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妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三節 ケンムン
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歯車が軋む時

 ようやく一撃叩き込んだ。

 しかもかなり致命的な一撃だ。

 好機と捕らえた土筆もまた、玉藻殺しに動き出す。


 狙撃銃で眉間を狙う。

 しかし、それでも玉藻に隙はなかった。

 否、既に隙を攻撃されたからこそ本能的に守っていたのかもしれない。

 尻尾に阻まれ銃弾が叩き落とされる。


 思わず舌打ちして天井に引っ込む土筆。

 遅れて家に向かって放たれる狐火。

 家が爆散し、土筆が別の天井から顔を出す。


 向こうはいつも通りだな。

 なら、問題は天井に隠れて移動出来ない私の方だ。

 物理的な攻撃ならヒルコが受け止めてくれるが、超常的な一撃はさすがに無理だ。

 その辺りは私自身で対処するしかない。

 稲穂のナイフと自動迎撃の草薙の剣が大活躍だ。


「ちょこまかとっ」


 無数の属性弾が私めがけて襲い来る。実体があるモノは自動迎撃の草薙に任せ、舌で握った稲穂のナイフで実体のない毒やら風の弾を消し飛ばす。

 身体の動きが足りない個所はヒルコが無理に動かし致命傷を避けてくれる。

 私に意識を向けようとする玉藻だが、ちょこちょこと狙撃されるせいでイマイチ集中しきれない。


 御蔭で逃げる隙がかなりある。

 今までこいつ相手に耐えてくれた土筆の御蔭だ。

 このまま黴で一気に殺そう。


 手加減したり、仲間に入れよう、なんて考えて勝てる相手じゃない。

 今も有利になったように見えるが土筆曰く薄氷の上を歩いている状況らしい。

 少しの判断ミスがこちらの死に繋がるんだそうだ。


 それでも徐々に追い詰める。

 たゆたう狐尾を稲穂のナイフで切り裂き紫世界へ送り込み、再生不能に追いこんで行く。

 徐々に減っていく玉藻の手数。

 さっきまで全属性の弾を放って来ていたのに、今は地水火風に加え、雷属性だけだ。他の尻尾は既に封じた。


「なんなのよ……なんなのよそのナイフはっ!!」


 答えてやるぎりなんてない。

 玉藻の絶叫に無言を貫きひたすらに舌を振る。

 舌に絡ませた稲穂のナイフがまた一尾切り裂いた。


「ふざけんなぁッ!!」


 強烈な一撃を叩き込もうとした玉藻、その肩を一発の銃弾が貫通する。


「がぁッ!? な、なん……?」


 おっとようやく土筆の一撃が奴の防御と結界を打ち破ったか。

 残り四尾。さっき斬った尾がそっち系の役割担ってたのかも。


「つ、土筆ぃぃぃっ!! がぁっ!?」


 土筆に意識向けてくれたので遠慮なく切り裂く。

 また一尾失った。


「クソがっ、クソ共がァッ!!」


 もはや狂気に彩られた顔で叫ぶ玉藻。

 しかし、叫ぶだけでなぶり殺し状態だ。

 こんな状況だからこそ、ついつい油断しそうになる。

 だが、ここから逆転しうるのがこの玉藻という女らしい。


 どれ程追い詰めても何かしらの要因で逃げおおせてしまうらしいのだ。

 ゆえにつぶさに観察して油断を打ち消す。

 決して慢心はしない。

 ここで確実に仕留める。


 飛んでくる弾も火と雷、土だけになった。

 今までと比べれば雲泥の差だが、それでも脅威に変わりはない。

 銃弾も通るようになった御蔭で相手の意識はこちらと土筆、完全に二面を気にしながらの闘いになった。

 今までは土筆の攻撃は自動防御でほぼ無視していたのに、これは余程手慣れていないと少しのミスで崩せそうだ。今まで意識してなかったから慣れるまでは時間がかかる。つまり、好機!


「なぜ、なぜこんな……この私が……」


 また一尾、切り裂いた。

 紫鏡の能力の御蔭で斬った断面は即座に向こうに送り込まれる。

 ゆえに斬ったわけではなく、切断面だけ異世界に送られた形だ。

 だからまだ感覚は残ってるんだろう。

 忌々しそうに腕を動かすと、地面に落ちたままの腕がわさわさと動く。

 玉藻は気付いてないみたいだけど、唐突に動くとつい止まりそうになってしまうな。

 こちらのミスに繋がらないように気を付けないと。


 よし、これで! 残り一尾。

 火の玉だけしか作れなくなった玉藻が咆哮する。

 実際には全部の尻尾が繋がってるので全属性は撃てるはずなのだが、紫世界という異世界経由しているせいで尻尾に上手く指令が伝わらなくなっているようだ。

 この戦法、紫鏡に誰かさんが連れ込まれる時必死に能力を使ってた隊長を思い出して考えた戦法である。


 紫鏡の中にまでは妖能力が届かないのだ。

 つまり、穂先に妖能力を届ける指令が届かなくなれば、あいつの能力は制限されるんじゃないか? ソレを試してみたのである。けっかは大嵌り。パスはある筈なのに妖能力が発現しなくて焦る玉藻が焦れてブチ切れている。

 だが、打つ手が無くなってしまった今の状態では彼女も火の玉作るしかできないようだった。


「さぁ、狐狩りと行きましょうかっ」


「クソ、クソッ、クソォッ!!」


 必死に逃げようとし始める玉藻。逃したら何かしらの対策立ててまた来る。

 ゆえに逃さない。

 逃げだした玉藻の左足が打ち抜かれる。

 無様に倒れる玉藻。土筆が思わず拳を握り「うしっ」と叫ぶ。


 玉藻が倒れるのに気付いた私は即座に近づく。

 倒れ込む玉藻の間横に辿り付き、草薙の剣を両手で握る。

 地面を握りしめ悔しげに立ち上がろうとする玉藻の首へ、私は草薙の剣を振り上げた。


「さよなら。玉藻さん」


 気合一撃、振り下ろす。

 決定的な隙を付き、致命的なタイミングで、確定的に殺したつもりだった。

 手の中から……草薙の剣が消えていなければ。

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