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妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二節 荒魂
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荒れ狂うものたち

「水虎!」


 泥田坊が居なくなってしまったので秋香が殿を務める。

 しかし、水虎すらも、あの赤い腕に触れた瞬間吹き飛ばされてしまった。


「来た来た! 手伝い来たよ!」


「有伽ちゃん、私頑張るよぉー」


 街道の先に居た二人が私を見付けて駆け寄って来る。

 私は二人を追い越し、さらに先へ、二人は足止めするつもりらしい。

 やって来てくれたのは小星先輩と柚葉。

 小星先輩は早速荒川の荒魂を直撃され荒々しく暴れ出していた。

 金太郎の妖使いだから女犯すと近寄った荒川を投げ飛ばしていた。


 彼女の貞操、大丈夫か心配だったけどあれなら大丈夫そうだ。

 柚葉の面霊気が翼の顔に装着される。

 驚く翼が操られ、荒川と同士打ちを始める……前に赤い腕が面を叩き割る。


「あら?」


「面付けた相手を操る訳か。悪いな、こいつは俺とは命令系統が別れてんだよ」


 荒川を放置して面霊気を突破した翼が私向けて走り出す。

 私以外の妖使いに手を出す気は無いらしい。

 その精神は称賛ものだよ翼ちゃん。


 でも残念その精神が命取り。

 ほら、小星先輩に襟首掴まれて放り投げられてやんの。

 相手が攻撃してこないから良い物の、翼は放置で良いんだよ先輩?

 殺される可能性だってあるんだからね。


 一先ずまた距離が出来た。

 だが、小星先輩が翼に向かったせいで荒川が放置されてしまった。

 荒川は二人の視線が翼に向かったのを良いことに少し遠周りで私を追うことにしたらしい。


 側面を回り込んで来るので民家に隠れてしまい相手の進み具合が分からなくなってしまう。

 近くの田んぼを見付けて楠葉が泥田坊を補充。

 水虎も海の水を使って手軽に作り出せているようだ。


 しばらく走ると、ついに荒川が追い付いた。

 側面からの荒玉攻撃を水虎が盾になることで防いでいく。

 本当に逃げるだけでいいのだろうか?

 対決すればそれなりに、いや、必死に逃げた後追い付かれたら反撃。だ。


 まだ逃走には余裕がある。今はまだ逃げるべき時なのだろう。

 本当に信頼していいかはわからない。でもきっと信じて大丈夫だ。アレはそういう存在だろう。

 ヘタな人間より妖能力によるものだから信頼出来る。


 街道は海沿いから街中へと入る。

 左右に民家が出現し始めた頃、荒川の一撃が秋香に直撃した。

 瞬間、水虎が暴れまくり、荒川の顔をずばっと切り裂く。

 爪痕が付き、サングラスが吹き飛んだが、ぎりぎり避けていたせいで顔に赤い筋が付くだけで済んだようだ。もう少し、前に来てれば顔面ごっそり無くなってたのに。


「クソ、暴れさせるのは良いが、近くに盾になる奴がいねぇと結局凶暴になっただけで襲ってくるのは面倒だなぁオイ」


 秋香はなんか乙女がしゃべっちゃいけない罵声を浴びせながらその場で地団太踏み始めた。

 余程許せないことがあったらしい。あの野郎とかクソ×××が! とか叫びながら水虎を暴走させている。

 さすがにそんな秋香には近づきたくなかったようで、荒川は彼女を無視して追って来た。


「これは、もう私しか防衛部隊が居ないっ!?」


「何かいい方法ないの楠葉?」


「もう少し進めば為替先輩と賽音さんがいるけど?」


「音関連の二人にアレ止められると思う?」


「無理」


 なんとか逃げてるけど荒川がしつこい。

 顔が血だらけになってるのに気にせず走って来る。


「有伽、こっち!」


「来ちゃったよ。あんたたち大丈夫なの!?」


「ダイジョブダイジョブ。琵琶と琴だけど問題……ぎゃぴっ」


 折角助っ人に来たらしい梃は荒魂の炎を側頭部に喰らってたたらを踏む。

 凶暴になった梃は何処からともなく琴を取り出し当たり散らすように振り回しだした。

 放置してさっさと走る。


「あの、為替さん放置してよかったの!?」


 賽音が焦った声を出すが、荒川が捕まえようとして琴の一撃くらい掛けて慌ててこちらに逃げて来たのを見て直ぐに訂正する。


「うん、大丈夫だった。アレはしばらく暴れさせとこう」


 琴が壊れまくってるがこの際仕方あるまい。

 何を思って琴を思いっきり地面に叩きつけてるのかは分からないが。


「仕方ありません。賽音さん、有伽先輩をよろしくです」


「了解。気を付けて楠葉さん」


 楠葉が殿に残る。

 泥田坊が荒川に襲いかかるが、荒魂を打ち込まれて暴れ出す。

 無防備になった楠葉は、近くにあった田んぼに飛び込み新たな泥田坊を作りだした。


 面倒な敵だと思ったらしく、荒川はこれを放置してこちらを追って来る。

 楠葉が追撃しようとしたところ、遅れてやって来た翼を見付けてしまい、仕方なくこちらの妨害を始めてしまった。


「三味長老みたいに音波攻撃出来たらよかったんだけど、まだ練習中なのよね。ワイングラスは割れるようになったんだけど」


 三味長老が出来ているのだから琵琶牧々の妖使いでも出来るだろう、と練習しているらしい。

 上手く出来ればいいが、今はまだ使える能力ではないようだ。

 そろそろ追い付かれそうだし、反転して攻撃に向かった方が良いのだろうか?

 考えながら逃げ続ける私だった。

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