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妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四節 朧車
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そして奴らが動き出す

 葛之葉はとある場所に来ていた。

 ふと思い立ったのだ。有伽に告げるのはいいのだが、その前に厄介事を持ち込むことを本人に告げるべきではないか。と。

 だから、先に彼の居るその場所へとやって来た。


 そいつは葛之葉の知り合いだった。

 遥か昔に同じ学校で過ごし、濃密な時間を共に越えたクラスメイト。

 もう、何歳になったのか数えるのも億劫だ。容姿も既に元の彼とは比べられないほどに変わり過ぎている。


「にょほ、久しぶりじゃの」


「なんだ、クソ狐か。俺はまだ死ぬ気は無いぞ?」


 部屋に入ると同時に葛之葉が挨拶すると、部屋にいたそいつは皺枯れた声で苛立つように告げた。


「ほっほ、律義じゃのー。昔見た未来の自分のように部屋に籠りよって」


「ふん。過去が変わらぬ様にせねばならんだろ、俺が彼女を造り送り込まねばこの未来には来れん。生き残るのが龍華とお前だけになるやもしれんからな。念には念を入れるさ」


 そいつは何かの作業をしていた。

 作業をしている相手は裸の女。否、女性に似せたナニカだ。

 そいつを見た葛之葉はおぉと感嘆する。


有譜亜あるふぁじゃ有譜亜あるふぁ。そっくりじゃな」


「そっくりも何も未来の俺が造ったのだぞ。そっくりに決まっているだろう」


「それもそうじゃの。未来、というかもう追い付いとるけどのぅ」


「で? 何しに来た?」


「うむ、実はの、龍華肝入りの高梨有伽という小娘がの、どうも過去に戻る方法を探しとるようでな。そなた紹介してもよいかの?」


「俺を? ……まぁ、いいが」


「言質取ったぞえ! にょっほぅー」


 小躍りしながら駆け去っていく葛之葉。

 そいつは溜息吐いて何やってんだアイツは……と苦笑いする。

 そして、自分が作り上げた有譜亜と呼ばれた機械の頬を撫でる。


 必死に生きながらえ皺しか無くなった細い腕。

 いつ死ぬともしれない震える身体。

 もう、自分も長くない。ソレを理解する。

 永遠の時を生きる龍華や葛之葉が羨ましい。


「高梨有伽……か。そう言えば未来の有譜亜のログに会話内容が入っていたのだったか。運命は信じないつもりだが、そろそろ俺も終わりということか……後を頼むぞ有譜亜」


 そいつが語りかける。しかし、機械の少女は動くことは無く、言葉は虚空へと消えて行った。


 -------------------------------------


「定期更新途絶えてからもう一週間経ったぞ、七人同行の奴どうしたってのッ!!」


 妖研究所暗殺班第一班班長、前川まえかわ玉藻たまもは思い切り机を叩き、怒りを露わにした。

 近くにいた小金川こがねかわ僧栄そうえいが困ったように肩を竦める。


「随分荒れてるじゃないか」


「あんただって少し前まで慌ててただろうがっ。しかも黴が死んだって聞いて悔しがってただろうが!」


「ああ、研究所にとって損失だからね。だが、問題はない。何しろ黴の居場所が分かったし、生きていると分かれば落ち着くと言うものさ」


「あ? 生きてる、だぁ?」


「うむ、三班室長は優秀だね。部下から生存を聞いたんだと。いやぁ、まだ黴が死んでないのならぜひとも研究所に収監させたいね。生きたまま捕まえられないだろうか? 前に手に入れた八俣大蛇は最高の研究材料だった。生きているのが特にいい」


「悪趣味ねぇ。で? あの高梨有伽が生きてるんなら場所教えなよ、一班の仕事だろ?」


 怒りを押し隠した玉藻に。ふぅっと息を吐く僧栄。


「残念だが君は必要ない。今回は捕縛目的だからね。捕縛部隊を既に動かした。ここで捕まれば良し、無理なら君たちの出番だ」


「はっ。あのクソガキが簡単に捕縛されるかね。私を裏切りやがった土筆を仲間にしてんだよ」


「知っているさ、厄介な奴ってのがどれほど厄介かは、な。そういう時こそ数の闘いさ」


「リーダーは?」


「今回は三班が功績あげたからね三味長老にお願いしたよ」


「はっ。容赦ないねぇ」


「容赦なんて言葉はラボに来る前に捨てて来たよ」


 二人は笑い合う。天狗と女狐の影が怪しく蠢き合うのだった。


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「やぁうわんさん。電話じゃなく直接会うなんて珍しいじゃないか」


「葛城、すまん」


 有伽たちが学校に行っている頃、人気のない森の中で、葛城来世とうわんが会っていた。

 開口一番謝るうわんに来世は小首を傾げる。


「どうしたんっすか?」


「三班室長より総指令官に高梨有伽の生存が漏れた」


「あー、不落不落と朧車のせいかな。今日の朝有伽が殺したって言ってたし」


「そうか」


「で、用件はそれだけかい?」


「島にラボが来る。まだ生け捕りを考えているようで捕獲チームが動くようだ」


「あー、アレかぁ。無理だろ。有伽だけならともかくここにはお仲間が沢山いるぞ?」


「だが、ソレはむしろ弱点になりかねん、だろう」


「だったら、なんだよ?」


「死んでもらうことに、なるだろう」


 うわんから告げられた言葉に、来世はごくりと息を飲む。


「そうか、ついに、来ちまったか」


「決めておいてくれ。ラボとして死ぬか、……として死ぬか、だ」


 言いたいことは言った、とうわんは踵を返して去っていく。


「有伽次第かな。できれば、敵対したくないんだけどなぁ」


 うわんの背中を見送って、来世は両手をポケットに突っ込み歩きだす。

 少しだけ歩き開けた場所で空を見上げた。

 雲一つない空に一羽の鳥が舞って行く。


「……一人カラオケ、行っとくかぁ。ストレス発散の欲が歌うだけだと、楽だねぇ」


 男は一人歩きだす。ケタケタと、これから出るだろう死者たちを嘲笑うように笑いながら……

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