表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三節 磯撫で
35/182

七人同行撃破作戦

「とりあえず、七人同行を倒すのに邪魔な濡女、磯撫で、それから樹木子を……」


 そうか、樹木子だ。


「有伽様?」


「樹木子は森に特化してるよね? 奴らの隠し玉、それじゃない?」


「ああ、可能性はありそうじゃの。同じ木仲間としてそこのなれ、どう思う?」


「へ? 裸螺に聞かれても困るんだけど!? でも、そだねー、樹木子といえば人をだまして絡め取り。血を吸い取る妖樹と呼ばれてるかな」


 人を騙して絡め取る。森の中ならやはりうってつけだ。

 血を吸われるということは長く拘束されるだけで戦力が低下する。


「あと気になるのは七人同行の見るだけで病気に掛かるとかの能力が今の所掛かってないことなんだけど」


「それについてはノーコメントですわね。私もそんな能力持ってるとは聞いたことありませんから」


 つまり、最後の隠し玉にしてる可能性はある訳だ。

 ああ。でも私だけなら垢嘗めの力で効かない可能性もあるかもね。

 でも暗殺班ならソレを使えば楽だろうに、何かリスクでもあるのか?

 考えても仕方ない、か。こちらは追い詰められてるんだ。罠でも虎穴に入らなきゃ活路が見出せない。


「有伽様、こちらをどうぞ。ハンドガンですが一番反動の少ないモノを選びました。有伽様が片手で撃ったとしても肩を脱臼したりはしません」


「あ、じゃあそれワタシが貰う」


「えー、ヒルコだと水分が中に入って暴発しません?」


「しないよっ!? スライムか何かと勘違いしてない!?」


 準備は既に完了している。

 あとは覚悟をするだけだ。


「ここで七人同行を仕留める。木に気を付けて行きましょう」


 周り中が木なのがちょっと怖い。

 確か樹木子の能力は木を操るのではなかったか? となると、まさにテリトリーへの侵入となる訳だ。

 相手としてもこちらを殺したい。私としても相手を殺したい。

 つまり、奴らが自分たちの有利な地形で待てるのに対し、私達はそこへのこのこやって行かないといけない状況な訳だ。


 さぁて、ただ向かうだけじゃ負け確定なんだよね……となると、現状出来るのはアレ、しかないか。

 でも、そうなると風が欲しいな。

 誰か風を操れるような妖使いはいないかな?


「ねぇ、誰か風使える奴居ない? あるいは風の流れを変えられるような?」


「なんじゃ風か? んじゃ盾引っ込めて風にしとこうかの」


 その尻尾、属性変えられるのか……

 本当に底知れないなこの女狐。オトしといた方が良いのだろうか?

 いや、狐は傾国とも言われてるし、下手に関わりを持たない方が良いかもしれない。こいつトラブルメイカーらしいし。


 でも、この狐娘がいる御蔭でなんとかなりそうだ。

 あとは逃走経路。

 そこに関しては……


「土筆。森周辺で開けていて闘いに向いた場所はある? 土筆が動きやすい場所があればなおいいんだけど」


「森周辺、でしたら、そうですわね、東側でしょうか? 確か朽ちた空き家が一つあったかと」


「丁度良いわね。そこで迎撃しましょうか」


 まずは現物を見ることにした。

 土筆の案内の元、敵が陣地を敷いて手ぐすね引いて待っている場所から東へ数分。

 その空き家は蔦塗れで佇んでいた。


「これはまた見事な洋館ね」


「なんじゃっけなー、これどっか見覚えあるような……」


 狐がなにかくっちゃべっているが放置だ。

 とにかくここなら土筆が使える。

 裸螺はそこらの木に擬態して貰うとして、多分役立たないから戦力は私達だけ。裸螺は極力無視でいこう。


「気を付けるべきは樹木子、磯撫で、濡女。他にも妖能力を持ってるかもしれない七人同行。迎撃は屋敷から土筆。葛之葉は遊撃。私は目の前で囮兼撃墜役ね」


「それ囮じゃなくないかの?」


「人数が少ないから仕方無いのよ。さて、それはともかく、まずは先制攻撃。相手がここに来るように仕向けたいから葛之葉、悪いけど手伝って貰うわ」


「ふむ、何をするんじゃ?」


「まずは風で道を作って、敵の後ろ側から……」


 私は作戦を話す。聞いて行くほどに眼を見開き脂汗流し出す葛之葉。


「そなた、容赦ないの」


「残念だけどそういうのは本土に置いて来たの。命をかけるんだから、相手や周囲を思いやる必要性って、ある?」


 きっと、私は素敵な笑顔を見せていたと思う。

 葛之葉は青い顔でこくこく頷いていたけどね。


 ---------------------------------------


 東華踏歌はゆったりと森に佇んでいた。

 正直な話高梨有伽が復活していたことは想定外だった。

 しかし、可能性は考えていたので問題は無いし、それを確かめるために今までの時間を費やしたのだ。

 結果、記憶喪失なのは確かだと確信を持って殺害を開始した。

 もともと相手を追い詰めて行くのが楽しいので、即座に殺す気は無かったが、御蔭で面倒臭い状況になってしまった。


 濡女がそろそろこの仕事を終えて次に行こう、と誘いに来なければ、今しばらく友人を演じながら決定的絶望の状況で裏切ってみせることを考えていたのだ。

 やはり最後まで騙し切ってから殺した方が良かったな、と今更ながら後悔している。

 だが、バレてしまったモノは仕方無い。


 こうなったら樹木子を使って地獄を見せてやる。

 そう思ってここで迎え撃つことにしたのだ。

 有伽の今の状況からして七人同行をここで倒しておきたいと思うだろうからだ。


 さっさと来い、そう思っていた矢先だった。

 パチパチと、爆ぜる音が聞こえた。

 焦げくさい臭いが漂って来た。

 背後を見れば、森が……燃えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ