軽音始めました
「と、いうわけで、本日は高梨さんに来て貰っちゃいましたーっ」
わー、ぱちぱちぱち。と告げる為替梃。
たった一人ハイテンションだが、その周囲はなんか暗い。
というよりは、無理にテンションを上げたせいで周囲が引いたのが正解か。
昨日こっくりさんで盛りあがったのかよくわかんない状況になった私は、本日、梃により軽音楽部へと連れて来られていた。
なんでも昨日誘おうと思ったけど先越されたので今回は予約、なのだそうだ。
そんな感じで朝から私はここに来る事を約束させられたのである。
で、放課後になると、喜色満面の梃に拉致され私はここにやって来た、という次第である。
正直軽音連れて来られても私は何も出来ないんだが?
とりあえずヒルコに任せるからよろしく。
ヒルコが私もさすがに軽音は……とか言ってたけど、そう言いながらもちょっと興味あるみたいな態度だったのでもしかしたら上手く話を合わせられるかもしれない。
がんばれヒルコ。
いや、無理だって、私が音楽なんて分かる訳ないじゃん。
Jポップだってよっちーに誘われてカラオケ行った時に必死に覚えようとして真奈香と歌った口パクソングだけだし。
あの時よっちーに有ちゃん歌ってないやーん。とかダメだしされたくらいだぞ。
それからは音楽覚えようと思って数曲買ったけど、もはや難し過ぎて覚えられんわっ。
最近の曲なんざ意味不明だし。なんで歌いながら舞台駆けまわるのさ!?
あの八十神九十九とかいうの意味不明過ぎる。
「おはよ」
福島騫音と三枝秋香の二人がやって来た。
そう言えば秋香も軽音部だっけ?
「あ。高梨先輩……」
私達が人殺しだと知ったせいか、秋香はどこかよそよそしい。
私としてはどうでもいいので気にせず見学者用の席に座る。
「あ、ちょっと有伽、有伽もドラムやるんだから座っちゃダメだよ」
聞いてないんだが!?
しかもなぜドラム? ああ、そう言えば空いてるんだっけ?
「ええ? ちょ、ワタシドラムなんてできないよ!?」
「大丈夫、曲に乗って適当に叩いてれば問題無いって」
「ちょ、ちょっとてっこ先輩、流石にそれは……」
「いいじゃん別に、有伽なら出来るって」
なんだその根拠のない期待は?
私は無理だぞ。そんなのできないって。
「ほらほら、こっち座って」
しかし、ヒルコの否定も秋香と騫音の心配も気にせず私をドラムの座席に座らせる。
いや、だからできないってば。
だからこんな棒渡されても困るし。
あー、もう、ヒルコ、適当に叩いてやって。
私の言葉にヒルコが適当にドラムを叩く。
って、ヒルコ、上手いよ、無駄に上手いから。これはやばいかも。
ほらぁ、案の定梃が目を輝かせてるじゃん。
「いいねいいね、やっぱり有伽は出来ると思ったんだ。折角だし音合わせしよ」
「ええ? ちょっと……」
「はぁ、とっきー、あきらめよう。てっこ先輩多分どんだけ諭しても一度は音合わせしないと納得しないよ」
「……はぁ。仕方ありませんわね。高梨先輩、お願いしますわ」
どうでもいいけど、有伽先輩、じゃないんだな。
まぁいいか。とりあえずヒルコに任せよっと。ヒルコもヒルコでちょっと楽しそうだし、そもそもが学校生活はヒルコが楽しめるようにと居残ったのだ。彼女が楽しんでいるならいいや。
私はただただ無心でいよう。
しばし、音楽活動が始まる。
正直言えば音楽とドラムは全く合ってない。
でも皆が楽しそうなので問題は無い。強いて言うならドラム叩く係だから物凄い音で耳が辛いくらいだろうか。
ヒルコ、悪いんだけど耳に届く音減らしてくれない?
ヒルコにお願いして音楽を緩和して貰う。
さすがにライブと同じ音響を間近で聞かされるのは勘弁だ。
そういうのは音楽好きな人がやってくれればいい。私は御免こうむる。
二時間程が経っただろうか、なんやかんやで普通に部活やってしまった気がする。
こいつら何曲持ちネタあるんだ?
正直途中から飽きて来たんだが。
だけど私の身体はヒルコがドラム叩きに使っているのでここから動けない。
一人聞く気の無い音楽聞かされ私だけがまいってる訳なんだが、これ、さっさと終わってくんないかな?
って、まだやんの?
「あー、そろそろ夕方になってるよ」
「冬が近いから日が落ちるの早いよ。そろそろ片付けないと」
「高梨先輩、そのドラムはそのままにしといて。デカいから動かさないことになってるの」
なるほ……ど?
確かにこれをいちいちしまってだしてしてたら時間と労力が掛かり過ぎるか。
「なかなか良かったよ有伽。明日からも参加してよーっ」
梃がなんか気に入ったようでまた音楽しようと言ってくる。
残念だけど私はそろそろヤバそうなんだよね。こんなことしてる場合じゃないと思うんだ。
「気が向いたらね」
と、いうわけで気が向いたら、と告げることにしたのだった。いつやるとは言ってない。




