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妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三節 袈裟羅・婆娑羅
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失策

 翼の攻撃を避けていく。

 烈風以外はほぼ大した攻撃を打てない翼は、テケテケと織り交ぜて攻撃を仕掛けて来るが、どうにも武器を持っていないので肉弾戦が主となってしまうようだ。

 そう言うところが翼なんだよなぁ。武器持って来とけば多少なりとも攻撃に幅が出るのに。


 御蔭で攻撃はしやすい。

 舌で掴んだ草薙は赤い腕で防がれるが、それ以外のちまちました攻撃は放っといても勝手に喰らってくれる。

 ヒルコがせっせと拾った石を高速で投げているが、それが足や脇腹を掠っている。

 地味に効いてるようだ。


 烈風使って跳ね返そうとすれば私達が距離を取って逃げてしまうし、慌てて引き戻そうとすれば黴付きの私が迫ってくる。

 もはや翼は詰んでると言っても過言じゃない。

 でも、諦めない。


 必死に致命傷を避けながら、私への起死回生の一手を探る。

 だが、足りない。

 致命的に攻撃手段が足りない。


 私に攻撃を当てるには、草薙の自動迎撃と黴、そしてヒルコによる迎撃を越えないといけない。私の感だってあるし、武装だって草薙、ナイフ、石つぶてなど多岐に渡る。

 だから翼には充分に対応できる。


 と、言う訳で、そろそろ仕掛けるとしようか。

 烈風が吹いて吹っ飛んだ拍子に角を曲がる。

 んじゃ、ヒルコよろしく。


 案の定、角で見えない私が待ち伏せしてるかどうかも確認せずに愚直に追って来た翼。

 基本お馬鹿なのはまだまだ変わりがないらしい。

 御蔭で不意打ちの一撃を叩きこめる。


 角をまがってやってきた翼の足元に草薙を設置。

 舌を使ってかなり下に設置して見たが、失敗。

 ギリギリで気付いた翼がジャンプ。


 直ぐに上に切り上げたが赤い腕に阻まれた。

 仕方なく舌を引き戻す。

 私の罠に思わず舌打ち。

 余程焦ったらしい。少し早口になっている。


「ば、馬鹿かテメェ、あんなところに罠しくなよ!?」


「敵相手なんだからバカも何もないでしょうよ?」


「クソが、真面目に闘いやがれ」


「真面目のベクトルが違うだけでしょ? 私はちゃんと殺しに掛かってるけど? 真面目にね」


 そう、真面目に殺しに掛かってる。

 その為に赤い腕が邪魔なのだ。

 ゆえに切り離す。


 翼の意識が完全に私に向いた。

 剣で切りつければ赤い腕でこれをガードしようと必死に動く。

 だから気付かない。


 私じゃないんだ。あんたが警戒すべき存在は。

 きっと、今まで散々行って来たが、自分が行われるとは思ってなかっただろう。

 不意に生まれた後ろの気配。翼は気付いてびくりと身体を止めた。


「おい、嘘だろ?」


 見てはいけない。そう思いながら欲望に抗えずに首だけを向ける。

 そして、見た。


「みぃーつけたぁ」


 翼のテケテケを完コピし、俯き加減のヒルコがニタリを笑みを浮かべた。

 驚き目を見張る翼。あまりにも衝撃的過ぎる姿に思考が止まった。

 次の瞬間。ヒルコにより振り抜かれる紫鏡のナイフ。


 翼の肩をごっそりと切り飛ばす。

 紫鏡の向こう側へ、燭陰と繋がる翼の腕と肩を切り離したのだ。

 呆気にとられた顔の翼から、ごとりと落下する燭陰の腕。


 結構呆気なくカタついたな。

 よろめきながら後ろを振り向く翼。

 身体ごと振り向いた場所に居たのはテケテケをまねたヒルコ。

 直ぐに私の元へと舞い戻り、体表面へと変化する。


「が、あああああああああああああああああああああああっ!?」


「武士の情けっていうわけじゃないけどさ。ダメージは無いようにしといたよ」


 切断面は全て紫鏡に消え去るので血すらも飛ばない。

 その場で途切れたように紫鏡側の肉片へと流れ込む。

 繋がっているのだ。世界は別ではあるが、繋がっているので血液は絶えず流れているのである。


 ゆえに切ったとしても血は出ない。

 しかし、翼と燭陰との縁は切られた。

 ゆえに翼は絶叫する。

 私に勝てなくなった事実に悲観して。


「があぁ!? クソ、燭陰がっ」


「これであんたの負けね」


「馬鹿か!? 勝ちとか負けとかじゃねぇんだよ! 燭陰にしてあった封印が解けちまうっ」


 封印?


「翼ちゃん。もしかしてだけど、それ、制御出来てないかんじ?」


「当たり前だっ! あんな危険なもん直で操れるもんか!!」


 そこ、当たり散らすように言うもんじゃないよ?

 しかし、【燭陰】は腕しかなかった筈なのに、なんか、変だな。

 ん? おい、なんだあの腕?


 びくり、びくりと蠢く燭陰。

 気持ち悪。

 慌てて翼が駆け寄ろうとするが。剣で威嚇してやる。

 そのせいで近寄ることすら出来ない翼。


「おい、高梨、アレを俺の腕に戻せ! 早く!」


 私を見て威嚇にもにた声音で叫ぶ。

 そう言いながらも腕に近寄れない翼。

 腕は不自然なくらいに付け根からボコりと膨れ始める。


「マズい、燭陰が……」


 あー、ラボのやりそうなことだな、翼が死んだらもろとも葬り去るつもりだったらしい。

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