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妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第一節 狐狗狸さん
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こっくりさん

「んじゃ、始めようかぁー」


 空き教室の一つにやって来た私達は、一つの机に紙を広げる。

 ひらがな50音と濁点と半濁点が描かれ、右上に【いいえ】左上に【はい】の文字。そしてはいといいえの間には神社のマーク。

 これがコックリさんを行う上で必要になる用紙である。

 相生美園が嬉々として広げ、その中央に十円玉をぽーいと放り投げる。


 やって来たのは私と美園、縷々乃、紫乃、和馬に加え、勝手に付いて来た来世と私がもしもの時を想定して呼んでおいた葛之葉。

 この面子でコックリさんをするのである。

 なんでこいつ等はコックリさんなんてしたいんだろうね? 狐ならすぐ横に居るのに。


「んじゃ、説明するね。基本は皆で人差し指使って十円玉を押さえるの。その内コックリさんが降りてくるから、聞きたい事を聞くんだよ。終わるまで誰も指を離しちゃだめ。呪われるからね。で、帰って貰う時はお帰りくださいって告げるの。はいってこっくりさんが告げたら、神社に十円玉を連れて行って、そこで終わり。後はこの十円を使いきればよし」


 結構緩いと言うべきか。


「ちなみに呪われるとどうなるの?」


「今回は三回回ってにゃーんと鳴く呪いが振り掛かります」


 ショボっ!?

 というか呪いの内容は美園が決めるのかよ!?


「はいはい、見学組はそこに居てねー」


 んじゃ、始めるよ。と十円玉に人差し指を置く美園。

 縷々乃と紫乃が追随し、私と葛之葉が参加する。

 なんだ、葛之葉も参加するのか。


「んじゃ、こっくりさんこっくりさんおいで下さい……」


 美園が呪文と呼べるかどうか分からない言葉を繰り返し始める。

 すると、十円玉がゆっくりと動き出した。


「おお、ほんに来よった」


「そりゃ妖使いですから。さ、誰から聞く?」


「ん。紫乃が最近隠しごとしてる。私に隠してることは何?」


「ちょ、縷々乃ちゃん!?」


 驚く紫乃、彼女が必死に止めようと指に力を入れるが、十円玉はゆっくりと動き出す。


 ぷ・れ・ぜ・ん・と・よ・う・の・ば・い・と


 プレゼント用のバイト?

 紫乃が困ったような顔をして真相を告げた。


「えっと、その、コンビニでバイトしてるの、縷々乃ちゃんの誕生日プレゼント買うために……」


「えぇ!? そんな、別にバイトしなくても」


「前に縷々乃ちゃん欲しいって言ってた赤いワンピース、プレゼントしたかったから」


 恥ずかしそうにはにかむ紫乃に、思わず抱き付きそうになる縷々乃。残念ながらすんでのところで思いとどまる。なにしろここで指を離したら呪われてしまうからだ。


「ご、ごめん、これ聞くべきじゃなかったね」


「ううん、いいの。秘密にしたかったけど縷々乃ちゃんに疑われたくないし」


 そう言って恥ずかしそうに俯く二人。

 なに、この二人デキてんの?

 まぁいいや、気にしないことにして次行こう次。


「んじゃ、次は小峠さん、行ってみよう」


「え? えーっと、それじゃぁ、縷々乃ちゃんの秘密、とか?」


 あ、さりげなくやりかえしやがった。

 そして縷々乃の秘密が暴露される。

 何が暴露されたかって? 濃いらしい。何がってそれは言えない。縷々乃が凄く恥ずかしそうに顔を赤らめ泣きそうにしながら俯いてプルプル震えるくらい恥ずかしいことだから。

 そこの男子ども、以外そうに下半身に視線向けんな、殴り飛ばすぞ。


「ご、ごめん、聞いちゃだめだった……」


「お、おあいこ、だから……」


 どう見ても過剰反撃だろ。縷々乃ちょっと可哀想だな。

 まぁ、普段ちょっと不敵なところあるし、こうやって恥ずかしそうにしてる方が可愛げがあっていいのか。


「え、えーっと、じゃあ私は……この教室の中に居る誰かの好きな人は?」


 いや、誰か好きな人って、誰のが出るか分からないんじゃ……

 え? それが良いんだって? 意味が分かんない。


 た・か・な・し・あ・り・か


 あ、これ来世のじゃね?


「ダメだ、これ誰のか分かり切ってる……ほ、他には?」


 おい、質問は一人一回じゃないのかよ?


 か・つ・ら・ぎ・ら・い・せ


 ……ん? 来世が好きな奴がこの中にいるのか?

 私は誰だ? と視線を向ける。

 しかし、皆も探るように見回していた。

 おいおい、来世好きな奴誰だよ?


「も、もしかして有伽、俺の事を……」


「いや、それはない」


「ごはっ!?」


 崩れ落ちた来世。誰かこいつ好きな奴居んの? 遠慮せず手を上げてくれ。あげるよこれでよければ?

 しかし、誰からも声は上がらない。

 このこっくりさん、もしかしてポンコツなんじゃ?


「じゃ、じゃー高梨さん」


「え? あ、ああ。えーっと……」


 一瞬来世を好きな人は誰? と聞こうかと思ったのだが、自分に来たら嫌なので謎は謎のままにすることにした。


「この学校にまだいる妖研究所関係者は?」


 動いたのは葛城来世という名前。いや、そうだけど、そうなんだけど。

 あ、もう一つ名前が……半沢佶衛門? 誰よ?


「半沢先生?」


「え? 先生?」


「うん、理科の先生だよ、確か。ちょっと暗い感じの」


 半沢先生も紫乃に暗いと言われたくは無いだろう。

 しかし、やっぱりまだ居たのか。

 後で会いに行っといた方が良さそうだな。土筆にも連絡しとこう。


「んじゃくーちゃんどうぞ」


「妾かの、んー、そうじゃのー。この中で一番最初に結婚するのは誰かのー」


 何つーことを聞くんだこいつは。


 た・い・が・か・ず・ま


 まさかの見学者だよ。


「え? 僕!?」


「ちくしょうっ。なぜ俺と有伽じゃないんだ!?」


「アホか」


 コックリさんってこんなもんでいいんだっけ?

 そんな事を思っているうちにコックリさんが終わる。

 でも、折角なので少しはハプニングがあった方が良いかなって、ことで葛之葉をヒルコに頼んで人差し指十円玉から剥がして貰う。


「ほえ?」


 そしてクルクル回った後でにゃーっと叫ぶ葛之葉を見て笑い合った私達であった。

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