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妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二節 塵塚怪王
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そして、新たな問題が

「「ごちになりました」」


 私と近藤は両手を自分の前で合わせてお辞儀する。

 私達の目の前には亜梨亜の自宅にある風呂場。

 最初に見た時は来世がうっと呻くほどに汚れていた風呂場も、日の光が差し込みキラキラと煌めく新築のように煌めいている。


 来世と亜梨亜は今、頭を抱えてうずくまり、今のは夢今のは夢、となぜか自分に言い聞かせていた。

 はてさて、一体どんな恐ろしい光景を見たのやら。

 え? 何ヒルコ? 正直こんな有伽見たくなかった? 知るか、私は私だ。ちょっと欲望に素直になっただけだ。何も悪いことはしてない。


「いやー、久々にさいっこうっした。高梨先輩あざーっす」


「だから先輩じゃ……」


 あ、でも一年先輩だから先輩で合ってるのか。

 しかし、こいつは人生的には先輩な訳だしやっぱり間違ってるよね?


「んじゃ、問題解決ってことで帰るか。あんたも、あんまし事案発生なことするんじゃないよ」


「了解っす」


 亜梨亜を取り巻く問題は解決した。

 どうやらこの馬鹿のせいだったのは確かで、これからは戸締りをしっかりしておくということで片がついた。

 多少亜梨亜の人生観が変わったかもしれないがそこは笑ってすますことにしよう。


 亜梨亜はこのまま家で過ごすということでここで別れる。

 近藤についても家が近いので帰るとのこと。

 警察沙汰にもならなかったので、私は来世と共に学校に戻ることにした。

 そういや逃げる時に放置していたメンバーは何処行ったんだろうか?


「いやー、今日はいろいろな有伽が見れて嬉しいよ」


「そう?」


「うん、風呂場嘗めながら恍惚としている姿なんてもう……うっ」


 おいこら、何を想像した? そして吐きそうになるな、女性に対して失礼だろ。


「ワタシもアレは無いと思う……」


 煩いよヒルコ。わざわざ私だけに聞こえる声で呟くな。


「あ、そうだ有伽」


 空が黄昏色に染まりだしていた。

 隣を歩く来世が何の気なしにこちらを振り向く。

 夕日に照らされた彼の顔に、不覚にもドキッとしてしまった。


「どうかな? これから食事でも」


 ヤバい、頷いてしまいそう。


「ワタシ、食事が待ってるんで」


 だが、私が答えるより早くヒルコが告げる。


「あ、そうか、迷い家があったっけ。残念」


 あちゃーと頭を掻きながら歩きだす来世。

 本当に、殺意も何も無く好意しか見せて来ない敵とか最悪過ぎる。

 情にほだされるな私。それは敵の付け入る隙になる。


 被りを振って、彼の背を追い掛ける。

 学校に戻って来ると、困った顔をした根唯達がそこにいた。

 どうやら皆ここに戻って来たらしい。


「ああ、高梨先輩戻ってきましたのね!」


「亜梨亜ちゃん暴走してたべな、大丈夫だったがや」


 根唯の言葉遣いは時折おかしい。いや、鈍ってること自体はいいんだけど、何処の方言だよっておもう言葉遣いがたまにある。


「なんとか亜梨亜は落ち着いた、かな。近藤も無事だったし問題は解決」


「そりゃよかった」


 雄也ももう野球は終わったらしい。

 教室に残って貰っていた生徒達も皆帰ってしまったので、ここに居るのは私と来世、根唯、雄也、秋香だけである。

 小雪や刈華も少し前までいたらしいけど、自宅に帰ったらしい。

 あいつらの自宅ってあるんだ。良くそんな金あったな。


「んじゃ、私達も帰ろうか」


「そうですわね。では私はこれで……」


 雄也が迷い家を出し、秋香が家に帰る為踵を返す。

 その瞬間だった、出現した迷い家の軒下から天井下りが顔を出す。


「大変ですわ有伽様、体育館で人が死んでますっ!!」


 は?

 とぅっと飛び降りた土筆がこっちですわっと走りだす。

 私達は付いて行けずに戸惑った顔で互いを見会いながらも、まさかと思い土筆の後を追って走りだす。

 折角帰ろうとしていた秋香も一緒に付いて来た。


「殺人事件なんてここでありうるのかしら?」


 既に死人はでてるぞ、七人同行に殺された奴が。

 まぁ、それはどうでもいい。しかし体育館、なぁ、昨日どんちゃん騒ぎした場所だけになんか嫌な予感がしなくもない。

 もしかして、ラボが関わってたりしないだろうな?


 私達は体育館の扉を開く。

 何もない。あ、ここじゃないの? さらに奥?

 土筆に案内されたのは、体育館の用具倉庫だった。


 用具倉庫へと入ってみると、そこには一人の男が力無く倒れていた。

 篠原哲司、ただの一般人である私のクラスメイト。そして、亜梨亜の事件ではめんどくせぇからとさっさと居なくなったはずの人物だ。

 家に帰っただけと思っていたのに、こいつこんなところで何やってんだよ!?


 そっと近づいてみる。

 目を開けて、口を開けて、驚愕の顔で倒れたままの篠原。

 しかし、私が近づいても微動だにしない。動かない。

 土筆の言っていたように、確かに、死んでるみたいだ。

 一つの事件終わらせたらもう一つ凶悪事件が起こっちまった。どうしろってんだ全く。

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