何も決まらないことが決まる会議
「あのね葛之葉。七人同行は踏歌と七人のゾンビがいるの。それに加えて濡女と磯撫で、よ」
「にょほほ、それは違うの、濡女は神社に放置しておるわ。気絶しとるからしばらく戦力に数える必要は無いぞえ?」
「トドメは刺してないの? じゃあダメよ。数に入れとかないと。常に最悪を想定しないと狩られるわ」
そうだ。常に最悪を想定しないと。
あいつらはそれくらいやってくる。
だから知り合いは極力作っちゃいけない。
致命的なタイミングで利用されるからだ。
それなら一人で逃げた方が良い。
残念ながらそのタイミングは逸した。
こうなってしまったらここに居る三人は私が逃げようとしても追って来るだろう。
下手すればそこを付けこまれかねない。
今回は、この三人を利用してあの三体を倒さないと、とにかく追って来る敵を殲滅してから脱出を模索しないといけない。
「さぁて、なんか困ったことに東華さんと屋良さんが敵になったみたいだな」
「雄也は何を見とったんだべや? 踏歌は初めから敵で屋良さん殺しちゃってんだべよ」
「え? 屋良さん死んだの!? 生きてたじゃん?」
ああ、ダメだこいつら。
戦力として全く期待できる気配がない。
しかも雄也も根唯もサポートタイプだ。直接人を殺したことも無いだろう。
可能性があるとすれば葛之葉か。
でもこいつもこいつでトラブルメイカー臭が半端無い。
一応こちらが渡した紙の通りに踏歌と二人きりになる為の布石に協力してはくれたみたいだが、狐だからだろう、土壇場で裏切られる気がしてならない。
結果的に信頼出来るのはヒルコと土筆だけである。
やっぱりさっさと逃げてしまおうか?
こいつら抱えて闘って勝てる気がしなくなってきた。
踏歌を殺すつもりだったけどあいつはあいつで隙がなかったし、さすが七人同行か。伊達に暗殺班一班の一員ではないらしい。
なんとなく、普通の生徒としては違和感あったんだ。
だから尻尾を出すかと思って葛之葉には掴まって貰って、二人きりになる瞬間を作ってみた。
予想通りに尻尾を出してくれて助かった。アレで慎重に何の行動もしていなかったら、多分この会議にも彼女がいただろう。
私も信用していたかもしれない。
実際には私がまだ意識不明だと思った踏歌が尻尾を出してしまった形だ。
残念ながら一網打尽には出来なかったが、本体が知れた以上逃げ回る必要は無い。
この島で七人同行を始末する。
問題は残る濡女と磯撫でだ。
さて、こいつらがどう動くかによってこちらの動きも変わってくる。
土筆に視線を向ければ、土筆は分かっているとでも言うように頷く。
「東華踏歌については私が狙撃出来ないか調べますわ。他の面々に関しては……磯撫でが厄介ですねわね。海辺に引き込まれると何も出来なくなりそうです。濡女はただのアホですね。アレがラボの一員だと思うとなんだか泣けてくるわ」
濡女、か。濡女子だったらもっと苦戦してたけど、濡女の場合は長い尻尾の能力と、波を操るくらいだから、確かに不意を打たれなければ対処は可能だろう。
ただ、磯撫でと組まれると少し面倒だ。
なにかもう一手欲しいな。
誰か使えそうな能力者居ないだろうか?
えーっと、ヒルコのクラスメイトで妖使いなのは、確かコックリさん、アンサー君、琴古主、闇子さん、不落不落、花子さん、面霊気、他の面々は分からない、だったっけ?
使えそうなのは……あ、そうだ。アイツが居たな。
じゃあソレで行くか。後は……
「ふーむそうじゃのー。奴らが何処で何しとるかだけでも分かれば手の打ちようもあるのじゃが、後はまぜまぜするくらいかのぅ」
「なんだべかまぜまぜって?」
「ん? 妾が手に入れた道具じゃ。巨大なスプーン型の棍棒でのぅ。こう、ぐるぐるっと混ぜるとなんでも混ざるのじゃ。空間とか人間とか」
なんだそのえげつない道具。
一応戦略には組み込んだ方がいいのか?
むしろこちらに攻撃が来ないかを気を付けた方が良いかもしれない。
「まぁ、なんだ。そろそろ腹減って来たし食事しようぜ?」
「あんたねぇ、この状況で食事する気?」
「え? そりゃするだろ。ほら、腹が減っては戦が出来ぬっていうし。食べてからの方がなんか決まるんじゃね?」
ただ食事したいだけだろ。
しかも既に食卓に食事が並んでるし。
凄いな、本当に瞬きした瞬間に食事が用意されてる。
それから私達は食事を始めることにした。
ヒルコも一度剥がれて食事を行い、そして食べたら眠くなったと雄也がごろ寝を始める。
雄也の意思がないと異空間から出られないので彼が起きるまで暇になってしまった。
結局会議も食事で中断されてそのままにぐだぐだした状態で終わってしまった。
ダメだ。こいつ等だと会議にすらならない。
やはりこいつ等は放置だな。現実世界に戻ったらヒルコと土筆だけで最後の会議しよう。
役割分担を決めてここで七人同行を潰す!




