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妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二節 荒魂
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逃走する影

 志倉翼と荒川竜司は高梨有伽を追っていた。

 既に見失ってしまっていたが、たまに道の先に移動する人影を見付けて追っていく。

 しかし、その道の先には誰もいない。


 周囲を見回してみれば赤髪の誰かが屋根の上に隠れる姿が見えた。

 あっちだ。と家の周りを回り込んで見るが、そこには誰もいない。

 かと思えば女の影が曲がり角に消える。


「クソ、遊ばれてやがる」


「高梨ッ、何時までも逃げられると思うなよっ」


「はは、なんかこうやって女の尻追っかけてるとワクワクするな」


「うるせぇ、テメェと一緒にすんな」


「いい女を追って追い詰めて一発ハメる。最高じゃねーか。まぁ、ちぃっと年が若いが、俺は気に行っちまったからな。殺す前に一晩貸してくれや」


「ざけんなっ」


「おいおい、そんな咆えるなって。もしかして惚れてんのか?」


「ぶっ殺すぞ?」


「おお怖ぇ。しかし……」


 不意に、竜司が立ち止まる。


「どうした?」


「ちぃっと気になることがある、あんたはそのまま追ってくれ」


「ちっ、パートナーだぞ」


 舌打ちしながら竜司を放置して追跡を再開する翼。

 そんな翼に手を軽く振って、竜司は逆方向に走り出す。


「もしかしたら、だが、まさかなぁ?」


 そして一分も経たないうちに、走り去っていった翼の真正面から竜司が出現した。


「おわっ!? なんでそっちにいんだよ!?」


「やっぱりか。で、影はどっちいった?」


「あ? お前が出てくる場所だけど……って、あれ?」


「やられたな。女狐に騙されてたって訳だ。クハハ、やるじゃねぇか高梨有伽。誰もいねぇのに影を追ってたってか?」


「んな。ど、どうしたら……」


「あっちのでも追ってみるか?」


 竜司が告げたのは屋根の上に見えた人影。赤い髪はどう見ても高梨有伽のモノだ。プチツインテールなところも見間違いは無いだろう。


「あっちが本命か!」


 そして竜司の言葉を信じた翼が走りだす。

 そんな彼の後姿を見送って、竜司は馬鹿がと蔑んだ言葉を残してその場で周囲を見回す。


「おそらく……ここだぁ」


「ひぃっ!?」


 適当な家の壁を乗り越え覗き込む。

 そこに、一人の女学生が潜んでいた。

 自身に掛かった影に気付いて上を見上げ、竜司の顔を見付けて驚き尻持ちを着く。


「テメェだなあの影操ってたのぁ」


「あ……ぅ」


 竜司の顔が恐ろしい。だから声が出せなくなり、必死に這いずるように逃げ始める。

 腕を使って壁をよじ登った竜司は敷地内に入り込み、少女を追い詰めるように歩きだす。

 涙目の少女、周茂美三留は進退窮まったことに気付いて涙を浮かべる。


「ちぃっと若いが、まぁいいか。せっかくだから一人くらい頂いてもいいよなぁ?」


「い、いや、いやぁーっ」


 美三留が悲鳴を上げた瞬間だった。

 竜司の身体が突如吹き飛ぶ。

 まるでハンマーの一撃でも腹に喰らったように、壁に叩きつけられた。


「がぁ!? な、なん、だ?」


「美三留ちゃんこっちっ! 急いで!」


「あ、く、暮阿先輩っ」


 美三留が這うようにして暮阿の元へと縋りつく。

 そんな彼女をお姫様抱っこした暮阿が即座に門から逃げ去った。


「クソ、そう言うことか……」


 妖力の一撃を喰らったらしい竜司は被りを振って立ち上がる。

 良い一撃を貰ったようで膝ががくがくしているが、気力で立ち上がる。


「敵は高梨有伽だけじゃねぇ、っつうこったな。面白くなってきたじゃねぇか」


 立ち上がり、ゆっくりと道路に出る竜司。

 既に暮阿たちは居なくなっているようだ。

 また一から高梨有伽を探さないといけなくなった。


「けど、俺にゃぁいい女を判別する鼻があるんだぜ? それに、よくよく考えりゃ妖反応追ってきゃ直ぐ見付かるじゃねぇか。あっちだな」


 後ろ姿を追っていたつもりだったので索敵の必要はなかった。

 しかし、どこか別の場所に行ってしまったと言うのであれば反応を探った方が速い。

 何しろ、高梨有伽には複数の妖反応があるのだから。


「待ちな。あんたはここまでだ!」


 移動を始めた竜司の前に、学生服の男が一人。額には日本一の鉢巻きをした彼は、刀を引き抜いた。


「桃田太郎、参る!」


 走り出す桃田。

 眼前に迫った炎弾を切り裂く。

 が、それは物理的な物ではなかったために素通りして顔面にぶち当たった。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ」


 狂ったように暴れ出した太郎を放置して、竜司は反応を追って歩きだす。


「悪りぃなぁ、あんちゃん。俺は女以外は興味なくってな。そこでしばらく荒れてやがれ」


 電柱相手に格闘を始めた太郎を尻目に、竜司は有伽向けて走り出すのだった。


「待ってろよ。俺が必ず抱いてやるからなぁ、クハハハハハ」


 荒々しき男を止めるモノ、それは未だ誰もいなかった。

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