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妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三節 ケンムン
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天井下り VS 九尾の狐3

 再び土筆は玉藻の元へとやって来ていた。

 玉藻も土筆の気配を感じたようで天井から出て来た瞬間、着たなァッ! と叫ぶ玉藻に土筆は思わず舌打ちした。

 そんな気付かなくてもいいのに。そんな思いで手にした銃器の撃鉄を起こす。


「へいへーい、玉ちゃんこんちゃーっす」


 軽いノリを意識して挑発しながら射撃。

 即座に反撃が飛んで来たので天井から別の家の天井へと逃げる。


「こっちよノロマさんっ」


「ちょこまかしてんじゃねーっ!!」


 激昂しても玉藻には反撃の術が限られている。

 何しろ相手の居場所は攻撃して来てからじゃないと分からないからだ。

 なんとか先手を打とうと画策しているが、常にその裏を掻かれることで後手に回らざるをえなくなっていた。


「はい、こっちですわー」


 銃弾をばらまきさっさと逃げる。

 遅れて玉藻の反撃が返って来るが、そこには既に土筆は存在していない。

 こんなことが何度も繰り返される。


「あら?」


 何時間も続くと思われたのだが、唐突に銃撃が止んだ。

 土筆が攻撃と止めたのだ。

 反撃を行おうとしていた玉藻もいぶかしげに手を止める。


「まぁまぁ。あちらをご覧くださいな玉藻さん」


「あぁ? なにを……っ!?」


 黒い煙が、上がっていた。

 二つの黒煙が間隔を開けて立ち昇る。

 黒い煙、それは味方が死んだことを意味する狼煙。


 高梨有伽が死んだならまず上がることのない煙。それが、一つではなく二つ。

 何が起こったのか、理解したくなかった玉藻だが、確実に言えることはあった。

 既に黒眚が居なくなっている。この状態で二つの死者報告。

 土筆側の嘘ならよいが、果たして玉藻の仲間が死んだと告げる事に挑発以外のなにがあるというのだろうか?


「有伽様がフリーになったみたいですわね。次は、貴方ですわよ、玉藻さん」


「土筆ぃぃぃっ」


「おっと、怒らせ過ぎたかしら?」


 巨大な火球が生成されたのを見て慌てて天井に引っ込む土筆。

 また一つ無関係な民家が消失した。

 御家族が居る家は出来るだけ選ばないようにしている土筆なので、消失した家々は無人だったか仕事で出掛けていた民家だ。

 無人なら問題はないが、帰ってきたら家が無くなっていた人がいるかと思うとちょっと申し訳ないと思う土筆。しかし、手を抜いて勝てる相手ではないので遠慮なく民家を犠牲にしていく。


 全力で土筆に意識を向ける。

 怒りを込めて、放つ一撃、その、刹那。

 不意に、嫌な予感を感じて本能で動く。

 肩に衝撃。結界が張ってあったはずなのに、ソレを通りぬけて自身に届いた何かに、一瞬何が起こったのか理解できなかった。


 背中側の肩に、何かが刺さっている。

 玉藻はなんだこれ? と他人事のように認識し、それがナイフであると気付く。

 次第、意識がそちらに向かう。

 痛みが襲いかかり、自分が刺されたのだとようやく理解した。


「あ? あ、あああああああああああああああああああああっ!? 痛だぁぁァァァァァッ!?」


 肩に食い込む紫色に輝くナイフ。

 ソレを刺したのは、ピンク色の舌。長い、長いそれは遥か遠くから飛ばされてきた。

 ある女の口から。


「高梨……有伽ァッ!!」


「やぁ暗殺班の室長さん。殺しに……来たよ」


 威風堂々、高梨有伽が戦線へとやってきた。


「テメェ、なんでここにいるっ!? 他の奴らは……」


「私がここに居るのが答えだと思うけど? 殺したわよ。全員、ね」


「ふざけろクソ女ァッ!!」


 怒りに身を任せようとする玉藻。そこへ、有伽と不敵な声が掛かる。


「あれ? いいのかな。私に意識向けるより先に放置すべきじゃない場所、ない?」


 っ!? と慌てて家々の天井に視線を走らせる。

 次の瞬間、ドサリ、何か重量物が落下した。

 なんだ? と音のした方向へと視線を向ける。


 嫌に近くから聞こえた音だった。

 自身の真下辺りから聞こえた音だった。

 視線を向けた先に、太く長い物体が落ちていた。

 人間の、腕だった。


「え?」


 見覚えのある服を着た人間の腕。

 それが肩先から下が地面に落ちている。

 まさか。信じたくなかった。まさかそれが、自身の腕であったものだとは。


「なん……で?」


「あはは。そりゃそうだろ。刺さったナイフが何だったか、あんた見てなかったの? そいつは紫鏡のナイフ。あんたの肩は鏡の中に入ったってことよ」


「……は?」


 寝耳に水だった。

 だが、確かに報告はあった。

 紫色のナイフは飛び道具系武器を消し去る能力を持つ。

 それが、まさか紫鏡だとまでは知らなかったのだ。


 加えて言えば、紫鏡が人体にまで影響を及ぼせるなど、いや、報告自体はあった。だが、紫鏡が高梨有伽に加担しているなど報告になかった。


「あ、それ稲穂から貰ったナイフだから、返してね」


 呆然としている間に舌がナイフを回収して行く。

 稲穂とは? 確かグレネーダーの一員だ。貰ったナイフ? つまり、あれは紫鏡の意思はなく、触れたモノを鏡の中に引き込むだけの武具?

 まとまらぬ考えの中、玉藻はただただ空転する脳で様々な事を考える。

 だが、空転しているため次の行動に移れない。

 その隙は、あまりにも致命的だった。

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