襲撃開始
私達は葛之葉の案内の元慎重に向かった。
向かう先は森の中に佇む洋館。
そこには妖研究所の捕縛部隊とやらが潜伏しているそうだ。
充分に警戒しながら向かうつもりだ。
一緒について来たのは私以外だと葛之葉、楠葉、来世の三名。
土筆には先に向こうの天井に潜伏して貰うことにした。
正直行きたくないのだけれど、放置しておくわけにもいかない。
彼らは放置したとしても必ず私の元へやって来て捕縛しようとしてくるからだ。
そう言う理由で、さっさと駆逐することにしたのである。
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三味長老はしばし息を殺して待っていた。
二班室長のうわんからの情報では、本日ここにやって来るらしい。
そして今、学園方向から複数の妖反応を合わせたような存在がこちらへやって来るのが感覚器で分かった。
無言で手を上げると、皆が戦闘態勢に入る。
ゆったりと休息していた男達も、殺意を一瞬見せ、直ぐに気持ちを押さえて武器を構える。
殺気を相手に悟らせる訳にはいかないのだ。だから息を殺して獲物が近づくのを待つ。
しばしの静寂。
やがて屋敷の窓から見える入口にやって来る三人の少女たち。
何やら話に花を咲かせ、こちらへの警戒など皆無で笑っている。
本当にあの中にいるのか? と思わず疑ってしまうほどに彼女達は一般的な学生を演じていた。
無言のまま、銃を構える。
気付いてない三人の少女向けてポインターを合わす。
丁度狐娘がこちらに背を向けターゲットに何かを告げた瞬間だった。
一発の銃弾が狐娘の後頭部に直撃し、赤い花が咲く。
「撃て!」
無数の銃弾が驚きに目を見張る少女たちに発射された。
音もなく倒れる狐娘、その前に居た赤い髪の少女に無数の銃弾が突き刺さる。
隣にいた少女も逃げることなど出来なかった。
一つ二つと銃弾を受け、踊りだすように激しく動く。
「止め」
彼と近くの部屋にいたメンバーが銃撃を止めると、逆方向の部屋から狙撃していたチームも銃撃を止める。
屋敷の入り口を中央として右と左、一階と二階に別れて四チームで狙撃したのだ。
簡単に終わり過ぎてここまでする必要は無かったな、と三味長老が息を吐く。
「確認に向かう」
チームは二人ずつ、一階のチームだけ三人づつで狙撃をしており、一人を残して三味長老ともう一人の兵士が死体確認へと向かう。
部屋を出て警戒しながら屋敷の外へ。
入口を蹴り開け、左右の壁で一度待機。
ゆっくりと外を見て危険がないか安全確認。
掌で合図すると、バディの兵士が率先して外に出る。
銃を構え、右に左に周囲を確認。
しかし周囲に敵対存在は見当たらなかったようだ。
「クリア!」
その言葉を聞いて三味長老も前にでる。
「簡単な作業だったな」
「捕縛は名ばかり、生死問わずならこんなもんでしょう」
二人して遺体に近づく。
銃で生存確認するためにライフルの先端で突いてみる。
……突き抜けた。
「っ!?」
遺体がある筈の場所を突き抜けたライフルが高梨有伽と思しき死体の後頭部に突き刺さり先端が見えなくなる。
だが、今ので気付いた。この死体は、ここに存在していない。
「いかんっ!?」
はっと気付き顔を上げた瞬間だった。
男の悲鳴が洋館から響き渡った。
ついで銃撃が無数に始まる。
「総員退避ッ! 罠だッ!!」
思わず叫ぶ。
三味長老も叫ぶと同時に近くの茂みに飛び込む。
バディの兵士も同じく飛び込み周囲に視線を走らせた。
「い、一体何が!?」
「察知されたのだ。みろ、死体のあった場所だ!」
三味長老の言葉に兵士が視線を向けると、洋館入口にあった筈の三つの死体が霞のように消える所だった。
後には葉っぱが三枚ひらりと地面に落下する。
「これは……」
「化かされた……狐娘が居ただろう、おそらくあの小娘だ!」
クソっと舌打ちしながらもソートフォンを弄って連絡を取る。
「本部、こちら三味長老。援軍の要請を求むっ。クソッ、大人しくやられてりゃいいモノをよぉッ」
だんっと地面に拳を叩きつける。
先程まで忙しない怒号が響いていた洋館は、まさにホラーハウスのように不気味に静まり返っていた。
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「にょほほほほほっ、見たか見たか有伽よ! 妾の幻術が冴えわたっておるわ!」
調子に乗らせちゃダメな奴葛之葉。これで油断してくれたらいいなぁっと思ってお願いしてみたらあいつら普通に幻射殺しやがった。どこが捕獲だよ。殺してんじゃん。
まぁ、私達から見れば何にもない、いや、葉っぱしかない場所に銃弾撃ち込みまくってただけなんだけどさ、普通に向かってたら死んでたかもと思うと葛之葉が居てよかったのだが、この天狗になってる駄狐見ると素直に褒められないのは何でだろうね?
あと実際にあいつら倒してくれた土筆には普通に賛辞を送る予定です。




