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妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二節 濡女
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異変

 朝、目が覚める。

 かすかな涙の跡は何だろうか?

 有伽の流した涙を拭き取り体外に排出。

 目ヤニやら垢やらはワタシが取りついてる間は全て取り除いているのでご安心を。


 全ての新陳代謝によるゴミを丸めてティッシュに詰め込みクズカゴにぽいっ。

 あ、外れた。

 のろのろ起き上がりゴミをゴミ箱へと入れておく。


 さぁ、歯磨きして朝食と行こうか。

 と、歩きだした瞬間ぐにっと何かを踏んだ。

 なんだろう? と足元を見れば、うーんと唸っているくーちゃんの尻尾がそこにある。

 まぁ、尻尾ならいいか。


 そのまま踏みしめ歩く。

 みぎゃぁっと悲鳴が聞こえた気がしたが、くーちゃんも何があったのか気付いてないようだから放置しよう。

 顔を洗って居間にやってくると、既に全員揃っていた。くーちゃんは起きた後ワタシが顔を洗い終わったあとにやって来てワタシを抜かして居間に入ったのだ。

 ワタシの動きが遅いせいで先を越されてしまった。


「にょほー、よいのよいの。見るがいいヒルコよ、食事が勝手に生まれておるぞ! さっき見た時は何も無かったのに、目を離したらいつの間にか出て来ておったぞ!」


 迷い家の謎を目の当たりにして歓喜するくーちゃん。

 ほんと、何だろうねこの食事。いつ用意されてるか誰も知らないんだよ。

 皆が会話しながら待ってると全員が目を離した一瞬で用意されてたりするしね。


 五人とワタシで食事を終える。

 ふと気付いたんだけど、ワタシ、有伽、土筆、くーちゃん、根唯、そして雄也でしょ。

 どう見てもハーレム生活だよねこれ?

 まぁ、全員雄也への好感度は0に近いけど、あ、根唯は100%だっけ?


 食事を終えた後はくーちゃんを残して学校だ。

 用意を整え皆して玄関に集まる。

 くーちゃんが見送りにやってきた。


「学校かや」


「ああ、行って来るよ」


「あ、そう言えば葛之葉さん、近衛さんが出てしまうと内部に人がいる場合迷い家は異界に潜れなくなりますけど、大丈夫ですか?」


「にょほ!?」


「あ、そういやそうだった」


 あんたの妖能力でしょうが!?


「え? じゃあ妾は異界に逃げること出来ない感じ?」


「普通の家に隠れてるのと変わらない、かな?」


「意味無いじゃーんっ!?」


 想定外だったようだ。

 ワタシもちょっと想定外だよ。

 ってことはだよ、緊急時にココ逃げ込んでも意味がないってことだよね。雄也がいないとただの家って。


 ちなみに誰もいなければ数秒で消えてしまうらしい。

 もちろん雄也が意識から家の存在を無くしたら、である。

 そこに家があると認識してればずっとそこにあるらしいけど、使い手が雄也だからなぁ、ほら、くーちゃんが一緒に出て直ぐに家が消失しちゃったよ。


 さーって、今日も授業がんばりま……

 うーんと背伸びをした時だった。

 校舎の壁に不自然に飛び出た木の枝が目に入る。

 え? なんだあれ?


「どうしたのヒルコ? あ、もしかしてあの枝? 【尾取枝】よ。気にしなくていいわ」


 ああ、そういえば監視がいるって言ってたね。

 アレが監視なのか……って、本当に放置でいいの!?

 めちゃくちゃ居場所ばれてるんだけど。


「大丈夫ですわよ。だって最初からずっと私達を監視してますけど、刺客がまだ現れてないでしょう?」


「そりゃそうだけれども……」


 本当にいいのか? そう思いながら皆で教室へと向かう。

 ワタシは自分の席へと向かい、座り込む。

 隣の席にくーちゃんが座った。


「おお、懐かしいの」


「なんでいんの?」


「心外な。暇であろうが、なんかこう暇潰せる場所を考えたらここでいいかなって思ったのじゃ」


 いや、そこ梃の……

 ふんぞり返ったくーちゃんはどう見ても出て行きそうにない。

 もうすぐ梃来ちゃうんだけど?


「おはよー」


 あ、来た。


「おお、おはよう」


「うん? あれ? え、誰か知らない子が私の椅子に座ってるっ!?」


 そりゃそうなるよ。


「うむ、では半分開けよう」


 椅子の半分だけを占拠するくーちゃん。

 唖然としたワタシだったが、梃は気にせずくーちゃんと密着しながら座る。


「よし、準備完了」


「いや、いろいろおかしいから」


 思わず告げる。

 梃はえ? どこが? と全く気にしてない様子。

 ワタシがおかしいのか? それともこれはくーちゃんの能力か何かか?


「にょほほ、この島じゃぞ、これが普通の反応というものよ」


 見知らぬ狐娘が自分の座席に座ってても気にせず席を半分こして座るのが普通。いや、どう見てもおかしいだろ。

 異変しかないよ、ちょっと、誰かコレ変だって言ったげて。


 小さな異変が起こったその日、もっと大きな異変が起こっていたことに、この時のワタシはまだ、気付いていなかった……

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