意外な繋がり
「高梨さんはテレビ見てる?」
その関係が明らかになったのは、私に向かって觀月空枝が何気なく質問したこの一言が始まりだった。
不覚にも敵とデートしてしまった翌日の休憩時間、いつものようにヒルコがパーリーピーポーに巻き込まれたのである。
「テレビ? えーっと高港に居た時は見てたけど……最近はほら、迷い家だから、あそこテレビないんだよね」
「んだな。テレビ置いてとは言った事あんだけど、雄也の奴電気どうやってつくればいいかわがんねとかで家電製品置けんでや」
テレビばかりか家電製品使えないって……地味に使えないな迷い家。
太陽光発電にしたら? とか美三留が言うが、雄也は取り入れるとは思えない。なんだかんだ言って使えないだろう。
そもそも亜空間内で蓄電出来るとも思えない。
「実はさー、最近朝8のアニメに嵌っちゃってぇ」
「え? 空枝っちアニメ見てんの?」
「弟が見てたからぼーっと新規アニメ見てみたんだけどさぁ、なんか続き見たくなっちゃって」
「朝8っつったら日曜のアニメか。確か今は魔鋒少女エイカじゃなかったか?」
と、話に加わって来たのは江西総一郎。おちゃらけ糸目の異名を持つ衝立狸の妖使いだ。
「そう、魔鋒少女エイカなのよ~っ。女の子が伝説の魔槍に選ばれて闘う奴!」
「觀月さんあれ見だしたのか。でも前のヒミカからの続きだから今から見るより前のも見といた方が良いと思うよ」
「え? そうなの?」
「ヒミカだと。ならばヒミカのDVDを貸してやろう。全巻揃ってるぞ」
そして総一郎の後ろから話題に入って来る財前博次。
「財前君も魔鋒少女シリーズ見てるんだ」
「いや、俺はアニメは全てチェックするからな。魔鋒少女シリーズだけじゃないぞ。魔包少女シリーズも魔烹少女シリーズも魔宝少女シリーズも網羅している」
「あの割烹着着て闘う魔烹少女もかい!? 是非見せてくださいっ」
どうやらこの話題はコアなファンを目覚めさせてしまう禁句だったようだ。
小夜音が苦笑いしている。
「ねぇねぇ財前氏、魔抱少年シリーズは?」
「ぬ、安心院、貴様BL派か! もちろんアニメはあるぞ、妹がせっせと集めているからな」
「よし、見せてくださいっ」
そして別のマニアが立ち上がった。
というか、そもそも他人にアニメ貸し借りって違法になるんじゃなかったっけ、家族で見る分には良いけど知り合いに貸した時点で犯罪云々って聞いたことある気がするんだけど……
まぁ、警察が子供連中相手にそこまで調べることはまずないか。
この島に居る警察ってば駐在さんだけだし。
ラボの奴らがわざわざ伝えることもないだろうし。
んじゃ、聞かなかったことにして放置が妥当だろうな。
「……んでな、そのヒミカが……」
「そうなると、ピンチになるだろ、だから……」
アニメについての話し合いが白熱を始めてしまったようだ。
私はそっと輪を抜ける。
これ以上興味の無い話に入ってられるか。
え? ヒルコはちょっと興味あんの? でもDVD見れないだろ、迷い家テレビ無いし。
炊飯器はご飯の関係で出てくるけど器扱いらしく、食事が終わると消えてなくなってるし。
テレビもそんな感じで出て来てくれればいいのにな。
今度家電量販店にでも連れて行ってみようか雄也を。気に入れば迷い家にもテレビやって来るかもしれないし。
「高梨さん、今日の放課後暇?」
アニメオタクたちの話から逃げだしたら美園に掴まった。縷々乃と紫乃が一緒にいるのがちょっと嫌な予感がする。大河和馬も一緒か。何仲間だこいつ等?
「放課後は、空いてるけど?」
「んじゃさ、私達に付き合ってよ。女の子四人居た方がいいのよね。大河君は見学」
女性四人必要? 何する気だこいつ等?
「ふふ、ただのこっくりさんよ。妖使いの相生さんが居るから呪いとかは気にしなくていい」
私が疑惑を持っているのに気付いて安心させようって思って言ったのかもしれないけど、長い髪に隠れて笑う姿が不気味な紫乃に言われると余計に怖い。
闇子さん闇子さんお帰りください。
「コックリさんって……」
「ほら、高梨さん、いろいろと大変でしょ。美園がコックリさんして対策とか調べとこうって」
「私もさ、高梨さんの役に立ちたいなって思って、くーちゃんがあんなに楽しそうにしてるの高梨さんの御蔭みたいだし」
葛之葉は勝手に付いて来ただけなので全く問題ないと思うんだけど?
まぁ、今後の対策考えたくもあったし、ちょっとだけ付き合ってみるか。
「あらら残念。高梨さん暇だったら軽音部誘おうって思ったのに」
為替梃がトイレから帰って来て残念そうに言う。
トイレ行く前に誘ってれば良かった。とか言ってたけど、トイレは行ける時に行っとけ。膀胱緩かった私から言わせれば、授業だからって我慢して膀胱炎になるのは辛いぞ。マジで辛いぞ、私はなったことないけど、私はなったこと無いけどね。ここ、重要だからっ。




