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妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四節 朧車
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奪うモノ、守るモノ

「ガァァァァァッ!!」


 朧車が咆える。

 ヘッドライトのせいで真正面が眩しい。

 目を細めながらもなんとか受け止める秋香。

 地面を掘り返しながら朧車を投げ飛ばす。


 投げられた朧車はすぐさま芹先輩へと変化し、田んぼの中へと落下。

 畦道に上がると朧車に変化して再び襲いかかって来る。

 重量物なので投げ返すのがやっとの朧車と秋香との闘い。秋香のタイミングがずれた瞬間が終わりだ。


 不落不落相手には舞之木刈華と樹翠小雪、雪女と氷柱女のタッグである。

 普通なら不落不落など闘いにならないと思われたが、提灯の中間地点当りが割れてまるで口のように開かれると、提灯内の炎がとぐろを巻きながら飛び出し刈華と小雪に襲いかかる。

 無駄に強そうな力だ。これはさすがに氷系能力の二人にはキツいか?


 と思ったがそうでもなさそうだ。

 刈華が妖能力を発動する。

 まだ冬には遠い時期なのに田んぼに雪が降って来る。

 これ、冷害にならないだろうか?

 まぁ既に刈り取りしてるみたいだから問題無しか?


 雪は徐々に豪雪となり、風が炎を吹き散らす。

 さらに雪が変質を始める。

 不落不落向け、雪に混じった尖った氷柱が飛んでくる。


「うわっ!? あ、危なっ」


「全く、学生の中に有伽の命を狙う奴がいるなんてね、最悪だわ」


「ラボはここまで浸食してるってことね。油断ならないのがキツいわ。でも、こうなったらとことんやるしかないわね」


 降り積もった雪から雪達磨が一つ、二つと出現し始める。

 これはヤバいと逃げだす不落不落。

 残念、流石に敵対されて逃す程私は甘くない。


 舌を伸ばして不落不落の足首を掴み取った私は、思い切り振り上げる。

 不落不落が悲鳴を上げるが、遥か上空に投げ飛ばして舌を放しておく。

 これで死んだら楽なんだけどな。あ、失敗、落下地点が田んぼの中だ。


 ばしゃっと雪交じりの水田に落下した不落不落。

 だいぶ上空に投げ上げたのに無傷で立ち上がりやがった。

 炎を操る不落不落、なんと提灯が空を舞って襲いかかって来た。

 飛び出た炎はまるで炎の舌とでも言うように鞭のようにしなりながら私に襲いかかる。


 さすがにこれは避けなきゃヤバい。

 だが、間に割り込むように飛び込んだ一体の雪達磨により炎の一撃は私に当ることは無かった。

 雪達磨が爆散するように顔面部分を飛散させ、地面にぐしゃりと落下する。

 遅れ、別の雪達磨が再び振るわれた炎の鞭をその身で受け止め雪へと戻って行った。

 しかし、倒れても倒れても、降り積もった雪から雪達磨たちがせり上がる。


 いくつも用意していたのだろう。不落不落も二つ、三つと提灯に火を付け飛ぶ提灯が増えて行く。

 物量対物量の闘い、壊されるだけだから刈華の方が不利に思えるのだが、ここに小雪が入ることで攻撃の手が生まれる。

 氷柱に貫かれた提灯が提灯の体を無くしてしまい落下する。

 雪の上で炎を撒き散らすも、降り積もる雪により消火されて行った。


「これは、ちょっと相性が悪いかも?」


「ここでやるしかなさそうね。覚悟しなさい芦田」


「やっぱり、芹さんに乗って高梨さん殺しに掛かるのは無理だったか。でも、流石にこの命はやれないな!」


 取り出された提灯は今までとは比べ物にならない大きさ。

 かなり小さく折りたたんでいたようで、展開するのに手間取ってはいたものの、他の提灯たちがフォローしたことで無事に火を灯すに至る。


 お化け提灯が浮かびあがり、轟炎の舌で吹雪を薙ぎ払い始めた。

 熱っ、かなり距離があるのにこの熱量か。

 しかも畦道の草に火が点き燃え上がる。


 ヤバい、道が火の海に。あ。いや雪で覆い隠すことで消火が、でも炎で薙ぎ払われて雪は水へと戻ってしまう。

 まさに一進一退の攻防になり、氷柱攻撃もお化け提灯に当る前に蒸発するようになってしまった。

 こうなると刈華と小雪では決着を付けられない。


 芦田が逃げに転じて走りだす。

 暗闇のせいで一度見逃したら彼を追うのは絶望的だろう。

 しかし、下手に追うのも難しい。何しろ奴がまだ提灯を持っていた場合私だけ追っても迎撃されてやられかねないからだ。


 悔しいが炎に対抗できる刈華と小雪がいなければ芦田相手は少々キツい物がある。

 お化け提灯が炎を撒き散らしながら遠ざかり始める。

 マズい逃げられる。


 炎を全て吐き散らすことで光源となっていた炎を無くし、提灯の群れが暗闇に消え去った。

 ああもう、逃げられた。

 足音すらも追えないのは直ぐ近くで轟音撒き散らし水虎相手に激突を繰り返す朧車のせいである。

 やっぱり私のアレだけではこいつを落とせなかったらしい。

 面倒臭いがこいつだけでも撃破しないと。


「ぐわあああああああああああああああああっ」


 な、なんだ!?

 遥か遠くの方で男の野太い悲鳴が聞こえた。

 一度きりのみの悲鳴で、後は静寂が舞い戻る。

 もしかして、芦田に何かあった、とか? まさか……ね。

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