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妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四節 朧車
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事件の真相2

 芦田興輝は不落不落の妖使い。

 欲望の関係で日が落ちた夜中に提灯片手にぶらぶらと散歩している。

 そして田畑芹は朧車の妖使い。

 欲望の関係で島を何周も走り続けている。


 お互い関連は無いように見えるが、夕方、芦田が出歩きだした炎を目標にして、走るのを止めていると芹先輩は言っていた。

 つまり、わずかながら関係があるのだ。

 芹先輩と芦田がそのわずかな時間で定時連絡をしていれば、と考えたのだが、ビンゴだったようだ。


「あんまし知りたくは無かったな。自分のクラスにまだスパイが紛れ込んでたなんて」


「それは誤解さ。俺と芹さんはもともとこの学校に居たってだけ。それに僕らの場合は臨時勤務の三班所属だからね。お呼びが掛からない間はただの一般市民なんだ」


 来世と同じ組織か。


「とはいえ、高梨さんが犯罪者だってことは最初の時に知ってたけどね。手配書回って来てたから。芹さんと相談して記憶が戻らないうちはそのままでもいいかってなった。もともと俺らには関係ない話だし。任務として殺せと言われてもないし報告しろと命令されたわけでもないからね」


 お人よしかよ。いや、元一般人だしこの島育ちならそのくらいの性格になってしまうのも無理ないのか。


「とはいえ、七人同行が死んだ時は驚いたよ。まさか他にもラボの刺客が紛れ込んでるとも気付いてなかったし、半年前からここに潜伏してたことにも驚いた。ラボ同士でも連絡が取れてない証拠って奴だね」


「そう」


 そんな話はどうでもいいのだ。今回知りたいのはなぜ移動させたか。

 結局あそこで見付かっただけでもいろいろ問題だろう。


「歩きながらでいいかい? 俺の欲の関係で立ち止まってるよりぶらぶら歩いた方がいいんだ」


「いいわ、ご一緒しましょ」


 芦田と隣り合うように歩きだす。

 手に持った提灯一つだけが私達を照らす。

 雲間から月がたまに顔を出す。

 銀色に光る道をただ、二人歩きだす。


「正直想定外で驚いたんだ。芹さんが誰か吹っ飛ばしたって連絡来たから調べに行ったら篠原が首折って死んでたからね」


「ああ、やっぱり殺したのは芹先輩か」


「まぁ、殺したと言うか、過失致死? 故意ではなかったってくらいかな?」


「警察に自首したりは?」


「すると思う? 仮にもラボの暗殺班だよ。俺もだけど、芹さんが捕まることも指名手配されることもない。誰かが言ったとしてももみ消されるだけさ。一応殺したことは既に本部に報告済みだしね。元隊長の葛城さんから回収したって連絡も入ったから一件落着として扱ってるはずだよ」


「ラボと警察ではもう終わった事件扱いか。なんとも無駄死にね篠原は」


「でもね、彼が死んだの間接的に高梨さんが関わってるんだぜ、気付いてた?」


「私が? ああ、もしかして亜梨亜の件で残らせたから?」


「まぁ、そんな感じ。そのせいでいつもは出会う筈の無い芹さんの移動に篠原が巻き込まれたんだ。可哀想に」


「それこそ不可抗力ね。私が関わってる訳じゃなく自業自得よ」


「その通り、つまり篠原は事故、俺たちのせいじゃない。……で?」


 芦田の纏う空気が変わる。


「殺し合うかい高梨有伽?」


「私に危険がないなら、見逃すのもありかと思ってる」


「甘いなぁ、一班に連絡入れるとは思わないのかい?」


「三班の隊長の意思を無視するの?」


「葛城さんは既に隊長じゃないんだよ。そういう理由で俺たちは既に三班隊長に逐一報告してる」


「オイ、まさか……」


「指令は来てるんだ。やれるようならやっちゃえば? ってさ」


 光が真正面に生まれた。

 即座に飛び退く芦田。

 迫り来る巨大な朧車。この野郎ヘッドライト付きかよっ!?

 嵌め……られたっ!?


「ご安心を、ですわ!」


 私が光に目を奪われ焦った瞬間だった。

 私と朧車の間に飛び込む一人の誰か。

 猛スピードで迫り来る朧車を掴み取る。

 流石に殺し切れなかったのか地面を削りながら後ろへと滑らされる誰か。

 ぐっと腰に力を入れ、朧車を持ち上げる。


「二度目は手加減致しませんわよっ」


 持ち上げた朧車を脇の田んぼ向けて投げ飛ばす。

 いつの間にかあぜ道に連れていかれていたようだ。

 この道の周囲全てが田んぼになっている。


「ありゃ。まさか高梨さん以外にも居たのか!?」


「全く、好奇心猫を殺す、ですわよ先輩。刈華さんに言われなければ見逃すところでしたわ」


 刈華?

 暗闇の中、不落不落に照らされたのは、水を虎の腕や足のように纏った水虎の妖使い、三枝秋香。

 いや、それだけじゃない。灯りで照らされる場所より後ろの方に、二人の人物が見えた。


「有伽のことだから一人で真相暴きに行くんじゃないかって思ってたのよね。私が一番有伽のことわかってんのよ」


「小雪の件でいろいろと迷惑掛けたし、少しくらい借りを返したかったのよ。別に、あんたが心配できたわけじゃないから」


 灯りに照らされる場所に歩み出たのは二人の女性。舞之木刈華と樹翠小雪だった。

 どうやら私の行動パターンを推測されて後を付けられたようだ。

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