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妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二節 荒魂
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襲撃者襲撃

「まだなの!?」


 一緒に走る賽音に尋ねる。

 目的地である渡嘉敷縷々乃の居場所はどこか、私の質問に賽音は困ったように告げる。


「もうすぐの筈だよ。でも、無理かも」


 既に背後には荒川が迫っていた。

 もう、少しでも足を止めれば追い付かれる距離だ。

 しかも向こうの方が速いのでだんだんと近づいている。


 むしろ賽音が力尽き掛けていて息も荒い。

 おそらくもう直力尽きるだろう。そうなればほぼ確実に捕まる。

 ここらがターニングポイントかもしれない。


 もしかすればもっと先まで逃げた方が良いのかもしれない、けど、こいつを人質に取られれば一気に形勢が不利になる。

 私は考える。

 ここで反撃に転じても良いのだろうか。

 追い付かれそうだが賽音を見殺しにすればまだ逃げられる。


 しかし、それはつまり賽音が荒川に何をされても気にしないということであり、無理矢理犯されたとしても見捨てるということである。

 同じ女としてそれだけは絶対に許せない。

 例えここで反転するのが死亡フラグだとしても、だ。ああクソ、結局私はツイてない。


「おおっと? 追いかけっこは終わりかい? 尻振りながら逃げてる姿はとても魅力的だったんだがなぁ」


 足を止めて反転した私達を見て荒川も足を止めた。

 私に逃げる気が無くなったとみたらしく、落ち付いた動きで歩きだす。

 隣を見れば、既に息も絶え絶えな賽音。

 ダメか。覚悟を決めよう。


 ヒルコ、武装準備。まずは……草薙!

 身体からせり出て来た草薙の剣を取り出す。

 まさか身体から剣が出てくるとは思ってなかったらしく、荒川が目を見開く。


「おいおい、有伽ちゃんよ。そりゃぁどっからだしたんで?」


「そんなモノ、言うと思う? 禁則事項です、って奴よ」


 剣を構えて正眼へ。

 悔しそうな賽音を後ろに下がらせる。


「こっちはステゴロだぞ!? 何得物出してやがるっ」


「悪いわね、こっちはバーリトゥードとか言う奴よ、殺し合いなんだし?」


「全く可愛げのねぇ。なんでもありかよ。まぁ、そう言うことなら、こういうのはどうだ? 俺はあんまし好きじゃねぇんだが、なぁ!」


 炎弾が飛んでくる。

 即座に避けたその刹那、背後に居た賽音に激突する。

 しまった!?


 凶暴化した賽音が琵琶を取り出し暴れ出す。

 こちらに攻撃が来たので草薙で受け止める。

 無駄に力だ強い!?


 吹き飛ばされつつバランスを整え着地。

 走り出す賽音が私に向けて襲いかかる。

 ああもう面倒臭い。

 放置して逃げとけばよかったかもしれない。


 琵琶を両手で持って振り被る。

 一撃を放つ寸前、飛び込み肘を叩き込む。

 呻く賽音の腹を蹴りつけ吹き飛ばす。


「おいおい、味方相手に容赦ねぇのか!?」


「ここで戸惑えば二人揃って死ぬからね。こういう時は思い切り動けないくらいまで叩き伏せた方が邪魔にならない」


「チッ、本当に可愛げがねぇ女だ。まぁ、そう言うのを躾けるのも楽しいから好きなんだがな」


 本当に最悪だなこいつ。

 剣を構える。

 あ、クソ、賽音が起き上がった。


 荒川が突撃して来たので対応しようとしたのだが、賽音まで突撃して来たのでバックステップ。

 すると賽音は私から荒川にターゲットを切り変えた。

 ナイス賽音。


「チッ、邪魔すんなっ!」


 荒魂喰らった賽音が荒魂喰らったらどうなるか、それは一層暴れ回るらしい。

 もはや何の区別を突かずに壁に琵琶を打ちつけ獣のように叫びながら涎垂らして荒れ狂う。

 女として完全に終わってる姿である。とりあえず写メ取ろう。


「テメェも喰らっとけ!」


「冗談っ」


 飛んで来た荒魂の一撃を草薙で弾く。

 もう一発!?

 ヒルコがナイフを渡して来たので左で持って消し飛ばす。


「今度は紫色のサバイバルナイフ!? 今のは消し飛ばしたのか。全くびっくり人間かよ」


 返しの一撃で草薙を一閃。

 クソ、外した。

 デカイ筋肉野郎の癖に動きが良い。


「はっはーっ。いいねぇ、じゃじゃ馬娘だ。乗りこなすのは大変そうだなっ」


「黙れ駄犬め、去勢してやるから覚悟しろ」


 隙なく構え、相手の動きに注視する。

 荒川も拳を握り、私の動きに注視する。

 徐々に距離を縮め、互いの間合いに入り込む。

 次の瞬間……


 荒川の側頭部を何かが突き抜けた。


「……あ」


 まさかの一撃に私は思わず目を見開く。

 襲撃者が襲撃受けて死んでしまった。

 どさり、荒川の身体が崩れ落ちる。


 同時に荒れていた賽音がはっと我に返り、ボロボロになった琵琶を見て頭抱えて叫びだした。

 正気に戻っても荒れるらしい。

 自分でやったことながら大切な物を破壊してしまって泣きだしている。可哀想に。


 しかし、今のは……

 通過した何かがどこから来たかと射線を追えば、民家の軒下からぶら下がった状態でスナイパーライフルを構えた土筆が手を振ってきた。

 そいえば、あいつ全然見掛けなかったな、狙撃するために荒川の意識が私に向くまで待ってたのか。

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