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妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第一節 鉦五郎
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逃走者と監視者

「いつまで付いて来る気?」


 ファミレスを出ると、支払いを済ませた男は小走りに追い付いて来た。

 なぜか隣にやって来て速度を合わせて歩きだす。


「監視者だって言ったじゃないか。何か問題あるかい?」


「あんまりない、かな。視界に入って邪魔だけど」


「つれないなぁ。でもそんなところが好きだ」


「真顔で言うな。普通の女の子なら勘違いするよ?」


 速度を上げたり牛歩してみたりしたけど気にせず付いてくるので諦めて普通に歩く。


「有伽も勘違いするのかい? 俺はむしろウェルカムだよ」


 ははは。と両腕広げていつでも飛び込んできたまえ、とでも言うようにこちらに向ける。

 当然無視して歩き去る。


「うん、このつれないところ、まさにツンデレ。いや、クールデレか? まさかヤンデレ要素もありか!?」


 知るかバーカ。

 さて、次は何処に……もう街終わっちゃったよ。この先は郊外の農村部。もうしばらく行ったらコンビニがあるんだっけ?

 まぁ、そろそろ引き返した方がいいか。丁度良い時間になりそうだし。


「家に帰るんだけど、付いて来る気?」


「当然。一つ屋根の下なんて素敵じゃないか。大丈夫、自分の食事や寝床は適当に用意するから気にしないでくれ」


 気にするなと言われても凄い気になるんだけど。

 まぁいい。最悪葛之葉に任せて蹴りだして貰おう。

 土筆が殺すかもだけど。


 ゆっくりと歩いて戻る。

 運動はあまりしてないようで、結構辛そうだった。

 無理して付いてこなくてもいいんだよ?


「有伽は凄いな。こんなに歩いてきつくない?」


「元グレネーダーなので。歩きは基本です」


「そういやそうだった。うぅ。最近お呼びが掛からなかったから喰っちゃ寝してた自分が恨めしい」


「何、あんたって滅多に呼ばれない系?」


「お、興味出て来た? うーん、そうだなぁ、折角だし自己紹介しちゃおっかなぁ」


 勿体ぶったような口調がイラッとくる。

 放置してしまっていいだろうか? 聞くんじゃなかった。


「俺の名は葛城来世。一応ラボ暗殺班第三班の室長だったんだぜ」


「へー、暗殺班って三班もあったんだ?」


「今の所、一班が実行、二班が予備と情報収集、三班は完全な予備だね。一班も二班も稼働不能に陥ったらようやく出てくるって班だ」


 ん? じゃあうわん共が稼働不能になったからこいつが来たのか?


「あ。もしかしてもう三班が動き出したと思った? 残念、俺は元三班室長なのさ。別の有能なのが入ってきた関係で室長から蹴落とされてね。今じゃニート生活まっしぐらさ」


「あ、っそう。ぷーって奴ね。じゃあぷーさんと呼ぼうか」


「止めて!? なんかいろんな意味で辛いからっ、来世って親しみ込めて呼んでください」


「仕事しろニート」


「ごふっ」


 よし、倒した。

 心臓押さえて崩れる来世。

 普通に話をする分には問題ない普通の男性だ。

 敵意もないし、こちらへの好意を隠しもしないので付き合いやすくはある。

 翼と真奈香を足して三で割った感じだろう。二ではなく三である。どうでもいいけど。


 再び足を速めて追い付いて来た来世と共に学校に戻る。

 不審者となった来世だが、全く気にせず敷地内に入ってきた。

 正気かこいつ?


「おー、中学校だお懐かしい。というか木造校舎とか初めて見た」


「旧校舎として残ってる所も滅多にないものね。でも、私はこういう校舎も好きかな」


「なるほど。では俺も好きになろうっと」


 うん、分かった。こいつはただのお調子者馬鹿だから雇ったはいいけど持て余したうわんが私に始末してくんないかなぁ? と送って来たんだろう。そうだ。つまり、こいつを殺してしまうとうわん共が喜ぶ結末になる訳だ。

 放置しといてやろう。貴様等の望みどおりにはさせてやんねぇ。


「あ、梨伽さーん、こっちこっち」


「なんじゃ? 不審者が居るぞ?」


「そのイケメンさんは誰?」


「ああ、こいつは……」


「あ、初めまして有伽の友達? 俺は有伽の彼氏で葛城来世さよろしく」


 ベビーフェイスがにかっと白い歯覗かせる。

 その笑顔だけでふはぁっと梃と美園が顔を赤らめていらっしゃった。


「訂正、こいつただのストーカーだから。今日突然俺は君の彼氏ですよろしくとか言って付きまとって来たの」


「け、警察ーっ」


 即座に動いた梃がソートフォン使おうとする。

 慌ててその手を掴んで止める来世。


「待った待った冗談、冗談だから。落ち着いて。俺知り合い。彼女の知り合いだよっ」


「え?」


「待って有伽、流石にこれはヤバいから。警察には捕まらないけどいろいろ始末書書かなきゃいけなくなるから。ほら、俺が始末書書いたらソレを元に一班がここに来るんだぜ、だから、ね、分かるでしょ? よろしく、お願いっ」


 はぁ、なんか凄い血相変えてるの見てて面白いけど、暗殺班一班は七人同行たちが先走って自分たちだけで何とかしようとした御蔭で自滅して連絡が行かず、しばらくは来ないはず。二班は二班で何考えてるか分からないけど私を泳がすつもりらしいし、私から好き好んで連れてくる必要は確かにない。

 仕方ない、フォローしておくか。


「記憶失う前の知り合いらしいわ。私は知らないけどストーカーではないらしいんだと」


「なんじゃなんじゃ、では彼氏彼女の関係かや?」


「それはない」


 結局梃、美園、葛之葉を落ち付かせるのに三十分くらいかかった来世だった。

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