朧車の秘密
だから私は……舌を一気に伸ばし近くの電柱に巻き付けると自分の身体を一気に引き上げる。
朧車の突進をギリギリで回避。勢い余った朧車は数メートル行き過ぎて急旋回。
私が逃れたことに気付いて悔しげに呻く。
この位の事は想定済みだ。ラボの刺客から比べればまだヌルい。
すたりとアスファルトに降りた私に向け、再びアクセルを踏み込んだらしい朧車。
さて、攻撃してもいいんだけど、あんまりそういうことはラボ以外にはやりたくないんだよなぁ。
飛び退き際にヒルコが小槌を取り出し一撃。
ぎゃっと悲鳴が上がったが、朧車は止まることなく急旋回して再び狙って来る。
しかし、なんで私狙ってんだこいつ?
また避けよう、とした次の瞬間。
横合いから飛び込んでくる一人の人物。
両手に水を撒き付けたそいつは虎のような四肢を身にまとい、朧車を受け止める。
「だぁらっしゃぁ!」
「な、なっ!?」
「水虎なめんなぁっですわぁ!!」
持ち上げるようにして朧車をひっくり返す。
「あいったぁ!?」
ひっくり返った朧車はぼわんと煙を上げて芹先輩へと変化する。
容積がおかしい気がしなくもないけど、これが彼女の能力らしい。車としてだけならそれなりに優秀だけど、敵対したら面倒だな。
「うぅ、酷い」
「酷いのはあんただろ。何故答えることなく轢き殺そうとしてきた?」
「そ、それは……その……」
次の瞬間、私、ではなくなぜか来世に視線を向ける芹先輩。
その視線で来世は「あ」っと何かに気付いた。
「来世?」
「あー、うん、芹さんはたぶんだけど、草だ」
「草?」
「つまり、俺らと一緒、ラボが植え込んだスパイちゃん」
ああ、それで殺人者だったのか。
「あ、はは、バレた?」
「つまり、執拗に私を狙ったのは私を殺すため、か」
「ついでにやっちゃえればって思ったんだけど、やっぱ無理かぁ」
つまり、潰しておいた方がいい女ってことか。じゃあ、こいつも洗脳しとこう。
がしっと起き上がろうとした芹先輩の顔を両手で掴む。
「あ、あれ? 待って、なにすんぶっ!?」
……
…………
…………………
どさり、田畑芹が倒れた。
全身痙攣しているけど問題は無い。
きっと最後に見たのは私の黒い笑みだっただろう。
「え、えげつない……」
「ふ、不潔ですわっ」
「有伽、さすがに今のはひでぇでや」
「やっぱりいいなぁ、俺もアレしてほしい」
「そなたもとことんおかしいのぅ、有伽に惚れる男とか」
「えぇ、有伽可愛いじゃん」
なんとでもいえ、私は生き残る為ならどんな手だって使うと決めたんだ。
例え処女を奪われることになったって……あ、血が出るからそういう行為した相手が黴で死ぬな。
ってことは私は一生彼氏居ない方がいい訳か。はは、やってらんねぇ。
これなら来世にくれてやってもいいかもしれないな。殺すことになるけど。
「さて、それよりも、篠原を殺した奴についてだ」
「芹がその、ラボ? の人だってことになるとどうなるの?」
「殺人者だってのは普通のことになる。つまり、こいつが篠原殺しに関係あるかどうかわからなくなった」
「つまり、本人から聞かなきゃいけないわけね。なんであんなことしたの? 聞けない状態になったんだけど?」
「何言ってんの、むしろ聞きやすくしたのよ。とりあえずこんな道の真ん中で話す話じゃないし、学校辺りに運びましょう」
私に任せるのは危ない、ということで秋香が水虎の力を使って芹先輩を背負って運ぶ。
どうもこの水虎の能力、自分の身に纏ったり水の中を水虎だけ泳がせたりできるようだ。
簡単に言えば自力で動くセイ○トクロスといったところか。
水を纏うだけで力が上がるのっていいね。私の垢嘗め能力と変えてほしい。
皆して学校へと戻る。適当な場所を考えたのだけど思いつかなかったので自分たちの教室に向かうことにした。
すると、何故か居残っていた二人組が私を発見する。
「あっりかーっ」
猛ダッシュして来たかと思えば飛び上がってダイビングハグ。
軽々避けると暮阿さんの足元に落下する小雪。
樹翠小雪と舞之木刈華の二人組だ。
「あんたら何してんの?」
「有伽たちが大変そうだから手伝おうかと思って」
「んもぅ。折角教室向かったのに誰も居ないからさっきまで校内探しまくってたんだからね」
知るか。そんなことで怒られても私にはどうにもならん。
何故勝手にやったことで怒っているのか意味不明である。
小雪はツンデレっぽい変な娘なので仕方ないことではあるのだが。
「今から容疑者締めあげるとこ、来る?」
「イクイクイっちゃうッ!」
「小雪、あんたちょっと黙ってて」
小雪のお世話大変だね刈華。この後もよろしく。そいつの手綱握れるのはあんただけだ。




