七人の悪夢たち
【樹木子】の妖使い東華踏歌。
樹木子とは人間の血を養分として育った木が妖怪化したものらしい。
人間の血を糧としたが為に血に飢え、人を襲う木となったとか聞いたことがある。
本来は害獣指定の妖使いになるのだが、この島では危険な妖使いといえども普通に暮らしているらしい。
グレネーダーに見付かったら処理されないかしら?
さすがにその心配は無用か。
最悪ワタシは踏歌にグレネーダー就職をお勧めしないといけないかもね。
「ちょ、なんか美織ちゃんの腕力めちゃくちゃ強いんだけど!?」
「死んでるから身体が壊れてもいいくらいの力出せるんだよっ」
「え、何そのチート設定。私の能力じゃ抑えきれないかも!?」
ぐぐぐ、と力を入れて脱出しようとする屋良サン。正直焦点の合って無い眼で見られると恐怖しかない。
「今何人いまして!?」
「ちょいと待て、サラリーマン、OL、クソガキ、ニート、屋良、そして太ったおばさん。六人じゃ」
「後一人、あの女が居ませんわ」
「じゃあ、やっぱりあの人が本人?」
「でも七人同行の本人なら死んでいる筈じゃ?」
「カラクリがあるんじゃろな。例えば、その当時は七人揃っていなかった、とか」
七人揃って無かった?
「なんじゃ、その発想は無かったといった顔は? 普通そうなるじゃろ?」
いや、その発想無かったよ、うん。でも、そういえば、ニート? 青白い顔の男とサラリーマン、OLは見たことあるけど、他の二人は初めて見たような?
「おそらくその飛行機事故とやらで死んだ二人が自動的に加わったとかではないか。確か七人の誰かを殺してしまうとその者を七人同行に引き抜く為に呪い殺すとか」
殺してもダメとか酷過ぎる妖使いじゃない?
「あるいは、じゃな、七人同行の能力で使役出来るのは七人、かもしれんの。そうなれば本人は離れた場所でこちらの動向を見ている可能性があるのじゃ」
ソレだと詰んでしまうのですが。
「っ!? 梨伽っ」
っ!?
すごく遠くから何かが飛んで来た。
有伽に直撃しそうだったその一撃は、ワタシ、ヒルコ神が受け流す。
有伽のおでこを滑る何か、私の身体を鏡面のごとく滑走し地面を穿つ。
「外したっ!?」
「見付けた! あの女です!」
「にょほほ、引力尻尾じゃ」
ワタシの言葉にくーちゃんが反応。
何らかのスキルを使ったのだろうか? ぐんっとその女が広場へと転がり出る。
「つぅ……」
何かに引っ張られたような七人同行。この女だけやっぱり意思を持っているようだ。
「にょほほ、犯人発見~。じゃな」
凄い、一気に形勢逆転出来たんじゃない?
「にょほほ、ならば妾がちょいっとぶっとばしてやろうかの」
くーちゃんが七人同行の本人とも呼べる存在を倒しにかかる。
これ、もしかして七人同行倒せるんじゃない?
ナイフを取り出す七人同行。
走りだした彼女に向けて、くーちゃんもまた走りだす。
手に持っているのは、扇、というか、アレは鉄扇、かな?
突き出されたナイフを鉄扇でことごとく受けて行くくーちゃん。
その動きは洗練されていて舞でも踊っているような優雅さがある。
「このッ」
「なんじゃこのド素人な突き刺しは、突き刺しとはこうするのじゃ」
ズドンっと尻尾の一つが七人同行に突き刺さる。
いや、尻尾だよね?
慌てて飛び退いた七人同行。
自身の身体を確かめ怪我がないことに困惑する。
「にょほほほほ、これは料理上手の尻尾なのじゃ。刺された者は料理が上手くなってしまのじゃ」
なんだそれ?
意味不明な尻尾を訳も無く使わないでください。
七人同行も意味がないと気付いて直ぐに突撃を再開。
苛烈に嗜虐的に、くーちゃんの急所向けて連撃を行って来る。
喉に心臓にわき腹に、そのことごとくが鉄扇に阻まれるというのに、彼女は気にせず全力の一撃を放って来る。
初めこそ楽に避けていたくーちゃんも、不自然さを覚えたらしい。
不思議に思って七人同行の顔を見れば、他の者たち同様焦点の合って無い眼で攻撃を行っていた。どう見ても正気じゃない。
「なんとまぁ、これも操り人形かや」
七人共操り人形!? そんなばかな!?
じゃあ一体七人同行はどいつなの?
もしかしたら、とくーちゃんが青い炎を掌に灯し、七人同行に投げる。
炎に包まれ燃え上がった七人同行は、悶えながらも気にせず攻撃を仕掛けてくる。
「こりゃダメじゃな」
「こっちも全部ゾンビですわ」
「屋良さんの握力強過ぎ。もう無理ぃ」
「撤退、ですわね。逃げましょう」
さすがにこのままだとこっちが押しつぶされる。
空いた場所に走りながら皆を集めて脱出を計る。
なんてしつこいの七人同行はっ。
悪態付きながらワタシたちは公園を脱出し再び逃走を開始するのだった。




