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妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二節 目競
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殺害対象ケンムン

 ケンムンの猛攻はとどまることを知らないのだろうか?

 あまりに速い連撃のせいでこちらからの反撃が全くできない。

 草薙の自動迎撃だけで闘っているようなモノだ。

 それでも、私から攻撃する訳にもいかないので、草薙任せになっているのは仕方無い。

 下手に私が動くと予想外の動きをして来るので対応に遅れが出てしまうのだ。

 まさか足まで伸縮可能とは思わなかった。

 右足だけ伸びるとか反則だろ!?


 びっくりして対応遅れたわっ。

 御蔭で私のミスで自滅しかけたし。

 草薙が庇ってくれなかったらマジでヤバかった。


「大したものだ。剣一本で両手足の攻撃を避けるか」


 むしろ草薙だからこそ防げてる。初めから手足を攻撃に使えると分かったとしても草薙の防御程使える武器や防具はなかっただろう。

 だが、そんなことを伝えたところで意味はない。

 ただただ無言で草薙を振るうだけだ。


 伸縮自在の手足。

 如意自在だったっけ、前に闘った奴もそう言えば伸縮自在の手足操ってたな。

 まぁ、こっちはさらに火炎弾投げつけて来たり、屁で空飛んだりするんだろうけど。


 あ、まずっ!?

 蹴りと手刀の同時攻撃。

 草薙が迷っていたので一先ず蹴りを受けて貰う。

 手刀に関しては自身でなんとか避けきった。

 体勢が崩される。


「もらったぞ!」


「ええ。こちらが、ね」


 私にせまる致命的一撃。

 草薙が間に合わない刹那を狙った渾身の一撃だ。

 でも、気付いてなかった?

 既にあんたの後ろに迫る一撃があることに。


 紫鏡のナイフがケンムンの背に突き刺さる。

 がぁ? と侵入して来た異物に声が漏れ、私に向かっていた一撃が頬を掠っていく。

 なんとか、ヒルコの存在を忘れてくれたようだ。

 直前までは警戒していただろう。

 でも、私に致命的な隙が出来てしまった。

 だからつい、欲をかいた。

 警戒を解き私の命を奪うことだけを考えてしまった。だから、獲物は狩人に射抜かれる。


 捕食者から被食者へ。

 自分もまた狩られる立場だったと、狩られた後に思い出す。

 でも、もう、その時には遅いのだ。


「くっ、こちらが、本命か……」


「私一人だったら多分殺されてたのは私だったでしょうね。今の一撃は草薙も反応出来てなかった。黴が飛び出すより早く私の首が捻られ死んでいた」


「それを分かっていながら、自分の死を囮にしたか。まんまと釣られた……ここまで狂っているとは思わなかった……」


 がふっと血を吐きだし、ケンムンが崩折れる。

 ヒルコの存在を忘れさせること、そしてヒルコがトドメをさせる位置に移動している事。

 この二つがタイミングよく合わさらなければ、私は今言ったように首を折られて死んでいただろう。

 まさに紙一重。でも、それぐらいじゃないとこいつは倒せない。

 黴を付ければ可能性はあるだろうが、その対策をしているだろうことは明白。

 ゆえにこの戦法を取らせて貰った。死の一歩手前を綱渡りで歩いたのだ。生きた心地はしなかった。


 これで、なんとか三人、いや、四人撃破。

 残ってるのは前川玉藻と、もう一人か。

 もう一人は何処に居るんだ?


 倒れ伏したケンムン。

 ヒルコが死んだかどうかを確認して私の元へと戻ってくる。

 私の体表面に寄生し直し、私達は場を後にした。


 -----------------------------------


「にゃはー。そういうわけでー、第三部隊よろーっす」


「どこに電話してるんだい、垢嘗めさん」


 高梨留美はケタケタと笑いながら電話を終える。

 そこはファミレスだった。

 テーブルを挟んで彼女ともう一人、綺麗な顔立ちの男が座っていた。


 二人の前にはハンバーグ定食とお刺身定食がテーブルに置かれている。

 留美はお刺身を一つ口に放り込むと、むっふーと幸せそうな笑みを浮かべた。


「んー、アー坊のね、後始末を九十九ちゃんに任せよーと思って。あたしの仕事はほら、殺すことじゃなくて無力化だかんね」


「そうか」


「でも、君としてはあちしがアー坊の敵に回るのは想定外だったんじゃないかにゃーん」


「そうですね。正直ラボの刺客だったのは驚きですよ。でも、まぁ、そこは気にしてませんが」


「おりょ? てっきり助けに動いてると思ったんだけど? なんだっけ、殿とゆかいな仲間たち? ごめんねー、折角勧誘来てくれたのにー」


「いえ、貴女を引き入れた場合、ユダとなる可能性も考えてましたから、むしろ明確に敵だと分かってよかったですよ。まぁ、今回敵対はしませんが」


「おー、ではではアー坊諦めちゃうんだ? 私仕事に手を抜いたりはしないよん?」


「今じゃない。今じゃないんですよ。高梨有伽を救う所は。だから……俺は今回動かない」


「そう……多分、あんたが最後の希望だったんだけどにゃー、紅月止音君。アー坊助からなかったかぁー」


「まるで彼女がもう死んだみたいですね?」


「死ぬよ、私が敵だもの」


 ニタリ、笑みを浮かべた留美に止音もまた挑戦的な笑みを浮かべる。


「貴女は有伽さんを産んだみたいだけど、彼女を本当の意味では理解できてないな。彼女は死なないよ。まだ死ぬ時じゃない。だから、俺は動かないんだ」


「ま、机の前でうだうだ言ってても意味ないし、そろそろ私も参加しようかなっと」


 留美はそう言って席を立つ。

 残された止音は窓辺に視線を向け、遥か遠くで闘う有伽に想いを馳せた。


「さぁ、どうなるかな。旅人はついに死のカードを引いてしまった。全てを失うか、全てを手に入れるか……ここから巻き返せるかな、有伽さん?」

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