運命交錯1
脳内OP 一輪の花
路地裏で世捨て人っぽく呆然と空を見上げる有伽を思い浮かべながら。
脳内ED ラストシーン
蔦の館にやってきた。
土筆がやってくるまでまだ時間がありそうなので、先に葛之葉に言われていた過去に戻れるかもしれない情報を持つ男とやらに会いに行こうと思う。
どうせこれから逃走の身なのだ。それならまず過去に戻れるかどうかを調べるべきだろう。
逃げだしたらもう寄ることは出来ないし、タイミング的にも今行くのがベストだ。
だから屋敷をヒルコと探り、隠し通路から地下へと降りる。
随分と分かりにくいところに作ってあったな。
まず行くことのない階段裏の物置の床とか、調べないって普通。
滅茶苦茶荷物があって隠されていたけどしっかりと出入りできるように隠し階段への床扉がある場所だけはしっかりと整理されていた。
階段を下りて暗い通路を歩く。
光源は無かったが元々の妖能力が垢嘗めなので暗くても普通に歩ける。
夜目は効く方なのである。
ゆっくりと通路を歩く。
敵性存在は居ない。妖反応も見当たらない。
それでもこの先に何かがいる。それはなんとなくだけど分かる。
光の漏れている部屋を発見した。
どうやらここが求めていた場所のようだ。
中から動く気配がする。
ヒルコがまずは状況を確認。
部屋には女性と老人がいるらしい。
あと、部屋の構造がヒルコが人体実験を受けていた場所と酷似しているそうだ。
あまり危険は無いだろう。老人相手なら敵対しても私とヒルコなら何とでも出来る。
だから、部屋に入る。
部屋の中は手術室に似ていた。
違うのは無菌処理されていないのと、機械が沢山設置されていることだ。
部屋の中央には手術台が置かれている。
人が寝転べる台座で、その上に眩しい照明器具が設置されているアレだ。
「やぁ。やはり来たのかい」
うぁっ!? びっくりした。
こちらを振り向きもしないのに、老人が聞いて来た。
しわがれながらもどこか力強い声だった。
私は様子見してみるが、老人はこちらを振り向くことなく作業を続けている。
もしかして、今のはタイミング良かっただけの独り言だったのだろうか?
折角だし気付かれる前に状況を把握してしまおう。
老人と女性。確かに二人いる。
いや、二人じゃない。老人が何かを弄っているのは女性の腹の部分。そこがかぱりと開かれていて内臓の代わりに金属質の何かが覗いて見える。
そこに皺クチャの老人の腕が入り、手直しをしているように見受けられた。
機械? そう、機械だ。人型の機械。アレは女性じゃなく機械だ。
凄いな。人型機械なんて初めて見たぞ。というか、作れる技術日本にあったんだな。そっちの方がびっくりだ。
それにしても、老人はよぼよぼ過ぎだ。しわしわだけならまだしも何時死んでもおかしくない位に骨と皮だけの存在になっている。
服を着ててもそれが分かってしまうのだ。
腕など骨に皮が張り付いているだけにしか見えない。
一応機械を弄れているので筋力はあると思うのだけど。
身体も全身ぷるぷる震えているし、頭は数本の白髪が残っているだけでほぼ禿げ散らかしている。
着ている白衣がなんだか重そうで、そんな服よりもっと軽い物着た方が良いよ、と言ってやりたくなってしまう。
不意に、機械いじりの手が止まった。
「全く、困ったものだね奴らにも。俺のクラスメイトたちの不始末とも言えるが、聖の奴から逃れ続けたのは凄い快挙だよ。ソレに、あの時起こったあの悪夢からも逃れたというのだから驚きだ」
「悪夢?」
なんのことだ?
奴ら? あんたのクラスメイトって一体いつの話だよ。軽く80年以上は前だよね? というか100歳越えてるって言われても納得できる容姿だし、むしろガイコツになって動いてる方がまだ見栄えのある容姿だし、ゾンビかって言うくらい怖いよ、姿が。
「ふむ。俺を殺しに来たのかとも思ったが、どうも違うみたいだな」
ようやくこちらに振り向いた。
くぼんだ眼孔と浮き出るような目玉。目元の隈はあまりに黒く、歯は殆ど抜け落ちながらも少しだけ残っているのが逆に怖い。
骨は全身何時砕け散ってもおかしくない程にやせ細った老人。いや、もはや老人と呼べるだろうか、即身仏とでも呼んだ方が良いかもしれない。
一人称俺ってちょっと違和感しかないな。
「良ければ話を聞くかね? そちらに腰掛けたまえ」
「椅子は?」
「椅子? そんなモノがあると思うか?」
ここ、手術台でしょ、座ったら拘束されたりしないだろうな?
もしそうなったら頼むよヒルコ?
「そこは彼女の寝台だ。別に君を改造しようなどは思ってもいないさ」
んー、言葉遣いが違和感しかない。
まるで自分自身が若者だと思っているような言葉遣いだ。容姿と精神が合ってない気がする。
そんな即身仏もとい老人はくっくと笑みを浮かべる。笑うと一層怖いな。