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妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四節 小豆婆
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去るモノ、引きとめるモノ

「んじゃ、さよなら葛之葉」


「うむ。残念じゃのぅ」


 本当に残念そうに見送るのは小出葛之葉。

 幽霊が出そうな洋館みたいな空き家を背景にして、私達は別れを告げていた。

 とりあえず七人同行と濡女を倒したことでラボ暗殺班第一班からの刺客は途切れたことになる。


 当然、ここで二人が消えた以上私がここにいることは遠からず分かるだろう。

 ならばこそ今のうちに本土に逃げるのが得策だ。

 私達は踵を返す。

 葛之葉に見送られて、このままフェリー乗り場に向かって本土に移動するのだ。フェリーしか移動手段が無いというのもおかしな話な気はするが。


「有伽さんっ!」


 授業を抜けだしたのだろうか? 荒い息を吐いて雄也と根唯が駆け付けて来た。

 さすがに全力疾走だったようで、言葉が続かずその場で肩で息をしながら力尽きる。

 タイミング良すぎだろこいつら。出待ちしてやがったんじゃないのか?


 時間的に少しでも早かったら戦闘に巻き込まれてただろうし、遅れてたら私達に出会うことは無く私達はフェリーに乗って消えただろう。

 ある意味一番のグッドタイミングだ。

 もしかしてこれも座敷童子の幸運によるものか?


 放置して去っても良かったがどうせ座敷童子の幸運あたりで足止めされるだろうから今のうちに伝えて納得させてしまおう。

 土筆も私が動きを止めたせいでその場に止まる。

 そして話の邪魔にならないように私の背後に向かう。


「で、何しに来たの?」


「何しにって、放っといたら有伽さんいなくなっちまう気がしたんだべ」


「根唯が急いでっつーから駆け付けたんだ。有伽さん、居なくなるってなんでだよ!?」


 本当に自分に近しい奴に幸運を与える能力って厄介ね。

 つまり根唯は私に自分の近くに居てほしいと思っているってことだ。

 正直そういうの止めてほしい。自分から厄介事抱え込まないでほしいんだけど。


「皆ピリピリしとらんし、踏歌さん、どうなったん?」


「死んだわ。私達が殺した」


 級友が死んだ。しかも私達が殺したと分かればもう見捨てるだろ。

 そう思ったが、根唯は少し辛そうに顔を顰めただけだった。


「踏歌さんが危険な存在だってことは分かってっべ。学校の皆にも知らせといた。それに、屋良さんが死んでたことも……」


 でも、と顔を上げる。


「それと有伽さんが島でてぐことは繋がらんでや!」


「そうだよ、別にそういうことで敬遠したりはしないぞ。根唯だって既に殺害してるし」


「ばっ!? 馬鹿雄也、それあたしらだけの秘密だっつったべや!?」


 え、こんな人殺しそうもない根唯ちゃんが殺人経験者!? それはさすがに想定外だ。


「あ、あの、引かんでな。あたし、雄也と本土の高港市に行ったべや。したらなんかそこの犯罪者に連れ回されてラボの暗殺者ってのに追われたんだべ。そこで右腕斬られて、不幸を届けて殺しちまったんだべ。あ、あれだべよ。正当防衛だ」


 いや、過剰防衛かもはや普通に殺人だろう。

 まぁ、私がとやかく言えた義理じゃないか。


「相手はほら、暗殺者っていうことやし、殺したからって警察が動く訳じゃぁなかよ。だけんども、殺しちまったのは事実だ。ただ、あの人に迷惑かかるしどうなるか分からんがら、自首する訳にもいかんでや」


 殺したのはラボの暗殺者。なら自首すれば待っているのはラボへの収監、地獄の日々、か。

 確かにそんなことになるなら罪の意識を持ったまま日々を過ごした方がいいかな。

 多分彼女は幸運にも見逃されたんだろう。義手を作ったのが妖研究所だそうだからちょっと気になると言えば気になるけど。


 GPSとか埋め込まれてるんじゃないかな?

 あ、でも海に入ったことでイかれてるかもしれない。それも幸運か?


「あたし、幸運だ。だって四肢欠損の座敷童子だべや。だから、逃げる必要はねぇだ。有伽さんはあたしが守るっ」


「そうそう、よくわからないけどさ、わざわざ島からでてくことないんじゃないか。学校に皆待ってるぞ有伽さん」


 うん、とりあえず雄也は黙っとけ。

 何も分かってないみたいだから会話に参加されても困る。

 雄也は放置だな。後は根唯を説得すれば大手を振って島を脱走できるだろ。


「私は逃亡者よ。追手が掛かるの」


「知っとぅべ。やからあたしが守るんだ」


「いや、あのねぇ、私庇うとラボの奴らに狙われんのよ。あんたたちだけじゃない知り合い巻き込んで地獄を味わいたい訳?」


「だからあたしが守んだ。家は雄也の迷い家がある。毎日別の場所から出て索敵すればええだ。くーちゃんもおるし、学校の皆だって助けてくれる。有伽さんの居場所、あたしが作ったる! だから、これで終わりなんてそんな哀しいこと言わんといてっ!!」


 なんだよそれ、どんな傲慢なのよ。

 私は追われてて、相手は暗殺部隊だ。

 たかが座敷童子の妖使い一人居たって守りきれるわけがないっ。

 なんか、腹立って来た。

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