表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第一節 鉦五郎
52/182

妖だらけの肝試し1

 周囲が暗くなった。

 皆と合流した私はしばしそこで話をしながら時間を潰し、肝試しのルールを聞く。

 校舎の左端出口から入り込んで右端にある渡り廊下を通って体育館へ向う。そこでゴールだそうだ。

 戻らなくていいのだろうか?


 まぁ、問題ないのだろう。

 配置に向かうと、相方として来世の奴が立候補して来た。

 やっぱ付き合ってると勘違いした美園と梃に押される形で来世と組むことになってしまった。


 梃と美園が二人して先に行くよーっと校舎内に入って行く。

 葛之葉は脅かす側なのじゃ、と去って行ってしまった。

 何処に行くのか見ていると、小走りに駆けて体育館側に、そこから校舎内に入って行ってしまった。


 あちらから入って脅かす役の定位置に付くようだ。

 私は来世を見る。

 ラボの監視役らしいが鵜呑みには出来ない。何かしら理由を持って私に近づいてきている筈だ。


 何のために近づいて来ているかが分からないのが痛い。

 一体何者だろうか?

 隙を見せた瞬間襲ってくる可能性も考慮していつでも殺せるようにはしてるけど、何か嫌な予感もするんだよね。こいつは殺していけない、という漠然とした違和感だ。


「「きゃあああああああああああああああああああああああ!?」」

「にょほぉ――――――――――――――――――――――っ!?」


 別々の場所から二人の悲鳴と駄狐様の悲鳴が聞こえた。

 なぜ脅かす側のアイツまで悲鳴を上げているのか。

 私と来世は困った顔で視線を交錯させる。


「とりあえず、行くかい有伽?」


「しょうがないから行くわ。変なことしたら殺すけどいい?」


「ソレはアレかい、滅多にいないけどツンデレやクーデレ、ヤンデレとは違う、殺デレ! 出会った瞬間毎回お前を殺すって言うんだね」


「そんなに殺して欲しいのか?」


「有伽になら喜んで」


 ばっと両手を開いていつでもおいで? と身体をこちらに向ける来世。イケメンに飛び込んでおいで。と言われているような状況なのだが、なぜか嫌悪感が先に来た。

 とりあえず放置して校内へと向かうことにする。


「ここで放置プレイ、だと!? うん、それはそれで新しい何かに目覚めそうだよ有伽」


 すごく楽しげに私の横へと駆け付ける来世。追い付いた後は私の歩調に合わせて歩きだす。


「恐かったら手を繋いでもいいんだぜ?」


「なるほど、手を繋いで人間魚雷として撃ち出せばいいのね?」


「やめてっ!? なんかここでやられるとお化け側に呪われそう!?」


 盾としても役立ちそうにないならどうにもならないな。

 とりあえず殺意に警戒しておこう。

 位置口から少し歩いた場所で通路が途切れていた。

 進むには教室内を通らないといけないらしい。


「どうやったんだこれ?」


「あーこりゃ衝立狸だな」


 衝立狸? 塗り壁じゃなくて?


「ああ、ほら壁じゃなくって衝立だろ?」


「……確かに」


 なるほど、妖能力を使った肝試しってことか。

 唯一の進行経路となった教室に向かう。なぜかそこには鉦鼓が一つ。

 鉦鼓とは念仏を唱える時に坊さんが使う円形状の青銅製のモノである。


 うん、なんというか……ここは放置でいいかもしれない。

 私達は見なかったことにして教室を通り抜ける。

 多分だけどアレは鉦五郎の妖使いだろう。


 さすがにちょっと役不足だなぁと扉を開いた瞬間、真上からばさっと女の子。両手ぶらーんと吊るされた女みたいに現れた。血塗れメイクかなり怖いな。

 いきなり過ぎてびくっとなったけど私から悲鳴は漏れなかった。

 でも、私以外はそうじゃなかった。


「うわぁ――――――――――――――っ!?」

「ぎゃ――――――――――――――――っ!?」


 ニタリ、笑みを浮かべてするするっと天井へと消えていく脅かし役。

 土筆、何してんの……?

 そして腰抜かしたように倒れ込んだ来世、お前私が恐かったらどうのと言っといて驚いてんのあんたじゃん。

 ついでにヒルコ、驚き過ぎて一瞬で液状化しない。

 私が漏らしたみたいに周囲に染みを広げるな。


 ヒルコが正気に戻るのを待って私は来世を放置して歩きだす。

 今のタイミングで天井下りは確かにヤバいな。そりゃ悲鳴をあげるってものである。

 来世、四つん這いのまま這ってくるな、それはそれで怖い。


「さ、流石に驚いたよ。何だ今の? どっか見たことある顔だった気がするけど」


「そうだろうね。何やってんだろねあいつ」


 衝立狸の妨害のせいで真っ直ぐ校舎を通り抜けることができない。

 今度は女子トイレに入るように衝立が出現。

 仕方ないのでトイレに二人で入ると、三番目のトイレからどん、どん、と誰かが叩く音がする。

 恐がりな来世はなぜか私の後ろに隠れてしまった。


 やめんか馬鹿者。私の背に隠れんな。男だろ。

 無理矢理引っ張りだしてむしろ私の前に押し出してやる。


「ええ!? 有伽さすがに酷い……」


「男でしょ。怖がってないでほら、開けた開けた」


「いや、もう、ここ絶対ヤバいでしょ?」


 そういいながらゆっくり開く。


「あれ? 何もいない?」


 ふぅっと安堵した来世、その真上からばさりと落下するオカッパ少女。


「ぎゃああああああああああああ!?」


「赤いちゃんちゃんこ、いる?」


 縷々乃がしゅたっと着地して便座に座った。

 うん、花子の妖使いが便所にいるだけか。怯える程でも無いな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ