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妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第一節 不落不落
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平和な日々・1

 屋良サンとどうでもいい話をしていると、休憩時間が終了となった。

 皆が集まり先生が来て授業が始まる。

 しばし授業に聞き惚れる。


 ワタシとしてはこういった日常は殆ど体験したことがないことだったので凄く楽しい。

 有伽の身体を使ってのことだが、皆と一緒に授業を受ける。

 そんなことだけでも、ワタシにとっては非日常なのだ。


 出来ればずっと、こんなぬるま湯に浸かっていたい。

 でも、それは無理だ。

 妖研究所はきっとワタシたちに辿りつく。それは決まった出来事だ。

 その時、彼らを巻き込む訳には行かない。

 いつかは、そう、いつかはこのぬるま湯から出て行かなければならない。

 それも、近いうちに必ず、だ。


 午後の授業が終わりを告げる。

 皆が帰宅の途に付く中、ワタシはしばしその場で待つ。

 すると、日直を終えた根唯がやってきた。


「今日も雄也は野球だべ。んだば時間潰すべや」


 根唯の言葉遣いは独特だ。

 初めはどこかの田舎言葉かと思ったのだが、どうやら彼女独特の言葉遣いのようだ。

 いろんな地方の言語がごちゃ混ぜになっているようで、どこそこの方言、という訳ではないらしい。


 雄也は野球部だ。この学校では4人程しかいないらしい。

 野球出来ないじゃん。

 それでも野球の練習はできるからやってるんだって、あと練習試合とかは友達に来て貰って一緒にやってるそうだ。

 流石に女性である根唯は呼ばれることは無いらしい。応援しには行くらしいけど。


「いっつもは友達とおしゃべりしたり、近くの神社でぼーっとしたりしてんだけども、今日はどーっすっぺな」


「どうせ根唯は野球見に行くんでしょ」


「雄也君見てれば大満足だもんねー」


「な、何言ってっべな!?」


 根唯が顔を赤らめ抗議する。

 しかし踏歌と梃は意地の悪い顔で根唯を弄る。

 二人とも根唯が雄也のこと好きだって分かっててやってるようだ。


 楽しそうなのでワタシは放置しておく。

 すると縷々乃がやって来て、どうせなら梃の軽音見学しに行く? と言って来た。

 どうやら梃は軽音をやってるらしい。


「にゃはは。あたしってばほら、妖が琴古主じゃない」


 それは知らない情報なんだけど?


「だから音楽系が好きって言うかね、音楽好き妖使いが集まって音楽活動やってんのだよ」


 まぁ、折角だし見学くらいはしてやろうか。

 これを逃すと見学するような機会は無くなるだろうし。

 のろのろと席を立つ。


 お、来るかい? と踏歌たちがワタシが立つのを待ってゆっくりと歩きだす。

 ワタシの動きが鈍いので皆がワタシを見守りながらやきもきしている。

 手を貸したい気持ちはあるがソレをしてしまうとワタシが不機嫌になるんじゃないかと思っているようだ。


 なので、手を貸すことは無くワタシ自身の足でちゃんと向かうのを待ってくれている。

 ありがたさ半分申し訳なさ半分。

 それでもなんとか皆と共に音楽室へとやってくる。


「あら、てっこ先輩、そちらの方々はまさか、入部希望者!?」


 扉を開くと一瞬で掛けられる声。

 高飛車感のあるその声を発した人物は、ギターを手にした女生徒によるものだった。

 左右にお団子頭を作ってその余りでツインテールを作っている女生徒が、まぁまぁ。と喜びながら驚いている。


「残念ながら私の友達であって入部希望ではないのだよ。暇だから聞きに来たの」


「あら残念。私達の音楽を聞いてよろしければぜひぜひ我が軽音クラブに入っていただきたいですわ」


 そう告げた女生徒は、はっと何かを思い出すジェスチャーをする。

 いちいち動きがなんというかわざとらしく見える人である。


「いけませんわ。わたくし、折角お知り合いになれましたのに自己紹介を忘れておりましたわね」


 お嬢様口調とでもいえばいいのだろうか? ゲームキャラの悪役令嬢みたいな喋り方をする変わった女生徒だ。


三枝さえぐさ 秋香ときかと申します」


「あ、これはどうもご丁寧に……ってトキちゃん他人行儀でしょ」


「あら、だってそちらの方は初めてでしょう踏歌先輩」


「あ、そうだった。こちらは有高梨伽さん。転入生よ」


 ワタシはよろしく、と簡単に自己紹介する。


「ええ、ええよろしくお願いします。実はドラムが足りないのですが、実は昔ドラマーやってたとか、一度やってみるとなんか凄い激しいドラムさばきができちゃったり、なんてことはありませんか?」


「ありません」


「あら、残念。根唯先輩は……ドラムは無理そうですわね」


「一目見て、酷いべよ」


「なら出来まして?」


「無理っ」


 もはや聞くまでもないことだった。


「まぁ折角来ていただきましたし、ぜひご清聴くださいまし」


「あれ? 騫音はまだ来てないの?」


「まだですわ。日直なのでもうしばらく掛かりますわね」


 そう告げて秋香はギターを構える。

 もはや皆に披露したくて堪らないらしい。

 ワタシたちはそれに気付いて互いに見会った後、クスリと笑みを浮かべるのだった。

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