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妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第一節 鉦五郎
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新たな刺客?

 一人、近くの街へぶらりと出掛けてみた。

 とはいえいつも一緒のヒルコとだけは一緒である。


「なんか、ワタシ達だけって久々だね」


「そう言えば、二人きりの時は本土からの逃走以来だっけ?」


「うん、こうやって平和な時間、有伽と一緒にいられるのは嬉しいよ」


 向こうだとよくウインドショッピングなどに行った気がしなくもない。

 その時はまぁもう一人いたりしたのだが、なんやかんや楽しかった記憶はある。

 今回は人通りがあまりにも少ない街並みの探索である。


 放課後という時間なのにゴーストタウンではないかと思える程に人がいない。

 赤いランタンと言えばいいのか? 軒先に赤色灯が付いた昔風味の駐在所が一カ所。

 ここに家族ぐるみで警察官が住んでいるらしい。

 ちなみにこの島ではこのおじさんと、もう一人若い警官しか住んでいない。

 若い方はさすがに一家に居候する気は無いのか隣の家を借りて住んでるらしい。

 駐在所の奥に住めば金は掛からないけど隣に住むと家賃が発生する。若い警察官は無駄金使ってるね。私ならもう一人の警官の家族に居候しているところだ。

 平和だった時だけどね。


 次に見付けたのは消防署。

 コンクリート造りの簡素な駐車場には消防車と救急車が一台づつ停まっている。

 どうでもいいので横目にチラっと確認だけしてそのまま進む。


 この街一番の総合商業施設。

 一番車が多く停まっている場所だが、立体駐車場と本体合わせても敷地が広い。そのせいで過疎ってるようにしか見えない。

 商業施設に行くのもよかったが、今回はここをスルーしてさらに進む。


 ところで、私の背後でちょこちょこ動いてる生物はなんだろね。

 後ろを振り向けば裸螺が慌てて近くの壁に取り付き木の枝に擬態する。

 壁に生えた枝。シュールだ。

 その近くには一つ目の黒い何かがお地蔵さんの如く微動だにしないように存在している。

 こいつらはギャグ要因なのだろうか?


 私の監視と聞いているけどあまりにもお粗末過ぎるのではないだろうか?

 絶対に周囲の人がこいつ等確認してるよな。

 お巡りさん、こいつ等です。って駐在さんに伝えに行ったら捕まえてくれるだろうか?


 しばし歩いた私は、適当に見付けたファミリーレストランに入る。

 お金については問題ない。土筆がどっかから持ってきてくれてるからね。

 何処から持って来たかはあえて聞いてない。


 ファミレスに入ると、暇していた店員さんが慌てて駆け寄って来て何名様ですか? と聞いて来る。

 一人だと答えて窓際の席に座る。

 客が殆ど、というか私しかいない。

 こんな状況でこの店はやっていけてるのだろうか? 不思議である。


 さすがに高港市のように奇をてらった食料は無く、普通のメニューしかなかった。

 レモンティーとパンケーキを頼む。

 パンケーキをヒルコと分けあいながらゆったり食べていると、誰かが店に入ってきた。

 年の頃高校生か大学生の男だ。少年と言っていいのか分からない年頃だけど、顔が童顔イケメン系なので少年でもいいだろう。


 にこやかな少年は、何処へ行くかと思えば、いきなり向かいに座って来た。

 テーブルを間に挟み、少年は強引にやってくると、テーブルに両肘をついて腕を組む。

 周囲が空きまくっているのにわざわざ私の目の前に座るか。つまり、そういう・・・・客な訳だ。


「おねーさん、俺ジンジャエール」


 どことなく、懐かしい顔立ちと声だった。

 聞いたことがあるようで、初めて聞いたような声。

 でも、顔を見てもその少年に見覚えは無かった。


「何か用?」


 短く、突き放した声で聞いてみる。

 どうせラボの刺客だろう。随分早いご到着だ。

 出来れば食事だけでもさせてほしい。

 なので、相手に構わず食事を続ける。

 ここのパンケーキはなかなか美味しい。生クリームと蜂蜜の味がいいね。


「【黴】の監視役だよ、【うわん】に言われてね。店の前で待ってる二人だと頼りないからだってさ。初めましてかな有伽」


「ラボの人か。ナニ? やる気?」


 頬杖ついて人間観察のまま、声だけを彼に返しておく。

 人間観察といっても窓の外には誰も居ない状態なのだけど。

 いちおう時折行き交う人を観察しているから人間観察だ。


「いやいや、せっかく観察するなら近づけるだけ近づいとこうと思ってさ、俺の心情」


「バカでしょ。殺して下さいって言ってるようなもんじゃない」


 興味は無かった。ただ、何時攻撃されても良いように反撃態勢だけは整えておく。

 できれば攻撃して来て欲しくないな。これもうちょっと味わって食べたい。


「いや~、でもほら、殺されてないじゃん」


 楽しそうに笑う少年は、やってきたジンジャエールを飲みだした。


「それに、俺、有伽に興味あるし」


「ウザイ、クタバレ、キエテナクナレ」


 あ、なんだろうこの懐かしいやりとり。


「あっはっは。そんな褒められると照れるなぁ」


 自分の頭を撫でながら笑う少年に、私はため息と共に人間観察を止めた。


「わかってると思うけど、私反逆者だよ」


「当然知ってる。俺は観察者だから君の近くで君を見ていたいんだ。生きている間はずっと……ね」


 顔は、なんとなく見覚のある顔だった。何処にでもいそうなイケメン顔。

 けれど、ずっと見ていたい顔。

 あの人とは……ああ、絆創膏がないから違うように見えるんだ。もしあれをつけてたら……一緒の人に見えたかも。


「あんた、志倉翼と関係ある?」


「え? 知らないよ? なに、もしかして似てる?」


「雰囲気って言うのか、何かがなんとなくね」


「もしかして好きな奴だったり~?」


「ただの元同僚よ」


「そっか。なら気にならないでしょ、俺、付き合うのはいつでもおっけーだぜ」


 確かに、昔の自分だったら、彼氏キープとか思って即答してたんだろうなぁ。


「地獄の底まで付き合ってくれるんなら考えても良いけど?」


「んー、俺も死にたくはないかなぁ。でも、まぁしばらくは一緒できる訳だし、その間にオトしてみせるさ、俺の魅力でさ」


「期待しないで待ってるよ」

 

 どうやら裸螺たちと同じ監視役らしい。こいつは放置でいいのだろう。一応土筆に確認しておこう。

 殺気も感じないから気にせずホットケーキを平らげることにした私だった。

 ちなみに料金はこの変な男に払わせることにした。

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