???
「どういうことだうわん?」
執務室で小金川僧栄は目の前にやってきたうわんを睨んだ。
報告書には今回高梨有伽殺害についての報告が書かれている。
「高梨有伽の始末は三班が付けました」
「ああ、報告書にも書いてあるよ。高梨留美に叛意もなし、お前の言う通り本部勤めも許可しよう。だが、だ。人的被害、これはどうなっている? 三班が不意を突かれ、残っていた黴に一人殺された。その上、一班が全滅? 死体の確認も出来ず?」
「はっ。私も想定外でしたが、前川玉藻の死体が高梨有伽滑落現場の近くで発見されました」
「冗談じゃないぞ!? たった一人を始末するだけのことで暗殺班が一班壊滅? 玉藻が死んだ? 被害が出過ぎだ……」
「一班の生き残りはほぼいません。この際再編成してしまっては?」
「そんなことは分かっているッ! クソ、あの女狐、何勝手に死んでやがるっ。額に銃撃? 敵の正体は分かってるのか?」
「それはまだ。可能性のありそうな人物は二人ほど上がっていますが、一人は死亡報告があり、もう一人はそもそも島に来ていない筈です」
「その人物とは?」
「後者は殿とゆかいな仲間たち所属、射魏静。前者は玉藻自身が殺害報告をあげた……天原土筆です」
ぐしゃり、僧栄が報告書を握り潰す。
確かに銃を扱い玉藻を殺しうる技量を持つモノはまず居ない。
候補に上がったのは完全に敵対存在で、玉藻を殺しうる存在だけだ。
ゆえに、その事実は一つの事を差していた。
「冷静に、冷静に聞こう。お前はどっちだと思う?」
「別人という可能性を排除するならば……射魏静については高港で前日に確認されていました。可能性は低いでしょう。つまり……」
二人の表情はすぐれない。
不安の種がまだ残っているのだ。
姿も見えず生存しているかもしれない亡霊。
そんな脅威が、未だに健在である可能性がある。
「早急に殺害犯を探せ」
「了解しました」
うわんが立ち去る。
僧栄はデスクに肘を付き頭を抱え、唸り始めた。
折角一つ片付いたと思えばまた別の一つが湧きおこってしまったらしい。
「冗談じゃないぞ全く……」
折角邪魔者を排除出来たというのに、また眠れぬ日々が訪れるのか、と僧栄はひたすらに自分の不幸を嘆くのだった。
第2章終了しました。お付き合いいただきありがとうございます。<(_ _)>
第3章はまだ未定ですが後々書けたらなぁと思っています。