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妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第一節 不落不落
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今なら狐がついて来る

「いやー、遊んだ遊んだ」


 追いかけっこはワタシが遅すぎるのでワタシを鬼にしないように駆けまわった。御蔭でワタシははぶられた気分を味わったよ。

 悪気は無いんだろうけどアレは酷い。

 他にもくーちゃんがいろいろとズルをしていたので暴きまくってやったらなんか怒られた。


 理不尽なんだけど? ズルする方が悪いよね?

 なんでそっちが正しいみたいな顔で怒れるのか不思議だよ。


 夕日が沈み始めたことで、自然とお開きになった狐少女との遊び。

 うーんと背伸びして酷使した身体をほぐす面々。

 なんやかんや言いながらも結構遊んだ。

 ワタシは結構走ったつもりだけど、動きが襲いので皆から気を使われてるのが何とも言えなかった。友達と遊ぶってこういうのなんだなぁって、ちょっと感動してます。


「それじゃーくーちゃんまたねー」


「また来るかも」


「今日は楽しかったべな」


 踏歌が大きく手を振って、美園が軽く別れを告げる。

 根唯が感想を述べてワタシが頷く。

 そして私たちは五人は神社を後にして帰宅の途に着くのであった。


 ……

 …………

 ……………………


 ……ん?

 ワタシはふと、人数を確認する。

 ワタシ、根唯、踏歌、美園、葛之葉。

 うん、ちゃんと全員山を下りて来てる。違和感は全く無……


 ワタシは参道でそいつを二度見する。

 立派な狐耳がみこんみこんっと揺れていた。

 普通に違和感なく美園と会話しながら着いて来ている狐娘。


「くーちゃんがいる!?」


「「「「え?」」」」


 ワタシの言葉に皆が驚く。なぜ葛之葉自身も驚いているのか。

 そして普通に葛之葉と会話していた美園、なんで目を見開いて驚くの?


「ホントだっ!?」


 驚く美園、自身が違和感なく話していた相手が葛之葉だと気付いて再度驚いている。


「なんでじゃ!?」


 そして気付かれていなかったことに気付いて驚くくーちゃん。

 いや、自分混じってるの今まで気付かなかったのかお前ら。といった呆れた顔をした。

 普通に気付かなかった。別れたつもりが一緒になって帰っているとは。背が低いから気付かなかったのかもしれない。


「なんだべ、くーちゃんも帰るべか?」


「帰るも何も妾に家はないのじゃ。折角だからそこの有高という女の家に行こうかと思っての」


 なんでワタシ?

 にやり、と笑みを浮かべたくーちゃん。なんかおもしろそうなのじゃ。と飛んでも発言をしてきた。面白そうだから家に押し掛けるってどうなんだ。


「まぁ、ええかぁ、雄也もどうせ許可だすだろうし、別にええだで」


 根唯が許可してしまった。

 まぁいいか。ただの狐娘のようだし、刺客って感じはまったくしない。

 たぶん大丈夫、だよね?


 踏歌と美園は家が違うので山を下りたところで別れる。

 随分と暗くなってしまった。

 さすがに30分掛けて山を降りると夕方から夕闇を経て夜になってしまっているようだ。


「にょほほ、なんぞひさびさに山を下りた気分じゃの」


「どんだけあそこで暮らしとっただか」


「なぁにほんの20年じゃ」


 いや、待て。お前の年齢から言って20年前なんて生まれてすら無いだろ。


「2年くらいだべか。よぅ生きとったなぁ」


「あ、信じとらんな。なれ、よいか、妾はただの人間ではなく本物の妖なのじゃぞ!」


「へー。そりゃスゴイだなぁ」


 あ、これ根唯全然信じて無いわ。


「あれ? 赤峰たちか?」


 不意に、男性の声が聞こえた。

 誰だ? とそちらを見れば、あぜ道をゆっくりと歩いて近づいてくるボヤァッとした光。

 提灯を携えた少年のようだ。


「芦田でねぇべか。こんな夜中になにしとんの」


 芦田興輝だっけ? 確か妖使いで能力名は【不落不落】だったっけ。

 不落不落とは提灯の九十九神である。

 夜中に揺れる提灯が不気味だったから生まれた妖怪だとも言われている。


「欲の発散だよ。俺は提灯持って夜中歩くのが欲なんだ」


「あー。それで散歩中なんな」


 折角明かりを持って来てくれたので私たちは彼を先頭にして歩きだす。


「で? 何してたんだ赤峰たちは?」


「雄也の野球が終わるまで時間潰しにおこぼれ山登ってたべや」


「暇潰しで山登んなよ。にしても……」


 と、言葉を濁した興輝はくーちゃんを見る。

 みこんみこんと揺れる狐耳に喉を鳴らして直ぐに視線を前に戻した。


「まぁ、なんだ。あんまし暗い時間に歩くなよ。明かりなんて殆ど無いから物騒だからな」


「じゃのぅ、神隠しに遭わんよう気をつけねばのぅ」


 にょっほっほ。と笑うくーちゃん。

 不審人物は君が一番怪しいよ。と思うワタシだったけど、それは言わぬが華と言うものだろう。

 学校まで案内してもらい興輝と別れる。

 ずぅっと校庭で待っていたらしい雄也と合流したのは、そのすぐ後だった。

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