表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二節 塵塚怪王
57/182

犯行状況

 昼休憩となり皆が集まる迷い家に、三人の闖入者があった。

 というか、私達が来るように言ったんだけどさ。

 やって来たのは小学校高学年組。元中学一年の舞之木刈華、樹翠小雪、そして今回の被害者? らしい常思慧亜梨亜である。


 ショートカットで前髪を可愛らしいウサギのヘアピンで纏めている小柄な少女。

 まだ小学六年生だというのに胸がそれなりにある。これは成長期を終えた中学生としては脅威としか言いようがない存在である。

 引っ込み思案なのか、今回の事件でネクラ状態になっているのか、彼女は影のある沈んだ顔をしていた。


 そんな彼女を気遣うように背中に手をあて前に進む手助けをしている不良娘、じゃなかった舞之木刈華。

 スカイブルーも真っ青の髪を揺らしながら、こちらへとやってくる。

 さらにその背後からやってきた黒髪のストレートヘアの少女は、私を見るなりあっりかぁ――――っと叫びながらルパ○ダイブ。

 タコのように唇を突き出し襲いかかって来た。

 当然、ヒルコが迎撃した。


「うぅ、触れてないはずなのに愛が痛い……」


 はたき落とされた小雪は床に乙女座りしてヨヨヨと泣き真似を始める。頬に手を当てるな変態め。


「で? その子?」


「ええ。垢嘗の被害に会った亜梨亜よ」


「あ、あの、常思慧亜梨亜、です」


 亜梨亜によれば、昨日の夜8時頃、いつものように風呂に入って上がって服を着て、一度脱衣所を後にしたのだ。

 しかしその日はなぜか嫌な予感を覚えて、もう一度脱衣所に。

 風呂場から変な音が聞こえたので一気に扉を開いた。

 すると風呂場に何か人型の生物がいて、天井に張り付いていたのだとか。舌が異常に長く、天井を舐めていたことからおそらく垢嘗。その何者かは亜梨亜の出現に驚いて慌てて窓から出て行ったということである。


 なるほど、確かにソレは私が一番の容疑者だろう。なにせ垢嘗の妖使いなのだから。

 夜中に風呂場で垢を舐めているのだ、そりゃ私が犯人であるのがしっくりくる。

 しかし、その時間は私は皆と歓迎会中だ。


「部外者という可能性は?」


「その可能性はあるだろうけど、亜梨亜の家にピンポイントで入るとなると学園の誰かである可能性が高い、かな?」


 なるほど、じゃあとりあえず外は警察に任せて内側は私達で調べるか。

 私としても垢嘗っぽいやり方で女の子の風呂場に居るような人物は許せないし、私に濡れ衣着せようって態度が気に食わん。


「おお、有伽様がいつになく燃えてる」


「あ、土筆も居たんだ」


 にょこっと天井から生える土筆。

 くるりと身体を入れ替え畳みに着地すると、雄也がすかさずご飯入りの茶碗を出す。

 皆に存在がバレたので普通に食事をするらしい。

 いつもは昼何処で食べてるのか分からないけど、あまりいい食事はしてないそうだ。

 こっちで食事した方が彼女としても良いのだろう。


「有伽、なによこの女。有伽の事、様付けで呼ぶとか、あんた有伽のなんなの」


「あら、どこの馬の骨とも分からない小娘が何の用かしら?」


 ん? なんだ? 土筆と小雪がなんかばちばちと視線を合わせているんだが?

 二人とも相手がライバルたりえると思ったようで面白くなさそうに睨み合う。

 亜梨亜が空気が変わったのに気付いてぷるぷる震えだした。刈華は理由が理由だけに呆れた顔をしている。


「まぁまぁお二人落ち着いて。有伽が困ってるよ」


 その仲裁に入ったのは来世。

 今気付いたけどお前一体いつからここにいた?

 雄也や根唯も今気付いたのだろう。あっと来世を見て固まっていた。


「なんですのあんたっ」

「部外者は黙ってなさいっ」


 来世を見ることなく告げる二人の怒声に、来世は一瞬仰け反ったが、直ぐに止めに入るのを再開。邪魔っとばかりに二人にグーで殴り飛ばされ畳みをごろごろと転がって行った。

 雉も鳴かずば撃たれまい……鬼も喰わない喧嘩に踏み居る方が悪い。


「とりあえず、亜梨亜だっけ? 食事どうぞ」


「え? あ。はい。ありがとうございます」


 私が箸を渡すと、次の瞬間亜梨亜の前に出現する食事台とそれに乗った和風料理。

 軽く驚きつつもおそるおそる食べ始める亜梨亜。横を見れば、刈華も普通に食事を始めていた。


「中学一年は恵まれてますね。弁当作って来ずとも食事が出るんですから」


「といっても自分の食べたいものが出るとは限らないけどね」


「それは弁当でも一緒です。お金もかからず材料もいらず、好きな時に好きなだけ料理が出てくる迷い家。なんで私小学生にされたんですかね? ねぇ?」


 ねぇ? とこちらにうらみがましい眼を向けられても困る。

 私の一存で決めれることじゃないし、あんたがこっち来たのは私より前だからな。

 文句があるならここの教師連中に言ってくれ。


「で、他に気付いたところとかない? よーく思い出してみて?」


「え? えーっと」


 食べながら思い出そうとする亜梨亜。

 むむむ、と皺を寄せる眉毛が可愛い。


「そういえば、学生服着てたような?」


 となると、やっぱり学生が犯人か。

 ……学生服?

 セーラー服とかじゃなくて?


 つまり、学生服ってことは男子ってことだ。

 あるいは男子に見せる為に学生服を着込んだのかもしれないが。

 少しヒントだな。

 この学園内に居る男子の妖使い。

 しかも垢嘗だ。結構絞れる気がするぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ