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妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三節 呉葉(鬼女・紅葉)
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敵対宣言

 合流したメンバーを確認する。

 私とヒルコ、根唯、来世、秋香、葛之葉といったメンバーである。

 秋香に協力していたらしい刈華と小雪はまだ他に情報ないか探っており、葛之葉に協力してくれていた、美園と梃も教師相手に突っ込んで聞いているらしい。


 体育館倉庫へと辿りつく。

 秋香とヒルコが互いを見て倉庫の扉を開いて行く。

 中に居た人物は、ぎょっとした顔で開かれた扉の先を見た。

 私達が居ることに気付いて一瞬驚き、しかし直ぐに冷静に告げる。


「あら、こんな所に何しに来たの?」


「それはこちらの台詞ですわ皆木暮阿先輩」


 率先して声を上げたのは秋香。両腕組んで両足開いた仁王立ち。

 犯人追い詰めたり、と不敵な笑みを浮かべていた。

 いや、まだ容疑段階だからね?


「犯人は犯行現場に戻る。小説に良くある言葉どおりですわね」


「……なんの、こと?」


 若干空気を冷やすような底冷えする声音。

 瞳のハイライトがどこかに消失したように、抑揚のない暮阿先輩の声が静寂に響く。

 嫌な予感しかしない。

 それに気付いたのだろう、こそっと来世が私達から遠ざかる。あいつ、逃げたな。


「なんのこと、ですって? 昨夜ここに何があったか? 言われるべくもなくわかっていらっしゃるんではありませんこと?」


 ニヤリと告げる秋香、本人は犯人を追いつめているようなのだが、暮阿先輩は不気味なくらいに応えない。

 ただ俯いて、静かに秋香の話を聞いている。


「反論すらしませんの? 私達にはもう分かっているのですわ。貴女が篠原哲司をここで殺害したという事実を!」


 あー。言っちゃった。あえて言わないことで矛盾を指摘したり、犯人しか知りえないことを漏らした瞬間にソレを元に追い詰めた方が効果的なのに。


「へぇ、哲を殺した? 私が?」


「そうですわ、首を圧し折って殺すなんて随分と恨みに思っていたのですわね」


 しばし、沈黙が流れる。

 勝った。と秋香はふふんと鼻を鳴らして悦に入る。こら、目の前に犯人居るかもしれないのに目を閉じて天狗になるなっ。


「ふふ……」


 不気味に、皆木暮阿が肩を揺らす。

 小さな笑い、それはゆっくり、しかし身体を揺らしながら、盛大に。


「ふふふ、あははは、あははははははははははっ」


 狂気に満ちた笑いを周囲に轟かせ、皆木暮阿が嘲笑う。

 さすがに慄いたらしく、秋香が怯えたように一歩退く。


「いやぁ、ありがとう。死体をどうしようかと思ってたんだ。君たちが処理してくれたんだろう、これは嬉しい誤算だ。警察にあれこれ聞かれなくて済む。ああ、ありがとうありがとうっ」


「み、認めるんですわね?」


「ああ、認めるともさ! 死体は確かにここにあった! それがどうした?」


「そ、それがどうしたって、あ、貴女が殺したんでしょう!?」


 怯えつつも秋香が告げる。

 その瞬間、暮阿先輩の嗤いが止まった。

 再びの静寂。気のせいか耳元をシーンと静寂の音が鳴り始めた気がする。

 あの何も無い時にどこか空間が切り替わるような不思議な耳鳴りのようなモノはいつになっても慣れない。


「証拠は?」


 小さく、かすかに私達に届く声で、暮阿先輩が短く告げる。


「え?」


「証拠はっ!? 私が哲を殺したっていう、証拠はっ!! 出してみろっ。ないだろう!? 決定的な証拠もないのに私を容疑者扱いか? 警察でもないのに良い身分だなァ、アァ? 三枝ァ!!」


「うぅ、そ、それは、し、死体を調べれば!」


 一瞬言い淀んだ秋香。すぐに思いついた一手を口にする。


「馬鹿か!? その遺体がどこにある? お前らが処理したんだろーが。土の中か、海の中か? 例えどこかに保管していて調べられたとしても圧し折ったらしい事実以外に何が証明できる?」


「そ、それは……」


「くく、疑わしきは罰せず、でしょう三枝さん」


 追い詰めようとして逆に追い詰められている秋香。これはもうぐぅの音も出ない程にざまぁ状態ではなかろうか?


「でも、私を犯人扱いしたんだもの、これからは……お前ら全員敵、だよなァ? アァオイ!!」


 女性なのにその眼光は凄いな。騨雄のメンチ切った顔に匹敵してんじゃないか?

 今は懐かしいグレネーダー仲間を思い出し、私はむしろ暮阿先輩に親近感を抱いてしまう。

 顔滅茶苦茶怖くなってるのに安心感覚えてしまうのはなぜだろうね?


 とはいえ、私はってだけで他のメンバーは驚き慌て、根唯等は尻持ち付いて怯えている。

 あんた人殺したんじゃなかったっけ? この程度で怯えるなよ。

 相手も殺意見せて来たりしてないんだし。ほら、ヒルコも怯えんな。

 このままだと何も分からない状態に戻りそうなのでヒルコに変わって私が話を引き継ぐことにする。


「んで、なんでここにいたんです暮阿先輩」


「あ? 別にどうでもいいだろ」


 私にまで厳つい声で威圧する暮阿先輩。しかし、私に効果がないとみるや、思わず舌打ちするのだった。

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