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妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四節 燭陰
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自力で帰れ

「んじゃ、あたしゃー帰りますにゃぁ、これからライブだから急いで……あ、ちょっとマネージャー? どうした?」


 言葉の途中で電話がかかって来たらしく、対応する猫又。

 その顔が鳩が豆鉄砲喰らったような顔になる。


「はぁ? もうライブ会場着いた? 迎えに来ない? さっさと来い? ふざけんなっ!?」


 どうやらマネージャーにムチャぶりされたらしい。地団太踏んで憤慨し始める。


「なんで蹴り落とされた私が地力で外国向かわないといけないのよ! はぁ。待ってる? 迎えは無い? ガンバ? ざっけんなクソがっ!」


 確か、アイドルだよなこの女。ガッデムとかくたばりやがれとか罵声吐き散らしてるんだけど。


「ちょっとうわん。どうしてくれんのよ! ラボが全力を持ってサポートしてくれんでしょ!?」


「分かっている。既にヘリを手配している。送ろう」


「おお、話が分かる。ついでにあのマネージャー変えてくんない? 私に対して優しくなさすぎよね?」


「元からあのマネージャーだっただろう。こちらで用意してもいいが。その後は不満を言われても困るぞ」


「うぐっ。畜生。勝手がわかってるあのマネージャーじゃないと回らない。ぐすん。私アイドルなのにぃ」


 とりあえず、ただの姦しいお馬鹿娘であることは理解した。

 うわんと猫又が立ち去るのを見送って、私は空を見上げる。

 とりあえず、今回の襲撃は耐えきったと見ていいだろう。


 だが、ついに露見した。

 屋鳴りに対して迷い家は対処出来なかった。

 ケセランパサランに対して座敷童子はどうだっただろう?

 未だに私が幸運になった様子は見られない、未だに睨み合いが続いているのか、それとも他の要因でもあるのか。

 どの道、今の状況ではもう根唯達の元へは戻れないだろう。


 次は間違いなく、死人が出る。いや、もしかしたらもう、出ているかもしれない。

 だから……サヨナラだ。

 戻ってきた土筆と連絡を取って雲隠れがいいだろう。


 島の外へ脱出出来ればいいんだけど、流石にソレは無理だろう。

 高麗の話では海にも妖使いたちが網を張っているらしいし、とりあえず包囲が狭まるのを承知でこの島で潜伏するしかない。


 何かいい方法があればいいんだけど……

 そう言えば、過去に戻るなんとか、がいるって葛之葉が言ってたな。あそこに行ってみるか。

 どうせ自由の身になった私だし? 隠れ家的にもあそこは過ごしやすそうではある。

 空き家だから住むくらいは問題ないだろう。


 今回はなんとか撃破出来たが、これからはクラスメイト達は巻き込まないようにしないとな。

 さすがにこれ以上頼るのも悪いし、私のせいで死人が出るのは御免こうむりたい。

 だから、さよならだ。


 もともと彼らとは対処できないと私が判断すればさっさと逃げさせて貰うと言う契約だった、だからこれは普通のことだ。逃げたからと言って何か言われるようなことじゃない。正当な逃走だ。

 でも、少しだけ、ほんのちょっと、胸が痛い。


「ヒルコ、悪いけど……」


「うん、分かってる。皆には会わずに消えよ。会っちゃったら、なし崩しになっちゃうし」


 とはいえ、この狭い島の中、どこに逃げればいいと言うのか。潜伏先に使えそうな場所もあんましないし。

 とりあえず、海がどうなってるのか調べたいし、フェリーで脱走出来そうかどうかも調べた方が……待てよ、うわんたちが乗ってきたヘリに土筆の能力でひっついて行けば脱出出来たんじゃ?


 失敗した。とはいえ思いついたとしても土筆が居なかったからどうしょうもなかったんだけど。

 そうか、敵の乗ってるヘリで本土に脱出する方法は使えそうだな。あとで土筆と天井裏で密会しよう。

 そうだ。潜伏も土筆の天井裏なら過ごせるな。あの廃墟の天井裏に普段は潜伏、でいいかもしれない。


 よし、ある程度の方針は決まって来た。

 結構絶望的な状況ではあるけど、今まで通り敵の妖使いを撃破していこう。

 燭陰も私が倒してしまった訳だし、そろそろ一班が本腰入れて襲って来るだろう。

 暗殺班一班の室長、確か玉藻だったっけ? アイツも来ると思うし、土筆はあいつを倒すの譲れって言ってくるかもしれないな。


 あと、可能性がありそうなのは……麻桶の毛の妖使い、か。

 アイツ来るかな? 私に対して異常な敵対心持ってたけども。

 たとえ誰が来たってやることは一緒だ。

 逃げて、倒して、罠を張る。

 そして次の敵を倒す。


 この命が続く限り、徹底的に抗戦だ。

 川北はまだ気絶中なので放置して、私はあの蔦の生えた洋館へと向かう。

 ここでとりあえず土筆を待つ。

 土筆のことだし、直ぐに来るだろう。


 後のことはそこで相談だ。

 多分だけど私の言い分は通ってしまうだろう。

 だから、ここから先はまた三人だ。

 私とヒルコと土筆でラボに抗う。


 さぁ。行こう。

 潜伏の始まりだ。

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