表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第一節 不落不落
13/182

夕暮れの神社

「ほほぅ、記憶喪失なのか」


「そうなんだべや。だからあたしと雄也が暮らしとる家に住んでもらっとるんだぁ」


「ほぉぅ、何ぞ楽し気じゃのぅ」


 いつの間にか根唯とくーちゃんが意気投合していらっしゃった。

 くーちゃん聞き役に回ると凄く大人っぽい。そして根唯は乗せられて喋り過ぎである。

 ワタシたちのこと喋りすぎだよ。何故この島に流れ着いたか、有伽の状況、何かから逃げてること、結構赤裸々にご紹介してくれた。


 近くで聞いてたクラスメイトである美園と踏歌がそれ初耳なんだけど? と言った顔で何度かこちらを見て来る。後でこれは問い詰められるパターンじゃないか?

 どうしてくれる根唯。この二人に話したが最後、一気に拡散するぞ、こいつ等絶対口軽いし。


「にょほほほほ、なんじゃそこの梨伽という娘、そなた記憶喪失で何かから逃げてるとか訳ありじゃの、訳ありなんじゃろ。にょほほほほ」


 必要な情報はあらかた根唯から吸い上げたようで、楽しげに近づいて来たくーちゃんがワタシの前にやってくる。

 背丈の関係で見上げるような状態になった彼女は、ワタシを見てにひっと笑みを浮かべる。


「にょほほ、そうかそうかぁ、うん、まぁ、そうよなぁ。ふふふ、梨伽、のぅ、ほー、へー」


 何か見透かされるような嫌な感じだ。


「なに、か?」


「うんにゃ、気にする程でもないのじゃ。ほれ美園よ、今日は何して遊ぶのじゃ?」


 ワタシをしばしクンクンと鼻を鳴らして嗅ぎまくった後、何かを確信した顔をしたくーちゃんはとっとっと。っとリズムを付けた片足飛びをして神社の前へと辿りつく。


「えーっと、それじゃあ皆もいるし、なんかいい遊びない?」


「色鬼、かくれんぼ、鬼ごっこ、花一匁に泥刑、高鬼、缶蹴りえとせとら。何が良い? 達磨さんが転んだかや? それともカゴメカゴメかや」


「そんなに遊び方ってあるんだ!?」


「くーちゃんはいろいろ知ってる。今は廃れた遊びも一杯かも」


 えーっと、もしかしてこの島ではかくれんぼとかやったこと無いのかな?

 子供の頃は……あれ? ワタシ友達と遊んだ記憶がない。あ、これ混ぜられた別の人の記憶だ。妖能力付けられる時何人かの記憶も一緒にぶち込まれたせいだな。ラボのせいだ。

 大人たちは何個か知ってるのがあるみたいだけど、最近の子供たちは滅多に外で遊ばないからなぁ。友人が出来るのも幼稚園出であった子とかだし。


 公園で遊ぶこと自体がまずないのだ。

 だってだいぶ前にガキが公園で遊ぶな煩い。とか様々なクレームが入ったせいで全国区で公園は静かに遊ぶっていう暗黙の了解でできてしまったのだ。

 御蔭で公園で子供が集まっても携帯型ゲームをし合ったりおしゃべりするだけだったり、一緒に遊んでる姿はまず見なくなった。


 御蔭で遊具による事故はかなり減った物の、子供たち同士のグループ作りも極端に減ったことで個人同士での繋がりが殆ど無くなってしまったのだ。

 だから内向的な子供は家から出なくなり、拗らせる人が多くなってしまった。

 そして犯罪率が増えたと言うからなんとも自業自得な話である。


 御蔭で最近はもっと子供の遊び場を増やせ、という声が多くなっているそうだ。

 高港市も公園での子共が叫ぶ行為を許可しよう、という動きが出始めていた。

 といってもクレーマーもいるので今は住民を二つに分けての攻防戦になっている。


 結局かくれんぼをやろう、ってことで根唯を鬼にして皆で隠れることにした。

 かくれんぼ自体は皆やったことが無かったが、葛之葉がしっかりと説明してくれたので問題はなさそうだ。

 とはいえ、皆良く分かってないようで、ワタシのところからは踏歌のお尻が見えていたり、美園が木の上に居るのがよく見える。


 さすがにあれは見付からない気がする。多分根唯なら上見ることは無いだろうし。

 あとはくーちゃんだけど、どこだろう?

 ん? あれ? 狐の石像って、三つあったっけ?

 参道のド真ん中に鎮座する石像に気付いたワタシはむぅっと眉根を寄せる。


「あ、踏歌発見だべ」


「ええっ!? 見付けるの早いよ!?」


「隠れきれてなかったべな」


 まぁ、お尻見えてたら直ぐ分かるよね。って、あれ? 根唯さん?


「ほい、梨伽さん見っけ」


「あれ?」


「隙間から目が見えたべよ」


 覗いてたのがバレバレだったらしい。


「なんか悔しい。上を見ろちくしょう」


「ん?」


 ワタシはちくしょうっと告げてゆっくりと踏歌の待つ境内へと向かう。

 ゆっくり歩くワタシの後ろでちょこまかと動く根唯だったが、残りの二人が見付からない。

 むーっと周囲を見回しながら探す根唯。

 この近辺だけだから木々の合間とか雑草の後ろに隠れる以外は出来ないのだ。

 神社の境内下とか後ろとかを探す根唯だが、残念ながら残りの二人を見付けられない。


 だが、ふと顔を前に上げる根唯。

 丁度その視線の先には木の上にいる美園の姿。


「美園見っけ、だべ」


「あれ? 見付かった? おかしいかも、根唯なら絶対上に気付かないと思ったのに」


 ワタシがヒント上げたからだな。黙っとこう。

 そして最後の一人を探す根唯。私はおもむろに歩くと参道の真ん中に置かれていた稲荷像を蹴りつけた。


「あいた!?」


「石がしゃべったべよ!?」


「これは反則よくーちゃん」


 私の言葉でぼわんっと煙と共に石像が葛之葉へと変化する。

 痛いではないかとか言って来たけど反則してる方が悪い。全然隠れて無いじゃん。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ