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妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三節 磯撫で
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作戦会議3

「これは、どうなってますの?」


 民家の天井から上半身を出した土筆。

 目の前には一瞬早く気配を感じて見上げた私と自分の尻に裸螺をくっつけ困った顔の葛之葉である。

 あいつ、息止まってんじゃないか? そう思えるくらいに裸螺が動かなくなってしまった。

 気持ち四肢がぷらーんとしてる気がしなくもない。

 まぁ、死んでも邪魔者が一人消えるだけだし問題は無いのだが。


「小堺裸螺……何してるんですの? 殺しますわよ?」


「っぷはぁ!?」


 あ、生きてた。チッ、しぶとい奴だ。


「ありゃ、そこに居るのは土筆ちゃん。お邪魔してます」


「何がお邪魔ですの。でもこいつがいるということは、何か分かりましたか有伽様?」


「ええ、とりあえずここで一度作戦会議ね。居場所は分かった?」


 私の言葉にコクリと頷き、天井から飛び降りる土筆。

 地面に着地すると、ハンドガンを裸螺のこめかみに押しつける。


「場所は島の反対側ですね。結構森深い場所ですが、そこは奇襲を警戒して選んでいるようですわ。民家が無いので私が無防備になってしまう、ということもありますわね。偵察だけでしたから問題なく行えましたが狙撃はあの場所に居る間は出来ませんわね」


「そう、相手も一応警戒はしてるのか」


「ええ、近衛がもう少し知能持ってくれてれば迷い家の軒下使って様々な場所から奇襲できますのに。モグラ叩き戦法が使えないのが痛いですわ」


 その場合叩かれるモグラが土筆になるのだが、そこは理解しているのだろうか?

 私としてはその戦法徹底的に失敗する気配しかしないので実際にやることになったとしても却下していた気がする。


「しかし、じゃ。森の中におるのなら波を扱うことは出来まい?」


「磯撫でも無意味になりそうね。でも、奴らがそのメリットを捨てて海辺から距離を取るのはなぜ?」


 ただ奇襲を見越してか、何も考えていないのか。あるいは、そちらで待った方が都合が良いから、か。

 つまり、今居る死体の中にある妖能力に、森で力を発揮するタイプがいる?

 あるいはただ土筆による奇襲を防ぐためだけ?


「まぁいい。とりあえず目的は七人同行の撃破」


「お供いたしますわ」


「なんか大変そうじゃのぅ」


 私は裸螺の首根っこをひっ捕まえて動き出す。

 目指すは七人同行の撃破。

 やるぞ土筆。本気で潰してやるッ!


「あれ? なんか裸螺も強制参加する感じ?」


「当然でしょう?」


 こいつだって戦力としては使えないが何処にでも使える便利な枝としてなら問題は無い。

 緊急時に舌を絡めて自身を持ち上げるのに最適なのだ。

 早速だが利用させて貰うぞ。


 あと使えるのはヒルコと、葛之葉。

 ヒルコはともかくこの葛之葉が未知数過ぎて使いあぐねる。

 せっかくだからどれくらい使えるのか聞いてみるか。素直に答えてくれればいいのだが。


「で? 葛之葉、あんたはどれくらい使えるの?」


「なんじゃ藪から棒に。そうじゃのー。妾が使えるのはこの鉄扇。変化の術。それから男性特攻のテンプテーション。それから五尾尻尾じゃの。とりあえず炎、雷、水、盾、料理上手と武装は豊富じゃぞ? それからまぜまぜ棍棒、かの」


 突っ込み所が多過ぎてどこからツッコミ入れればいいのかわからない。

 とりあえず、男性が敵に居ないからテンプテーションは無理。

 狐に戻られても相手は妖使いなので無理そうだし、五尾の料理上手以外の使える能力、炎、雷、水で遠距離、盾尻尾と鉄扇での近接戦闘かな。


「まぜまぜ棍棒? というのは?」


「うむ。昔手に入れたものでな、ダグダの棍棒という木で出来た巨大スプーンなのじゃ。ほれ、こいつじゃの」


 懐から取り出されたのは、確かに普通のスプーンからすると巨大だが、そこまで大きいか? と問われると小首を傾げるしかない木製スプーン。


「妾の能力で妾でも使える大きさにしとるのだ。実際はとてつもなく巨大じゃぞ。普通におこぼれ山くらいは掬い取れる大きさじゃ」


 ……とりあえずスケールが大きすぎて想像付かない。

 多分だけど葛之葉が大仰に告げているだけだろう。

 それよりも、その棍棒で闘うのか?


「この棍棒には変わった能力があっての、こうして混ぜると……」


 と、何も無い場所をぐるぐるとかき回す。

 すると、空気が混ざるようにいやな気配が生まれだす。


「なんでも掻き混ぜる掻き混ぜ棒。例え海だろうが山だろうが、まして、人であろうとも、な」


 ニタリ、笑みを浮かべた葛之葉が、一瞬だけだが得体の知れないバケモノのように思えて背筋が寒くなった。


「そういう理由で妾は近接戦闘結構強いのじゃぞ」


「そ、そう……じゃあ突撃の際はよろしく」


 一瞬で消えた肉食獣に睨まれたような感覚は、消えた後も私達を戦慄させていた。

 なんとか言葉を返したが、この葛之葉、ただの五尾狐だなどと思うと大変なことになりそうな気がする。

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