暴走車
暮阿先輩を引き連れて、私達は田畑芹を探すことにした。
とはいえ、この時間だと走りまわっている田畑さんに出会うのは難しい。
どんなに頑張っても難しいので待ち伏せを行うことにする。
しかし、ルートが分からないのでそこはノウマ君達に頑張って貰うことにした。
一応ソートフォン使って土筆と連絡とって見掛けたら教えてくれと伝えてある。
あとは皆で現場に駆け付けるだけである。
しばらく校庭で待っていると、土筆が発見の連絡を告げる。
それなりに速いらしいが追えなくは無いらしい。
私から来世に、来世からノウマに連絡が行く。
ちなみに尾取枝は? 当然使いモノにならないので今回は村八分だ。
やがて補足された場所は、海岸沿い。その辺りに来ると予想されるので、私達は一番近い海岸沿いの道へと向かった。
それから数秒。
物凄い砂埃を上げながら爆走する田畑芹が私達の前に掛けて来た。
停まるようにジェスチャーして見ると、私たちを行き過ぎて少し、ぎきゅきゅっと急停止した芹先輩が近づいて来た。
「ありゃ、皆してどうしたー?」
「単刀直入にいいますわ、田畑先輩、篠原先輩殺したのは先輩ですね」
あ、こら秋香、もうちょっと遠まわしにして追い詰めて行かないとっ。
「え? 篠原君? な、なんのことかな?」
「芹さん、どうも哲が首折られて死んでたみたいなの。ねぇ、貴女はそれに関わってるの?」
暮阿先輩の言葉に押し黙る芹先輩。
まさか、本当にこの人が?
「んー。もしかしてだけど、昨日のことだよね、あれ、かなぁ?」
「あれ?」
「ん。走ってたら階段ところでなんかぶつかったんだよね。うわーって声が聞こえて、ちょっと怖かったから逆の階段使って外に出たんだけど」
それって、もしかして、暮阿先輩に会いに来た篠原を付き飛ばしたってこと? そんな偶然ある?
でも、なるほど、階段から落ちたなら首の骨を折ったとしても不思議は……じゃあ事故?
それはない、と思いながら納得しそうになる自分が居た。
「それはまずないだろうね」
しかし、私が考えた事を瞬時に読み取ったのか否定して来る来世。
むっとした視線を向けると苦笑しながら告げた。
「階段から落ちたにしてはそのダメージは無かった。体中にあざができるでしょ? それはないんだ。というか、そもそもその証言自体が信用に値しない。ぶつかったなら相手の状況位確認するだろうし、ぶつかった時に顔を見た筈だ。隠すのがヘタだぜお嬢さん」
「……」
「芹?」
呼びかける暮阿先輩。
しかし、これに反応しない芹先輩は、一瞬でその姿を変化させる。
芹先輩の顔だけを残した幌付きの車へと。
そう、【朧車】の妖能力を持つ彼女は、自身を朧車へと変化させられる能力者だったんだ。
私達が動く暇を与えず、芹先輩、否、朧車が走りだす。
唖然とした私達を置き去りに、時速60km位の速度で走り去ってしまった。
なんで逃げたし!? いや、逃げるってことは、犯人かっ!
「追うわ、来世!」
「え? あ、そうか。ノウマ、追跡再開!」
電話でノウマに連絡し、走りだした私を追って来る来世。
そこでようやく再起動した暮阿先輩たちも動き出す。
「先輩、私水虎ですから海から行きますわ!」
「妾はあんまし役立ちそうにないのぅ、速度尻尾で皆の速度上げるくらいかや?」
そんなもんあるならさっさと使えよ。
葛之葉の尻尾を刺して貰って私達は速度を上げる。でも、流石に車に追い付ける訳じゃないので次に一周して来たところを捕まえるしか出来そうにない。
ノウマと土筆からの連絡でどこに向かいそうかを把握しながら待ち伏せ作戦だ。
「葛之葉、鞭か縄の尻尾ない?」
「鞭尻尾はこれじゃが? って、おい!? 何をす……はぁぁ、やめよ、引っ張り過ぎじゃぁ!? らめぇ、それ以上はちぎれちゃうのじゃぁ」
道の左右に障害物がある場所を選んで葛之葉を左側に、私は道路の右側に潜む。
朧車が一周して来たので、暮阿先輩に葛之葉固定してもらい、私と水虎の腕を使った秋香が思いっきり鞭尻尾を引っ張る。
車輪の前に現れた一本の線。
逃げることすらできず突っ込んだ朧車は鞭尻尾に引っかかって盛大に回転。
芹先輩が悲鳴を上げながら人に戻って地面に転がった。
おしい、顔面ダイブしてしまえばよかったのに。
肘をすりむいたみたいだが、あの程度ならまぁ、問題は無いか。
「いたた、酷いっ、走ってる人にヒモ張っちゃだめなんだぞっ! 首引っかかったら死ぬんだからっ」
朧車の首ってどこだっけ?
「芹……あんたまさか」
「う……それは、その……ええい、こうなったらどうなっても知らないんだからっ!」
再び朧車へと変化する芹。
何故か私向かって突撃して来る。
「有伽っ」
「来世は邪魔!」
駆け寄って来ようとした来世を蹴り飛ばす。
なんでさっとか言いながら吹っ飛んで行ったけどどうでもよし。
迫り来る巨大な車向け、私は……




