二話 成井 那奈
「おはよぉゆうと~、一緒に学校いこー」
「あーはいはい行くかー」
朝ごはんを食べている俺に寄りかかってくる。俺の家の合鍵を持っているあんこは毎朝欠かさずうちに来る。
一人暮らしで朝ごはんも弁当も作っている俺は普通の学生より朝が遅くなってしまう。
だから怠け者なあんこの方が朝が早いだけであんこはいつも母親に叩き起されてる。
俺が食べようとして箸を向けたウインナーを横から凄まじい速さでかっさらっていく手が見えた。
「んん~♪おいひぃー」
「お前!俺のだぞ!」
あんこが俺が焼いたウインナーを美味しそうに食べている。
「ゆうとのご飯が美味しすぎるのが悪い!」
逆に怒られた…理不尽!
俺は洗面所で歯磨きをし、髪を整え、服装に乱れがない確認する。
「うん!今日も私のゆうとはイケメン!」
「そうかーあんこも可愛いからな」
俺はあんこの頭をポンポンと撫でる。
「そ、それじゃあ手を繋いで引っ張ってね!」
「お前なぁ…少しは自分で動きなさい!」
「もっと手を強く握ってくれたらいいよ?」
俺はあんこの手を強く握ってやる。
するとあんこ顔がにへらと緩む。
ーードキッ
ふとするあんこの顔にドキッとさせられる。
こんなんであんこの怠けを改善させられるのか…
俺は自分があまりにあんこに弱いことを身にしみて感じていた。
ーーー
【あんこside】
はぁ…びっくりした…
いきなりゆうとが可愛いなんて言うから…
たまに自然に言ってくるから心が持たないよぉ。
大丈夫?声、裏返ってなかったかな?
私は彼、「温和ゆうと」の彼女だ。
小学2年の時にもう我慢出来ずに思い切って告白した。ゆうとと付き合えた瞬間は私にとって人生一嬉しかった出来事だ。
思いが実った時は一日中泣いていたのを覚えている。泣いている傍らでずっと頭を撫でてくれたゆうとは本当に優しかった。
最近、ゆうとがかっこよすぎて甘えすぎてしまう…。嫌われてないかな…?
「おはよーあんこ&ゆうと!」
「おはよう!今日もラブラブだなー」
登校中にすれ違った同級生から冷やかしの挨拶を受ける。
と言うか、もう相手も冷やかしとは思っていないのかも。
私達は学校公式のカップルみたいになっている。今更弄られたってむしろ嬉しいくらいだ。
俺らは教室に入る。私はゆうとと幸運にも同じクラスだ。
俺は神様が私にゆうとに甘えなさいと言っているのだ!
「おはよう。あんこ。ゆうとくん」
「おはよー!ななっち!」
私は親友の成井 那奈に抱きつく。
那奈とは高1からの友達だ。
肩にギリギリ触るくらいの黒髪に、パッチリとしたおめめ、スッとした鼻に小さくぷっくりとした唇。すんごい可愛い!
身長は小さい私より少し上くらいなので小さい部類に入る。お胸は……すこーし控えめ…
「ゆうとくん…毎日ほんと大変ね」
「おはよう、ななちゃん。慣れたもんだよ」
ななとゆうとが互いに笑い合う。
むー…2人とも私の事で笑ってる。
ゆうとと那奈は私経由で友達になった。
私経由でね!
「いーなぁーあんこ。私もこんな彼氏ほしー」
「ななっちモテモテじゃん!男なんて腐るほどいるでしょ?」
ななっちはモテモテで、週に3~4人は告白してくるそうだ。
ななっちは苦笑いしながら言う。
「どうにも、迫ってくる男子が怖くて…」
「そうなのかー」
私は少し背伸びしてななっちの頭をなでなでしてあげる。ななっちは微笑む。
「男士が全員ゆうとみたいだったらいいのにねー」
「ゆ、ゆうとはあげないよ!!」
「分かってるよ」
今度は私がななっちになでなでされる。
ふぁ…気持ちいい…
そばで笑っていたゆうとが言う。
「ななちゃんなら、いい男が見つかるよ」
「そうだよ!」
さすが私の彼氏。いいこと言う!
「そ、そう?ありがと…」
ななっちは恥ずかしそうに俯きながら呟く。
私は抱きつきたい衝動にあっさりと負け、また、ななっちを抱きついていた。
「あ、あんこ!やめっ…」
「ななっちかわいー!」
ホームルームのチャイムが鳴ってたのに気づかなかった私達は後で私だけ先生に怒られた。
………理不尽だ!!