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妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第一節 鉦五郎
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妖だらけの肝試し3

 面霊気の教室を出る。

 あのまま教室に居ても動き出す仮面のダンスくらいしかなかっただろうからさっさと次に向かうことにしたのである。

 すると、何か違和感が付きまとい始める。


 一度立ち止まり周囲を探る。

 影だ。

 私ではない別の女の影だけが私のすぐ後ろを付いて来ている。

 たぶん、これは影女だろう。


 妖能力としては影だけを自立稼働させられるだけのはずだ。

 影の見た場所は自分でも見られるらしいので諜報とかには有利で、グレネーダーにも別支部に居たのを確認したことがある。一度も会ってはいないけどね。

 ここのクラスメイトたち、結構幽霊居るんだなぁ。


 それからもネタが尽きたのか変な白い布を被った人物や特殊メイクしたゾンビ等が出てくる。

 二階に降りて、さらに一階へ。降りた階段が元の階段だったのは言ってはいけないことなのだろう。

 さらに一階を通り抜ける。


 すると影女が離れて、背後からはピシャッピシャッと音がし始めた。

 これは、多分だけど【ぴしゃがつく】かな?

 べとべとさんの亜種みたいなものらしい。

 大きく分ければ同じ種類なのかもしれない。

 音がぺたぺたなのかピシャッピシャッなのかの違いだろう。


 こんな妖使いもいるのか。

 確かこの手の能力者はグレネーダーに無条件採用された筈だ。

 何しろ能力が追跡に向いているのだからこれが居ると居ないとでは逃走犯の足取りを知ることにかなりの差が出る。


 べとべとさんたちは引く手あまたなので休みは無くなってしまうだろうが給料はただのグレネーダー職員よりかなりいいらしい。

 ああ、でも、伝えるのは良いけど、本当にグレネーダーに入ったら敵同士になるな。

 今は黙っておくか。


 ヒルコは結構怯えていたけど、私が全く驚いていないので頼もしげに私にくっついたまま震えているだけ。声も出してないのでヒルコがここにいることは多分バレてないだろう。

 彼女が寄生しているということは私達だけの秘密であればいい。それは強力な隠し玉になるのだから。

 それにしても、ここの廊下からは何もでなくなったな。一直線でいいのだろうか?

 とはいえ、教室入ったりで遠周りになってるけど。


 校舎を出て渡り廊下を歩く。ぼっと火が付き何かが迫ってきた。

 驚くヒルコ。うん、大丈夫、これはただの不落不落だ。


「これも驚かないか……」


「充分驚いてる。凄いと思うよ」


 そう言ってやると、芦田興輝は困った顔をする。


「声すら上げてないのにかい」


「ええ。ここまで妖使いが協力した肝試しはまずないもの。ところで葛之葉見なかったんだけど?」


「ああ、彼女なら土筆さんが脅かした時に気絶して体育館だよ」


 アホかあいつは?

 妖である女狐のくせに妖使いの人間に脅かされて気絶? 幽霊よりも危険な存在の癖に何してんのよ?


「いやー、ぶくぶく泡吹いてる女の子って初めて見たよ。人間って本当に泡吹くんだね」


 どんだけ驚いたんだろう、なんか逆に気になってきた。土筆は一体どんな脅かし方したんだ?


「とりあえず僕以外はもう体育館に居るよ。空枝さんも能力だけ残してるだけだから既に体育館だし、君と一緒にいた男の人も泡吹いてたから財前君が体育館に連れて来ているよ」


 財前博次が来世を連れて行った?

 ということは屋上に居たのは財前博次か。つまりこいつが金魂。

 それと空枝さんが能力だけ残してるということから、真後ろに居るぴしゃがつくは彼女のものだろう。

 既に衝立狸の能力は解除されてるみたいだし。


「さぁさぁ準備は整ってるから僕らで最後だよ」


 お化け提灯ぶら下げて、芦田がゆっくりと体育館へと向かい出す。

 体育館に皆集合? なんだってんだ全く。

 芦田は体育館入口にやってくると、私が来るのを待ってから下足場に靴を入れてスリッパを二人分取り出す。


 どうやらスリッパでこの先は行けということらしい。

 私もスリッパを履いて後に続く。

 体育館への入り口は下足場と受付というのだろうか? 職員のいる部屋が存在し、その部屋の窓が管理人と会話できるように下足横に設置されている。


 普段は使わないが夜間など特別に使用する場合に鍵を管理したりする先生が残っているらしい。

 本日残っているのはうちのクラスの熱血教師である。ガラス越しに目が合うと親指立ててぶっとオナラをひり出していた。

 大きな扉が三つ、これ全て体育場へ向う扉だ。その左右に男子更衣室と女子更衣室。その奥にはトイレが存在している。


 今回は体育場へと向かう扉だ。

 芦田は私が開くのを待っているらしい。

 だから、私は仕方無く扉を開く。


 差し込む光。

 開かれた扉の先に、パンッ、パンッと音が響く。

 無数のクラッカーが鳴り響き、クラスメイト達が笑顔で告げた。


「「「「「高梨有伽さん、これからよろしくっ」」」」」


 想定外すぎる光景に私はしばし呆然とする。

 本来の私に対しての、歓迎会がそこにあった。

 だからたぶん、今回の肝試し、これが一番驚きだった。

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