アホくさ
「あぁーお腹すいたぁーっ!お母さんはお腹すいたなー」
そして私も混ざる。
そして砂の城作りからおママごとへと変わり、小一時間おママごとした後はローラー型の長い滑り台を遊び尽くす。
子は鎹とはこういう事なんだと、その本当の意味が分かった気がした。
でも私達はもう離婚しており、元夫は今日一回も私を真正面から視界に入れてはくれなかった。
覆水盆に返らず、天に唾を吐く、自業自得、因果応報、etc、etc、etc。
過去生きてきた人々の残してきた言葉の数々が私に突き刺さる。
それだけの言葉が突き刺さる程気をつけろという裏返しでもあるのであろう。
それでも、縁が切れた訳では無い。
今はそれだけでも私は凄く嬉しかった。
◆
「どうした颯太、お前から飲みに誘うなんて珍しい事もあるもんだな。それもこんな真っ昼間から。しかし、この店に来るのも金が無かった大学生の時以来だな」
「別に良いじゃねーかよ。俺だってそんな事もある。つか奢るんだから文句は言うなよ」
「別に嫌とは言ってねーだろ。ただで飲み食いできるんだ。それだけで最高に上手い店に早変わりってもんだ」
真っ昼間から開いている居酒屋など大手チェーン店ぐらいしか無い為、大学時代からの親友を俺の奢りという餌で呼び寄せる。
確かに、こんな真っ昼間から外で飲むなど恐らく初めての体験ではなかろうか。
何だか不思議な気分である。
「女か?」
「直球だな。まぁ、女の事で間違いない」
「そっか。いろいろあったもんな、お前。熱した時には感じられなかった事も冷めてから改めて感じる事もそらあるわな。人の心などそんな単純じゃぁねぇよな」
そして席に座るや否やコイツは単刀直入に聞いてくる。
しかし、引く所は引くというのを分かっている為それ以上は俺から話題に出さない限り突っ込んでこない。
そういう所がコイツの良い所である。
「そうだな………何か、色々考える事があってな」
「ほうほう」
「友達の話なんだが───」
そんな分かりやすい枕詞を使い俺の今思っている事を話す。
「なるほどなぁ………とある女性が後悔してそれでも必死に生きている姿を見て元婚約に対してたかが浮気一回で婚約破棄するには間違っていたのだろうかだって?」
「ああ、そうだな」
「アホくさ。許して良い訳ねーだろ。恋人同士じゃねーんだぞ。家と家、互いの友人や職場への報告とかもするんだぞ。浮気をしたらそれら全てに関わっている人達を裏切る事になるという事が本当の意味で理解出来ていないんだ。一度全てを失って心の底から後悔しないと一生分からねーよ。許すなんて持っての他。男は浮気する生き物だの、寂しかったのだの、ただ単に私の理性は欲望には勝てませんって自己紹介じゃん。そこで許してしまうと何も変わらない事くらい考えたら分かるだろ」
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