悪戯の方が優先度が高い
「ままーっ!!」
「ままだよーっ!くるくるーっ!」
そして保育園に行くと真奈美が私を見つけた瞬間に駆け寄ってくるのでそのまま両脇を持ってくるくるろ回って着地させる。
この様子では今日も元気いっぱいだったようで何よりだ。
保育園を変えても何とか馴染めている様で一安心する。
「北川さんでしたっけ?」
そしてそんな私達に男性が声をかけてくる。
すらりと身長は高く顔も普通にイケメンでさぞモテるだろうなーと言った印象である。
悪く言えばそれだけだ。
もし、数年前出会ったのならばときめいたのかも知れないのだけれども、今は不思議な程ときめかない。
「えっと、達也くんの………パパさん?」
男性一人で子供をいつも迎えに来ている姿が印象的であった人でもある。
「そうですそうですっ!マナちゃんにはいつも達也がお世話になっているみたいでっ」
「いえ、こちらこそマナがいつもお世話になってるみたいでっ」
そしてお互いにぺこぺこと頭を下げる。
「ちげーよっ!まなとはそんなんじゃねーよっ!」
そしてそんな私達に小さな男の子が顔を赤くして必死に否定し始める。
「す、すみませんっ!男一人で育てている為かどうしてもうもガサツに育っているみたいでしてっ」
そしてその男の子、達也くんのパパさんが更に深く、勢いも増して謝罪の言葉と共にぺこぺこと頭を下げ始める。
「いえ、気にしていないので大丈夫ですからっ。達也くんもいつも真奈美の相手をしてくれてありがとうね」
「ち、ちげーよっ」
そして私はぺこぺこする機械になってしまった達也くんパパへ気にしていない旨を告げると、しゃがんで達也君と目線を合わせていつもありがとうと言ってあげる。
すると流石に他人の親には強く出れないのか尻すぼみになりながら否定するものの、耳まで真っ赤になっていくではないか。
ははーん、成る程成る程。
それで、我が家のお姫様は?と思い視線を向けてみると私の服へ何かを擦りつけていた。
やけに大人しく静かと思ったらコレである。
そして真奈美にはまだまだ色恋よりも悪戯の方が優先度が高いらしい。
頑張れ達也君。
「ってこらマナっ!汚いからやめなさいっ!」
「おてて、汚れたんだもん」
「じゃぁ、あわあわで手をあらうんだぞっ!いくぞっ!」
「あわあわーっ!」
そしてどうやら真奈美はアリの巣を見つけてほじくっていたらしく、無残に入口を破壊され入れなくなったアリ達が右往左往しているのが見えた。
因みにこの前はこのアリの巣の入口にバッタを突っ込んで塞いでいた。
恐らく毎日真奈美により何かしらで入口は塞がれ、それを退ける仕事をこの働きアリ達は余分に課せられている事が伺えてくる。




