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妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二節 濡女
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撤退戦

「仕方ありません、屋根裏迎撃戦に移ります」


 敵が多過ぎるので土筆と別行動を取ることにした。

 その為市街地へと駆ける。

 市街地といってもそこまで民家が密集している訳ではない。

 でも、それなりに存在しているので一人だけでモグラ叩き戦法を取ることができる。


 軒下に現れて銃で攻撃しながら別の家の軒下に逃げを繰り返すのだ。

 七体の敵を相手どるならこれが一番妥当である。


「では、くーちゃんさん有伽様をお願い致しますわ」


「にょほっ!? なんで妾っ」


 なぜか頼まれてしまったくーちゃんがびっくりするが、土筆は気にせず近くの民家の軒下へと消えて行く。

 天井に飛び込みぶら下りながらその身を天井の中へと消して行った。


「ええい仕方ない。有伽だか梨伽だか知らんが保護してやるぞ」


 あ、やるんだ。

 ワタシの隣を並走してくるくーちゃん。

 すぐ傍の軒下から顔をだした土筆が天井からガトリングガンを取り出し七人の敵に向ける。


「あら、バラけてますわ!」


 既に七人ではなく五人になっていた七人同行。

 あの女と屋良サンが見当たらない。


「仕方ありません、この五体は私が引き受けますわ」


 言うが速いかガトリングガンを使って迎撃を開始する。

 踊りだす七人同行。

 ワタシたちは五体を土筆に任せてさらに逃げる。

 でも、島は狭いから逃げようにも限界はある。


 山から突撃して来たのは屋良サン。

 慌てて樹木子が発動されて近くの木が動くものの、屋良サンは気にせず突撃する。

 するりと根っこの群れをすり抜け、ナイフ片手に襲いかかって来た。


「そこをズドン、じゃ」


 料理尻尾を突き刺し迎撃。

 五つの尻尾の一つを受け、勢いを殺された屋良サンがバックステップで距離を取る。

 だからそれ、意味無いでしょ。敵を料理上手にしてどうすんの!?


「いやぁ、自己主張の強い尻尾での、どれだけ別の尻尾と交換してもこいつが出張ってくるのじゃ」


 意味が分かりません。

 さらに民家の間からボウガン持った女が現れる。

 七人同行だ。


「仕方ないのぅ。この二人は妾が相手取ってやろうかの。逃げ切るのじゃぞ有伽とやら」


 鉄扇をばさっと開き、狐娘が恰好つける。

 さぁ、行くが良い。と促されたので、踏歌と二人で逃げることにした。

 くーちゃんとすれ違うように彼女の傍を駆け抜ける。

 これで七人。全員を土筆とくーちゃんが相手取ってくれたのでワタシと踏歌が安全に逃げられることになった。


 郊外へと向かい畑の傍を通過する。

 そうこうしているうちにもう海が見えて来た。

 島だからこそ逃げ場など殆ど無いのだ。


「どうするの梨伽さん!? 左は海だし右に向かっても山と崖しかないよ?」


「とりあえず……身を隠すなら山? いや、海で!」


 山の方に向かおうとしたんだけど、有伽の身体が海に向かおうと抵抗を始めたので仕方なく海でと言い直す。

 有伽、何処に行くつもりなの? そっちに何かあるの?

 有伽の身体が動くままにワタシたちは走りだす。


 未だに遠くから銃撃の音が聞こえる。

 駐在さんは音を聞いて駆け付けたりしたのだろうか?

 巻き添え喰らって無い事を祈りたい。


 海に出た。

 砂浜に打ち寄せる白波。

 照りつける太陽と砂浜を歩くカニが一匹。


「見通し良すぎだよ梨伽さん!」


「分かってる。でもその分相手がどこから来るか分かる」


「そりゃそうだけども……」


 踏歌がそう告げた瞬間だった。

 不意に生まれる妖反応。それは、海の中。


「っ離れて!」


 咄嗟に海から距離を取る。

 唐突に海がざわめき波が襲いかかって来た。


「踏歌!」


「大丈夫っ」


 即座に逃げた踏歌と波で別れてしまう。

 波が収まった時には、ワタシと踏歌の間に、一人の女が立っていた。

 ワカメのような髪は踏歌よりも長く気味の悪いロングヘア。

 水の滴る彼女は、片方だけ髪の掛かっていない虚ろな目をこちらに向ける。


「犯罪者、みぃつけたぁ」


 ニタァと笑みを浮かべ襲いかかってくる。

 マズい、別の刺客が……


「有伽っ、波ッ!!」


 はっと気付いた時には横合いから迫る大津波。

 マズいっ!?

 波の出現と女の接近が同時に起こる。

 慌てたワタシと違って、有伽の身体は即座に反応していた。

 バックステップで津波をやり過ごし、ワタシの身体に手を入れて無理矢理ナイフを取り出す。


 ワタシの身体は軟体なので武器を隠しておけるのだ。

 今、身体の中にはこのナイフと草薙の剣、それと小鎚を一つ隠している。

 鎚だけは私のだよ。


 刀身が紫色に光り輝く怪しげなナイフ。

 元々は銀色の普通のナイフだったんだけど、確か紫鏡だったかな? その鏡としての役割を持ったナイフなのだそうだ。

 触れれば紫世界に入れるって聞いてるんだけどワタシが体内に入れてる間はワタシが取り込まれること無いんだよね、なんでだろ?

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