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妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第一節 不落不落
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温かな食卓・2

「あー、近衛醤油取ってー」


「根唯ー、そっちの胡椒ちょーだい」


「ん、おかわりだよ近衛」


 踏歌が雄也に醤油をせびり、梃が根唯に胡椒をねだる。

 そして縷々乃が茶碗を雄也に差し出した。

 はいはいっと言いながら醤油を渡した動作のまま茶碗を受け取りお代わりを炊飯器から取ってくる雄也。大盛りについだご飯を手渡すと、縷々乃がとても嬉しそうにありがとう、と告げる。


 彼らは有伽がはぶられたりしないようにとよく気に掛けてくれるのだ。

 ワタシとしてもありがたいのだけれど、ちょっとうっとうしい時もあったりする。

 プライベートとかそっちのけで構って来るからねこの三人。


「へっへー。どうよこれ!」


 自慢げに卵かけご飯を見せつけて来る梃。

 どうと言われても困る。別に羨ましくもなんともないし。


「よかった、ね?」


「ふっふっふ。ほしかろう。だがこれは私んだ!」


 そう言うが早いか急いで掻き込む梃。

 それを見た踏歌と縷々乃が競い合うように掻き込み始める。

 別に対戦している訳ではないのだが?

 そんな疑問を覚えたワタシだけど、彼女達は気にせず一気に掻き込み、梃が一番に食べ終えた。


「いっとーっしょーぅ」


 ホッペに赤い丸でもついてそうな笑顔で茶碗を頭上に突き出す梃。

 他の二人が物凄く悔しそうにしていた。

 いつの間にフードファイトになったのだろう?


 食事が終わると迷い家から出て休憩が始まる。

 ワタシは動きが遅いので早々教室に戻って次の教科の用意だ。

 座席に付いてのろのろと用意を整えて行く。


「流石有高さんね」


 ここに来てからはほぼ一番で教室に戻っているためか、今まで一番に戻って来ていた屋良美織が教室に戻ってくると共に告げる。

 委員長がしっくりくる文学少女の三つ網おさげ娘である。残念ながら委員長はやってないらしい。ちなみに妖使いでもない。


「屋良サン」


「この時間は食後にトイレに行ってる分遅くなるのよ。流石にこれ以上短縮は出来ないから一番に戻るのは無理そう」


「ワタシは、やることないので」


 ちなみにトイレに付いては……おっとこれは言わぬが華か。

 早く正気に戻ってね有伽。じゃないと……いやん。これ以上言えない。


「それにしても有高さんはなんでまたこんな離島の田舎に? あ、ううん、別に詮索しようとしてる訳じゃなくて、世間話に、って思ったんだけど」


 怪訝な顔をしていた訳ではないのだが、なぜか慌てて言い訳する美織。


「よく、わからない。記憶、ないから……」


 そう、記憶喪失で押し通している。

 何しろ本人が記憶喪失というか意識不明状態なので。

 生きてるけど意思が眠っているような状態。なんとか助けてあげたいが、いつ目覚めるかも分からない状態だ。

 ワタシが動かさなければ身体は寝たきりになっていただろう。


 土筆さんと話し合って学校に通うことを選択したけど、無断借用してる分ちょっと心苦しい。

 早く目覚めてよ、有伽……

 そんなことを思っていると、美織がふぅっと溜息吐いて席に付く。


「私が自慢できること、なくなっちゃったなぁ」


 教室に一番に着く、それが彼女の自慢できることだったらしい。

 それ以外にもいろいろあるよ。そうは思うが彼女に言ったところで気休めいもならないだろう。


「ま、いいか、いつかきっと勝ってみせるわ」


 彼女は何の闘いをしてるのだろう?

 出来ればワタシを巻き込まないでほしいんだけど。


「ところで有高さんは誰が好み?」


「なんのこと?」


 いきなりなんだ? 誰が好み? どういう……


「この学校に来ると、出会うのは同じ男ばっかりでしょ。だから必然的にこの学校の生徒から彼氏を見付けることになる訳、で、誰が好み?」


 いきなりそんな事を言われても困る。

 男への興味なんて抱いている余裕は無かったし、そもそも今は有伽を演じている状態、彼女がどういう男性を好きかとか分からないし、強いて言うなら隊長さん、かな?

 死んじゃったけど。


 隊長は妖専用抹殺対応種処理係に居た時の隊長さんだ。

 残念ながら有伽と共に死にざまを確認してしまっているのでもう居ないと言わざるをえない。

 ならば言うべきはこうだろうか?


「遠くに居たから」


「ああ、前に居たところに? ふーん。あら? 前のこと覚えてるの?」


 あ。しまった、今の有伽は記憶喪失だったんだった。

 えーっと、どうしよう?


「たぶん、だけど」


「真面目に答える気なしかっ!? あっぶな、自分だけ告げて自爆するところだったわ」


「屋良サン、は、いるのね」


「え? げっ、藪蛇だった!?」


 自分だけ告げて自爆ということは彼女には気になる相手がいる、ということである。

 失敗したぁと告げる彼女だったが、なぜか嬉しそうにしている。


「実はねぇ、私は高麗君が、あ、言っちゃったぁ」


 知らねぇよ、どうでもいいよ。

 高麗って誰だっけ? ああ、なんか微妙なイケメン君だ。

 多分この島出たらもっとカッコイイ人沢山いるなぁ、程度の容姿だった筈である。

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