エピローグ・座敷童子のホームタウン
私は空を見ていた。
猥雑な教室の一角で、窓際の席で窓の外に映る景色を見上げ、肩肘付いて何の気なしに。
別に何かを考えている訳じゃない。
ただ、本来逃走しなきゃいけない筈なのに何してるんだろう私、という漠然とした思いだけはわずかに存在する。
懐かしくも見覚えのない教室。
本来居る筈の仲間たちはここには居ない。
私の居た教室じゃないのだから当たり前だ。
とある島の小さな学校。島中の学生が集まった唯一の学園。
珍しく多いと言っても1クラス25人程度が最多らしい我が学年。
他の学年は5人とか3人とからしく、小中一緒になっているらしい。高校は島にはない。否、数年前まであったらしいが人がいなさ過ぎて廃校となったそうだ。
なので皆本土の高校に行くらしい。一番近い場所でもフェリーで行き来しないといけないので全寮制の場所が人気が高いのだとか。
どうでもいい話だな。私にはもはや関係の無い話だ。高校なんて通うことも無いだろう。
結局記憶が戻っても、というか私が目覚めても学年は一年として通うことになっていた。
面倒くさかったというのが本当の所。どうせ学校生活送るのはヒルコだからヒルコの知り合いが多い一年のままでいることにした。
どうせ卒業することは無いんだし。つかの間の学園生活をヒルコが送れればそれでいい。
「梨伽さーん、こんちゃ」
為替梃がやってくる。
踏歌と一緒でこいつもあやしいか? と思ったがこいつは本当にただの気のいいクラスメイトだった。
ヒルコとも仲が良いので厚かましくはあるが私は放置である。
「踏歌は残念だったねー。親が急遽引っ越しが決まったとかで別れすら言わずに引っ越しちゃって。しかも同日に屋良さんまでって、あたしゃーショックだよ」
「実は梃が嫌で転校したのかも」
ついでにやって来たのは縷々乃。黒い笑みでふっと梃に微笑んで見せる。
冷笑浮かべたように見えるがこれは彼女の心からの笑みらしい。
「えー。さすがにソレはないと思いたいなぁ」
「大丈夫よ。梃が嫌われたりはしないでしょ」
「えへへ、ありがと梨伽さん」
結局踏歌と美織は転校ということになった。
処理は裸螺がノウマの妖使いと共に行ったらしい。
その辺りから違和感を覚えた一般人が深入りして来るのを避けるためらしい。
裸螺たちが居る限り私達に逃げ場はないように思われる。
こいつら引き剥がす方法ないもんか?
もう一度窓の外を見る。
黒い一つ目の靄みたいなものが真昼間なのに出歩いていた。お前はメジェドかカオ○シの類なのか?
さぁてどうなるんだろうね。
この地に居残るってことはここが戦場になるってことだ。
私が逃げないからってことで無数の妖使いが一気に来たら詰むだろう。
でも根唯の幸運力がどう効果を発揮するかだな。場合によっては確かに逆転の可能性はあるのかもしれない。
何にせよ次の刺客が来るまでは、このぬるま湯でゆったりしよう。
そのくらいは許してくれるよね……真奈香――――




