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妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三節 磯撫で
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作戦会議2

 土筆を送りだした私は、周囲に視線を向ける。

 あそこか。

 海岸周辺は遮蔽物が何も無いのでそいつも居られなかったらしい。

 かなり離れた民家の軒先に不自然に突き出た枝を見付ける。


「ちょっと聞きたいんだけどいい? 【尾取枝】」


 枝の傍まで行き、私は【尾取枝】に声をかけた。

 すると、木の枝が震えて煙がボン。

 小柄な少女が地面に着地する。


「おはろー。意識取り戻しおめでとーぅ」


 黙れ、殺すぞ能天気娘。


「にょほ!? なんじゃこいつ?」


 そういえばこの駄狐もいたな。


「こいつは暗殺班2班だっけ? の監視役。【尾取枝】ってゆう敵よ」


「えー、有伽ちゃんひどーい。裸螺は敵じゃないもん。ただの監視者だもん。【うわん】のおじさんからは監視だけしといてって言われてるし、報告の必要もないんだよ。ほら、敵じゃない」


 それを鵜呑みにできるほどの信頼感はないのだが。

 しかもそんな言い訳をしながらもこのふわもこ娘の視線の先は私を見ていない。

 彼女が見ているのは小出葛之葉。その尻尾である。


「さて、聞きたいことがあるんだけど、いい?」


「いやいやいや。私が喋ると思ってるのかね有伽ちゃんや」


「もふって、いいよ? 私の質問にちゃんと応えてくれたなら」


「ぐふっ!?」


 土筆から聞いただけなので本当かどうかはわからない。でもこの小堺裸螺という名の少女は、妖使い特有の欲望として、鳥居の柱に抱きついたり、尻尾を愛でる性質があるらしい。

 つまり、五尾の尻尾を持つふさふさしてそうな葛之葉の尻尾は彼女にとっては抗いがたい誘惑なのである。


「七人同行たちの居場所とこの島に来ている敵性妖使いの数。あと弱点があれば」


「で、でも、う、うぅ……」


 私と葛之葉を交互に見ながら焦る裸螺。

 うぐぐぐぐ。と必死に耐えようとしていたので、私は葛之葉に近づくように告げ、尻尾を乱暴に掴むとゆらゆらと振ってみる。


「ぬあぁ、らめぇ、そんなに揺らしちゃらめなのぉっ」


「ふふ、どうする? 五つの尻尾に塗れてみたいと、思わないの?」


「ああ、卑怯者ぉ。ああ、だめ、ダメなのに、身体が反応しちゃうぅ」


 涎垂らして近づき始める裸螺。危険を感じた葛之葉が一歩後退さるものの、私が尻尾を掴んでいるので逃げられない。


「答えろ【尾取枝】」


「あああああ……あふぅ」


 頑張って耐えようとした裸螺、しかし私がその手を引っ張り自分の手に持っていた尻尾を手渡してやる。


「話ましゅ」


 裸螺は尻尾の肌触りで悪魔に魂を売った。

 恍惚とした表情を浮かべ葛之葉の尻尾の一つに頬ずり始めた彼女を無理矢理引き離す。

 まずはこちらの用件だ。

 名残惜しそうにする裸螺から情報を根こそぎ引っこ抜く。


「七人同行の本体は東華踏歌。彼女は今島の反対側にいるよ。本体がばれちゃったからどうやって貴女を倒すか濡女と協議中」


 濡女と、だけ?


「ん、今回七人同行のパートナーになってるのは濡女だもん。最近人手不足だから二人一組で行動するしか出来ないんだよ。私のパートナーはまだ決まってないからその内【うわん】辺りがくるんじゃないかな?」


 あのタコ坊主とまた顔を合わせるのか。

 堅物そうだからちょっと苦手なんだよな。

 まぁ、私は逃げるだけだからいいんだけど。


「磯撫でについては?」


「んー、一班にそんな妖使いは居なかったけどなぁ。あ、アレじゃないかな? 屋良美織と同じ」


「そうか。殺した相手の能力が使えるんだから死体のどれかが磯撫での可能性もあるのか。面倒ね」


「そだねー。七人の死体いるから最大自分の能力合わせて八つの能力が使えるってことだもんね」


 七人同行。やはり凶悪な能力者であることは確かなようだ。

 余計に今のうちに潰しておくべきだな。

 それと、残り五体分の能力があると思っておいた方が良いかもしれない。これは土筆にも伝えておくべき案件だな。


「あと、弱点って言ってもなぁ。濡女はしっぽに気を付ければいいし、磯女とか濡女子とかじゃないから比較的雑魚いくらい? 七人同行は本体殺せば他も止まる。くらいかな?」


「まぁ、妥当なところか」


 ほいよ。と裸螺を押し留めていた手を離す。

 その瞬間、待ってましたと裸螺は葛之葉の尻に突撃する。


「にょほぉーっ!?」


 びっくーんと尻尾をパンパンに張って驚く葛之葉。

 そのお尻に顔を埋めるようにして尻尾にぐりぐり頭を押しつける裸螺へんたい


「な、なんなんじゃこの変態はぁ!? ちょ、有伽よ、これ、助けんか!?」


「別に減るもんじゃなしいいでしょう。尻尾で包んで天国に行かせてやれば?」


「あ、悪魔か貴様ァ――――っ!?」


 それからしばし裸螺の欲望に沿う形で葛之葉を売り、私は土筆の帰りを待つ。

 場所は分かったのだが伝えるべき相手が来ないのでは意味がない。

 さっさと戻れ土筆。

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