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 「待たせたな。ハイデラント辺境伯ゲッツ・ジルバーマンとその妻マリー。余がファナティカー王国王太子ナールナルだ。何用だ?」

 王太子は婚約者のブルーメのアドバイス通り、堂々と大広間の壇上に姿を現した。


 「オウオウオウオウオウーッ」

 ぶるんぶるんぶるるる~ん


 「オウッ! うちの娘を泣かせた野郎がどんな奴かと思やあ、対マンたあ見上げたもんじゃねえかっ! その意気に応えて、一撃でオシャカにしてやらあっ!」


 ゲッツの士気は最高潮で、今にも殴りかからんばかりである。


 ナールナルは思わず引きかけたが、ブルーメは押しとどめ、前面に出た。

 「ハイデラント辺境伯?随分と偉くなったもんじゃないの? えっ? 坂野(さかの)凡太郎(ぼんたろう)?」


 ◇◇◇


 「なっ、何故? その名前を?」

 転移前の名前を出され、さすがのゲッツも毒気を抜かれた。代わって前に出たマリーには、

 「あんたは亜町(あまち)真理(まり)ね。全く。ヤンキーは15の時の恋愛貫くって本当なのねー。だっさー」


 マリーも毒気を抜かれ、その場に立ちすくんだ。


 ゲッツもマリーもその場のノリで勝負するという大きな特徴がある。その特徴からくる弱点を突かれた形になってしまった。


 もはやこれまでかと思われた…… その時、救世主はそこに現れた。


 「あらあ。誰かと思えば、花ちゃんじゃなあい~」


 ◇◇◇


 「ひっさしぶりい、転移させて以来~? 何やってんの~?」


 セバスの駆る騎馬(バイク)の後部座席に乗る女神(ゲッティン)の必殺技「一切、場の空気を読まない」が炸裂し、ゲッツもマリーも我に返った。


 「花ちゃんって、あたしらと同じ中学(おなちゅう)だった。佐藤花子(さとうはなこ)~?」


 「おいおい、マリー。佐藤花子(さとうはなこ)って、誰だ? 同じ中学(おなちゅう)にいたか?」


 「まあ無理ないわ。中学の頃は大人しかったもの。ほら、成人式の日に『今は東京でブイブイ言わせている』と一席ぶった()いたじゃん」


 「あ~いたいた。梅宮(うめみや)の野郎が『俺、密かに花ちゃん好きだったのに。あんなんなっちまった』って泣いてたわ」


 ◇◇◇


 「えーいもうっ! これだから元ヤンはっ! いいっ! あたしはもう『佐藤花子』なんて、ダサい名前は捨てたのっ! いいっ!あたしの言うとおり復唱してっ!」


 「へ?」


 「私の名前は(マインナーメイスト)佐藤花子(ブルーメ・ツッカー)』です」


 「「「マイン・ナーメ・イスト・ブルーメ・ツッカー」」」


 「gut(グート)!」


 あはははは。周りが和やかな雰囲気に包まれた時、女神(ゲッティン)の必殺技「一切、場の空気を読まない」が2度目の炸裂をした。

 「あははは。何言ってんの。ブルーメ・ツッカーって直訳すれば、『花・砂糖』じゃん。だっさー」


 ◇◇◇


 「言ってくれたわね。あんたたちっ! もう許さないわっ!」

 ブルーメは怒り心頭に発した。


 「まっ、待て。佐藤花子。今のは俺らでなく、このオオボケ女神(ゲッティン)が……」


 「やかましいわっ! 喰らえっ! 最終奥義っ! 『◯ュリアナ東京』!」


 じゃ~ん。ミュージック開始と共に、大広間の壇上の一部がせり上がり、カクテル光線が飛び交う。


 いつの間にか、羽根つき扇子を身に着けたブルーメはお立ち台の上で、音楽に合わせ、踊りだした。


 「おっ、おおっ」

 ゲッツとセバスはまるで魅了(チャーム)の魔法にかかったかのように、お立ち台の前に吸い寄せられて行く。


 吸い寄せられたのはゲッツとセバスだけではなかった。


 「ブルーメちゃん。超カッコイイ。惚れ直したよお~。ねえねえ、僕も一緒に踊ってい~い?」

 王太子はお立ち台の上に登ろうと、右足をかけた。


 ゲシッ!


 ブルーメの右足のキックが、王太子の顔面を直撃し、王太子はそのまま仰向けに倒れた。

 「ああっ、ブルーメちゃん、素敵」と呟きながら。


 ◇◇◇


 「ええいっ! 王太子だか、明太子だか知らねえが、野郎の分際でこの神聖なお立ち台に登ろうたあ、ふてえ野郎だ。野郎どもは黙ってこのあたしにひれ伏せいっ!」

 

 ブルーメのその言葉にゲッツとセバスは思わずひれ伏した。


 だが、マリーは違った。真剣な目つきでブルーメのダンスを見つめている。


 ◇◇◇

 

 「ほおーお。亜町(あまち)真理(まり)。あんたの目はまだ死んでいねえなっ! どうだっ?このあたしと、この神聖なお立ち台で戦ってみねえか?」


 ここで女神(ゲッティン)の必殺技「一切、場の空気を読まない」が3度目の炸裂をした。

 「ねえねえ。あたしは? あたしは?」


 自らを指差す女神(ゲッティン)にブルーメは一言だけ言った。

 「オオボケはいらん」


 「ひっどーい」

 女神(ゲッティン)は泣いて、後ろを振り向いたが、そこには三頭(三台)騎馬(バイク)がいただけだった。

 「ちっくしょー。どいつもこいつも花ちゃんにたぶらかされやがって、見る目ねえな。この国の男衆はっ!」


 ◇◇◇


 マリーはゆっくりとお立ち台に向かって歩き出した。


 お立ち台の上ではブルーメが踊りながらも、挑発的な視線を送り続けている。


 マリーはお立ち台のすぐ脇で立ち止まると静かに口を開いた。

 「花ちゃん」


 「へ? 何よお。亜町(あまち)真理(まり)


 「あんたが『◯ュリアナ東京』で踊っていた頃、あたしはここでひれ伏しているゲッツ(このバカ)と組んで、暴走族(ゾク)の抗争を繰り返していた。そんな女が踊りの勝負であんたに勝てる訳ないよね」


 「ふっ、その通りね」


 「だけどっ! だけどな、仮にも名指しで勝負を挑まれて、受けて立たねぇとなると、女がすたるってもんだよなあっ!」


 「ふっ、さすがは亜町(あまち)真理(まり)


 「おらあっ! 勝負したらあっ!」

 マリーは気合一発、お立ち台に飛び乗った。


挿絵(By みてみん)

©ありま氷炎様 狂拳マリー



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― 新着の感想 ―
[良い点] >「やかましいわっ! 喰らえっ! 最終奥義っ! 『◯ュリアナ東京』!」 吹き出しました。昔ごっこ遊びをしてました、懐かしい!
[良い点] おおー!まさかブルーメちゃんも転移者とは! お立ち台!ジュリ○ナ東京~! 昭和の香りにメチャウケましたwww はてさて勝負はどうなる!?
[良い点]  今回は濃縮タイプですね。  中身が濃ゆいです。 [一言]  なんか色んな時代錯誤していて、相変わらず面白過ぎます。  どうして、ここまでギャグが炸裂できるのか、その奥義を伝授して戴きたい…
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