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妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第一節 黒眚
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協力体制

「来たか」


「来たくは無かったけどね」


 とある森の中、玉藻たちは全員で目的の人物の元を訪れていた。

 黒いスーツにサングラス。暗殺班でも特異ながら最もその職業に合ったコーディネートの男、暗殺班二班室長、コードネーム【うわん】。

 彼の傍には二体の妖使いが隠れ潜んでいた。


「別にうわんを殺しに来たわけじゃないのだけど?」


「隠れるのが趣味みたいな娘どもだ。気にするな。それより、一人足りないようだが?」


「気にしなくていいわ。で、奴らはどこ?」


 少し黙り、うわんは遠く木々の隙間から見える洋館へと視線を向ける。


「あの屋敷をねぐらにしている。天井下りが厄介だぞ」


「問題無いわ。手はあるもの。居場所さえ分かれば充分」


「……いや、だから天井下りが……いや、九尾以外は理解しているようだし、これ以上は言う必要はないか」


 居場所が分かったからどうするというのか、建物内に入れば天井下りの独壇場だ。

 そんな天井から垢嘗まで襲ってくるのだ、下手な攻撃でも即座に敗北するだろう。

 

「さぁて、場所が分かった以上長居は無用ね」


「室長はうわん室長と居たくないだけでしょう」


「え? 何、この二人仲悪いの?」


「方針の違いでよく喧嘩してるっすね」


 自分の話だったせいだろう、屋敷に向かおうとした玉藻が立ち止まってふるふると震えだす。

 怒りが溜まっていくのがなんとなくわかるのだが、ソレを見ても皆話を止めようとしなかった。


「ねー、うー坊、たまちゃんとはどんな付き合いなの?」


「私と玉藻か? 同期というぐらいか、二人とも元々はある人物の元で働いていてな。その上司が引き籠りになったのでラボに引き抜かれたのだ。そう言えば新設された当初の妖対策課に居た時から玉藻は何かと突っかかってきたな」


「む、無駄口叩いてないでさっさと行くわよっ」


 ずんずんと肩を怒らせ歩きだす玉藻。

 少しして誰も付いて来ていないことに気付いてどなり散らす。


「うーん。聞いてみたかったんだけどなー。あ、そうだぁ、今度たまちゃんのいない所でさー。教えてようー坊。ふ・た・り・き・り・で♪」


「四十路を越えたのだからもう少し落ち着いたらどうだ高梨留美」


「ぐほぁっ!?」


 まったく感情の起伏なく返された心ない言葉にダメージを受ける留美、そんな彼女の首根っこを引っ張った玉藻が、他のメンバーを促し洋館へと歩きだす。

 皆、これ以上は玉藻が暴発すると分かっていたので互いに溜息を吐き合いながら玉藻の後を突いて行くのだった。


「さて、どうしたものか」


 残されたうわんは一人ごちる。

 が、その場に居た尾取枝やノウマが擬態をといてやってくると、感傷すら止めて歩きだす。

 屋敷とは逆方向に、もう、高梨有伽たちには関わらないとでも言うように。

 否、もう既に、監視をする必要はなくなったとでも言うように。


 そして、屋敷へと辿りついた玉藻たちは周辺を確認し始めていた。

 まずは対象以外の人間がいるかどうか。

 そして対象がしっかりとここに居るかどうか。


 が、後者の方は確認する必要すらなかった。

 窓際から土筆が笑顔で手を振っていたのだ。

 いらっしゃーいとでも言うように。

 当然玉藻がブチ切れた。


 ワザとやっているのだろう。

 フードを被った一団の中で一人だけ狙い撃つかのように手を振っていたのだ。

 振られた玉藻が怒りと共に全力の全属性弾を紡ぎ出す。


「あ、これヤバい奴だ」


「言ってる場合か垢嘗! 逃げるぞ!」


 先に逃げていた副室長が腕を伸ばして留美の襟首を掴む。

 数メートル離れていたが、彼の腕は届き、ぎゅんっと留美が安全な場所へと強制避難させられる。

 遅れ、玉藻が全力の一撃を屋敷向けて叩き込む。

 もともと屋敷は爆散させるつもりだったのだが、見え見えの挑発に乗ってしまい、相手の見ている前で確実に粉砕出来る一撃を放ってしまっていた。


 タメも長いし、威力も攻撃タイミングも予想できる。

 ゆえに、屋敷に弾が当るより早く、天井へと引っ込み別の天井へと移動してしまった。

 つまり、奇襲失敗、相手の居場所不明、元の黙阿弥。べとべとさんを失っただけで終わったのであった。


「ええい、絶対に草の根分けても探しだしなさいっ!」


「え? 個別で探すんですか!?」


「各個撃破され……いえ、なんでもねっす」


「仕方ない、二人組を作って移動してくれ。垢嘗は一人な」


「なんでさっ!?」


 ちなみにこの地下に存在する男のラボラトリーは、屋敷を消し飛ばしただけで満足、というか地団太踏んで悔しがる玉藻が調べることもなくさっさと土筆を探すために街中へ向ってしまったために探されることは無かったのである。

 焼け焦げた屋敷の残骸に紛れた地下への入り口は傷一つなく、以後も誰に見付かることもなかったという。

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