まずは足を使え
翌日、私達は普通に学校に登校した。
犯人はおそらく私達が発見したということは知らない筈だ。
ただ、既に処理したと来世が言っていたので死体が無くなってることは気付いたはずである。
殺したという事実と死体が消えるという事実、多少なりとも動揺してくれていれば犯人は直ぐ分かりそうだけど……
まずは知り合いから当って行くか。
一応、昨日の話し合いで方針は決めておいた。
まずは昼休憩までに自分の教室に居るメンバーにアリバイと篠原の交友関係などを聞く。
小学校高学年については秋香が、中学一年に関してはヒルコがメインで捜索。
昼休憩に情報交換して、放課後に二年と三年、そして小学校低学年と教師に聞き込みを行う手筈である。
いや、人数少ないし、中学三年は昼でも聞けるか。
その辺りは臨機応変で行こう。
あと、来世経由で外まわり組はラボの暗殺班二班を使わせて貰っている。
立ってる者は親でも使えということわざ? があるように、手が空いてる敵がいるなら使わないと損である。
休憩中に数人ずつヒルコと葛之葉に分けて捜索させている。
根唯と雄也? なんにも考えてない馬鹿と、言うべき事に詰まっちゃう娘は捜査に向いてないことが分かっているので放置である。
根唯はすまなそうにしていたけど、雄也は戦力外だと言うことすら分かっていなかった。うん、アレはダメだわ。
授業を終えて昼休憩。
実際は私の身体を使って調べたヒルコ、その一部始終は私も見知っているので割愛しよう。
迷い家での食事に集まって来る葛之葉と秋香、ついでに来世。
「それじゃ、情報交換と行きましょうか」
「まずは小学校高学年組から。わたくしたちの中で知り合いと呼べる人はいませんでした。確かに、去年までは一緒のクラスでしたけれど、皆さん、誰だっけその人、状態でしたわ」
まぁ、彼自身殆ど関わり合いになりたくなかったみたいだしね、知り合いがいるかどうかも不明なところだ。
「妾は女性陣に聞いてみたのじゃ。残念ながら昼食後にさっさと居なくなることと、放課後は一番早く教室を出ること以外誰もなぁんも知らんのじゃ」
「ワタシも、男性陣に尋ねてみましたが皆同じでした」
成果なし、である。
「じゃあ俺からも報告。尾取枝とノウマの話じゃ死因は首への一撃。ぼきっと一気に折ったらしい。しかも、真正面から片手で、だってさ。まさに鬼のような力がないと無理だね」
バケモノじゃないか。妖能力使いか物凄い筋肉自慢じゃないと……筋肉、自慢?
確か、三年だったかに居たな、金太郎の妖使い。
熊を投げ飛ばす赤ん坊坂田金時。一般人の首をへし折るくらい……
いや、流石に安直過ぎるか。
「そう言えば二年の鋒鋩先輩、確か大坊主の妖使いだったべや」
「常思慧は塵塚怪王だろ? 首折るだけなら彼女でも可能だぞ?」
「ちょっと、亜梨亜が犯人だなんて言ったら先輩といえども水虎嗾けますわよ!」
「え、なんでさっ!?」
お前は空気読むこと覚えよう雄也。
しかし、候補は三人も居るのか。
いや、まだ決めつけるのは良くないか。
怪しい人物がまだいるかもしれないし。
とりあえず食事を終えた後に三年教室に行ってみよう。ヒルコ、頼むね。特に小星唯先輩には詳しく尋ねること。
「了解」
「ん? 有伽何が了解?」
「え? ああ、その、今怪しい人物はその二人なんだなって。ワタシが怪しいと思った人物入れて三人だなぁって、思って……」
わたわたと慌てるヒルコ。いちいち私の声に反応するなよ来世。ヒルコが焦るだろ。
「三人? 他に誰か怪しい人物がおったのか?」
「え? ええ、ほら、三年生の小星先輩。確か妖能力は金太郎だったでしょ」
「ああ、そういえば」
「金太郎か、なるほどのぅ、確かに腕力はピカイチじゃな」
納得する雄也と葛之葉。
だけど納得されるだけだと困る。
怪しい人物が一人増えただけになるのだから。
「じゃあこの食事が終わったら早速三年生に聞き込みしない? 三人だけだから昼休憩中でも聞けるでしょ」
「それはそうですわね。ではさっさと食べてしまいましょうか」
今日は野菜が沢山だ。健康にはいいのだが量が量だけになかなか処理に時間が掛かる。
皆やきもきしながら食事を食べていた。
というか雄也はなんでそんな大食い出来るんだ。野菜しかないぞ今日の食事。
「というか、今回はワタシたちのクラスは関係なさそう?」
「そうじゃのぅ、妾の感覚では能力を偽っとるモノは居らんし、このクラスに居る妖もみつけたようじゃしの」
横目で葛之葉が見ると、件の近藤が愛想笑いしながら首を一度だけ縦に振る。
挨拶のつもりか?
というか私と視線があった瞬間、なぜ顔を赤くして視線を逸らす?
同じ妖繋がりで惚れたか? 止めとけ、死ぬぞ?