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妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四節 小豆婆
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トラップ発動

「全員死んじまえッ!!」


 土筆は大丈夫だろうか?

 こいつの姿見ないようにしてくれよ。

 呪いにやられたら私じゃどうにも出来ないぞ。


「葛之葉、あんたは大丈夫なの!?」


「妖怪には病気も何にもないのじゃ。たぶん」


 多分かよ!?


「葛之葉、トドメを任せる。作戦通りにだから」


「ほいほい、妾……ん? 作戦通りにか、了解じゃ」


 私は樹木子から振り落とされないように舌を使って上方に身体を固定。

 眼を使えないのでこれで何とかするしかない。

 あとは草薙の自動迎撃機能で磯撫での釣り針攻撃を回避する程度だ。

 地に足をついてないためか小豆婆は私ではなく葛之葉を狙っているらしい。


 本当なら私が追い詰める筈だったんだけど、視界に収めるだけでアウトな踏歌を相手にするのは難しい。ここは葛之葉に丸投げするのがいいだろう。

 問題はトラブルメイカーのアイツがソレを出来るかどうか。

 感覚を研ぎ澄まし、迫り来る釣り針を迎撃して行く。

 多少移動しても木に巻きつけてある舌さえ放さなければ大丈夫なので空中に身を躍らせながら迎撃、なんてことも可能だ。

 立体起動を行いながら近づく釣り針や枝、根っこを斬り飛ばす。


 その間に踏歌に迫る葛之葉。近接戦闘に持ちこんだようで金属音が響きだす。

 踏歌の持つサバイバルナイフと葛之葉の鉄扇がかちあっているのだ。

 音から察するに葛之葉が押している。

 いや、息がし辛い踏歌が弱ってるだけか。


「そいっ」


 踏歌の腕を掴んだ葛之葉が遠くに投げ飛ばす。


「ぐぅ、いづまであぞんでるっ、ダギ、ざぐらぞうごろう、首齧りッ」


 バキリ、嫌な音が真下から響いた。

 何かと感覚を辿れば、巻き付いていた幹の真下を樹木子が折っていた。

 そこに磯撫でが巻き付き引っ張る。


 直ぐに舌を引っ込め逃走。

 好機と見た樹木子の枝が私に襲いかかる。

 草薙で受けるが吹っ飛ばされた。


 葛之葉も、追撃を行う瞬間を小豆婆に狙われ空中に跳ね飛ばされる。

 そこに襲いかかる佐倉惣五郎。

 火の玉で迎撃するが、ものともせずに葛之葉に突撃、その首を絞めようとしてくる。

 咄嗟に狐に戻った葛之葉が直ぐに変身して脱出。

 しかしそこに迫るダキ。

 こちらには首齧りが迫り来る。


 霊体にも効く銃弾が首齧りにぶち込まれ吹っ飛んで行く。

 土筆が援護射撃してくれたようだ。

 樹木子が迫ってくるので私は近くに転がって来た葛之葉をむんずと掴む。


「にょほ!?」


 迫り来る妖能力から逃げるため、洋館へと駆け抜ける。


「逃すかァッ!!」


 当然踏歌たちが追ってくる。

 早いのは霊体か? 縊鬼はいち早く室内に入ったようだ。おそらく土筆を潰すつもりだろう。

 さらに首齧りが追って来る。

 佐倉惣五郎は何処行った? 土筆の銃弾の御蔭でまだ外らしい。

 一番遅い樹木子よりも遠くに居る。


 ダキは踏歌と肩を並べて走る。

 アイツ結局どんな能力なんだ? 魚くれとしか言ってない気がするんだけど。

 問題は磯撫でか。

 あれはどの辺りにいるんだ?


 屋敷に辿りつく。

 扉を開いて中に入ろうとすると、葛之葉が待てと言う。

 どうやら首齧りが先回りしてしまったようだ。

 開いた先に居るらしい。


「く、くく、残念だったわね高梨有伽」


「これで詰み、とでも?」


「どう見てもそうでしょう?」


 右側にダキ、左側に佐倉惣五郎。

 目の前には踏歌とその背後に佇む樹木子。

 背後のドア、その向こうに存在するのは首齧り。

 そして土筆を殺すために先行して室内に入った縊鬼。

 磯撫でも私を狙っているだろう。


 葛之葉がどうするのじゃ? と小さく尋ねてくる。

 そうね、どうしようか? 諦める? それとも最後まで足掻く?

 いやいや、まだ最後の足掻きじゃないだろう。


「トラップ、発動」


「は?」


 私の言葉に意味が分からないと怪訝な顔をする踏歌。

 次の瞬間、パンッとはじける音が一つ。

 踏歌の顎を撃ち抜き脳天を貫通し頭蓋から突き抜ける。

 きっと、彼女は何があったのかすら分からなかっただろう。


「あ、え?」


 死ぬ前に私を殺そうとした踏歌。しかし、急ぐ余りに警戒を怠ったのが彼女のミスだ。

 もともと私は敗北し掛けたらこの屋敷に戻るつもりだった。

 別に屋敷の中に入る必要は無い。

 七人同行の本体が追ってきてくれさえすればいいのだ。


 倒れる踏歌の真下から、そいつはゆっくりと姿を露わした。

 自身をとろけさせられるがゆえに地面と同化しトラップと化していたもう一人の協力者。

 彼女の妖能力は【蛭子神】。本来であれば妖能力者同士の感知に反応しただろうが、激昂してしまっていた踏歌は気付かなかったようだ。

 まさか自身の真下に、もう一人妖使いがいるなんてことに。


 土筆が護身用にと手渡して来たハンドガン。ヒルコに渡してトラップ役をお願いした。

 踏歌を殺させることに少し躊躇したけれど、ヒルコは率先して私を守るためならやれるって志願してくれたのだ。

 追い詰められてたのは私じゃない。お前だ踏歌。

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