がある
お互いが緊張していて自分も高城もギクシャクしている。
その普段と違うギクシャクした雰囲気が寧ろ『これからやるんだろうな』というのをより一層演出していた。
お互い初めて同士故のあのギクシャクとした雰囲気はもう一生味わう事は無いだろう。
男性はこの年頃はサルになるとは良く言われてはいるのだが女性である私だって年頃の女の子なのである。
興味が無い訳では無い。
むしろ物凄い気になるし興味もある。
そんな二人は今すぐやりたいという気持ちを悟られたく無いと、出来もしないのにスマートにやり過ごそうとしてしまうからこそより一層ギクシャクしてしまっている事に気付けていない。
それを隠そうとスマート振れば振る程酷くなって行く様な気もするし、実際には酷いのだろう。
「とりあえず、カレー………作るか」
「そ、そうね」
「じゃぁ俺肉と野菜切って行くわ」
「あ、じゃぁ私はお米研いで炊飯器に入れて来るね」
そして高城は食材を仕込みに、私はお米を仕込みに作業を始める。
高城の野菜を切る音をBGMにしながら蛇口から出したお湯でお米を研ぎ、つけ置きする事もせず炊飯器へとセットする。
今の私ならまずお湯ではお米を研がないし、最低三十分は冷蔵庫でつけ置きしてから炊飯器で炊き始める。
そんな些細な所でも歳を取ったんだなと感じてしまう。
そして私はやる事が無くなったので高城の方を見てみると、高城は豚肉以外の全ての食材である人参、ジャガイモ、玉ねぎを微塵切りにしている所であった。
「え?微塵切り?」
「そ、そそ、そうだが?この切り方が微塵切り以外に見えるのか?」
「いや、そうじゃなくて………」
「………………だからだよ」
「え?何て?」
その事を思わず突っ込んんでしまうのだが妙に高城の歯切れが悪い。
その違和感を突っ込んんでも良いものかと悩んでいるとボソボソと高城が喋りだすも何を言っているのかさっぱり聞き取れない為流れで思わず突っ込んんでしまう。
「俺が小さい頃から野菜嫌いで、母さんが俺が野菜を食べやすい様に全部微塵切りにしてくれてたんだよっ」
「え?ジャガイモも?」
「ジャガイモも」
「何だ、意外と可愛い所があるのね、高城」
「うるせー、大きなお世話だっ」
しかし、この微塵切りのやり取りで私達はギクシャクした雰囲気が霧散していつも通りの感じ慣れた雰囲気へと変わるきっかけとなった。
そして私達は順番など何も考えず微塵切りにした野菜と食べやすいサイズにカットした豚バラ肉を入れて炒める過程をすっ飛ばしてそのまま水を入れ煮込んでいく。




