表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第一節 屋鳴り
128/182

安全地帯へ

「よぉ、高梨」


「会いたくなかったなぁ、翼ちゃん」


 少し物憂げに、私は告げた。

 翼はこんな時までちゃん付けかよ。と舌打ちしている。

 隣に居た荒川が私の態度を見てぶふっと噴き出しクハハと笑いだす。


「お前、めちゃくちゃ子供扱いされてんじゃーん、翼ちゃん」


「うるせぇよ。クソ、しまらねぇ……」


 翼ちゃん程度がしまるとかしまらないとか言える立場じゃないだろう。

 しかし、やっぱ翼はあっち側だったか。


「いいの翼ちゃん。そっちについても出雲美果は居ないわよ」


「……今の俺はお前を止めに来ただけだ」


「止める?」


「師匠が死んで、真奈香が死んで、辛いのは分かる。でもよ、暴走して犯罪に走るこたぁねぇだろ」


 ……何言ってんだ?

 私のキョトンとした顔が面白かったのか、荒川が口を押さえて笑っている。

 翼が見当違いの話をしだしたことに気付いているようだ。

 もしかして、ただ言いくるめられてここに来たのか?


「ぶはっ、やべぇ、やべぇよ有伽ちゃんよぉ。こいつ、騙されてねぇか?」


「やっぱりそう思う? 翼ちゃん、私暴走してる訳じゃないんだけど?」


「なっ!? ど、どこがだよ! 直前までお前、犯した罪を償うっつってただろっ! だったらなんでこんな……」


「確かに、その時はどうでもなれって投げやりだったけどね、ラボのバカ女が私の父さん殺しちゃってさ、自分だったら別によかったんだけど、親殺されて自分も大人しく殺されるとかふざけんなって思わない? そもそもラボに行けば確実に人体実験。私は暴走したんじゃない、決意したのよ。妖研究所を……この世から消し去るってね」


「なっ!?」


 翼は思いもよらなかったのか? それとも情報が隠されていた?


「クハハッ、いい眼だ高梨有伽。その決意はいい女の眼をしてやがる。特別に抱いてやりたくなって来たぜ」


「私は願い下げだけどね。というか【荒魂】の荒川さんだっけ、残念だけど出直した方がいいんじゃない? パートナー翼ちゃんだとちょっとダメかと思う」


「俺もそう思うけどよぉ、これも上からの命令なんでな、それに、そいつぁ男だがなかなかおもしれぇ能力持ちなんだぜ?」


 テケテケが? いや、待て。

 今気付いた。普通に違和感しかなかったから逆に翼の腕と認識してしまってたけど、なんだあの赤い腕? なん……だ、あれ?

 ヒルコ、あれ、知ってる? 


「有伽、なんか嫌な予感しかしない。急いで逃げよう。アレは、なんかヤバい」


 耳元でヒルコが囁く。やっぱりヒルコもヤバいと思ったか。

 言われるまでもない。翼の奴どんなヤバいのに手を出したんだ?

 いくらなんでも何も能力使ってないと思われる状態で嫌な予感しかしない腕なんて劇物以外の何物でもない。

 多分だが翼にだって制御しきれないんじゃないかと思える程の危険物だ。


「一応、聞いてみるけど、その腕、どしたの?」


「これか? こいつはお前を止めるために小金井さんから貰ったんだ。【燭陰】だとよ」


 燭陰……?

 確か、身の丈千里、形は人面竜身で、赤色の妖怪だったっけ? 中国の妖怪じゃなかった? 日本人しかかからない妖能力なのに中国妖怪も発症すんの? しかもアレ腕あったっけ?

 詳しくは知らないんだけど、なんか嫌な気配が漂っている。

 おそらくだけどガシャドクロ以上に危険な妖だ。

 多分、グレネーダーからしても封印指定妖と判断されてもおかしくない。それくらいにヤバそうな気配がする。

 そうか、アレは多分翼の枷だ。あいつが私に絆されて裏切ったり、何かの拍子に邪魔になれば危険妖だと指定されて暗殺対象、もとい研究対象になるんだろう。


「有伽、使われる前に、逃げよう」


「分かってる。アンサー君からも家に逃げ込めって言われてるしね」


 問題は雄也がちゃんとあそこにいてくれてるかどうかだな。

 行くぞ。


「来るぞ!」


「なんだぁ、その腕は使わねぇのか」


「いろいろ制約があるんだよ!」


 背後にテケテケが現れる。

 気にせず走る。

 荒魂が飛んでくる。

 ステップで避け、草薙で弾き、荒川に突撃。


 拳握った荒川のすぐ横を駆け抜ける。

 拳を打ち込んで驚く荒川。完全に見誤って空振っていた。

 マジか!? と驚いているが、ネタを言うと私は直進してヒルコが私の身体を自分を支点にしてずらしただけだ。

 想定外の動きに翻弄されてくれたことだろう。


「おい、避けられてるじゃないか!」


「うるっせぇ、さっさと追えや!」


 チームワークは無いに等しいようだ。

 私は二人を振り切るように走り切り、出現状態の迷い家へと飛び込んだ。雄也は、いた!


「雄也、直ぐ異界に向かって!」


「へ? でも俺と根唯しか……」


「急げ!」


 私の切羽詰まった声に慌てて迷い家を異界に向かわせる。

 さすがに根唯も雄也も何が起こってるか理解できずに目を白黒させている。


「集まれ、言われたから来たけどさ、何があったの?」


「追われてたべな。ラボ来たんか?」


「ええ、ラボだけじゃなく知り合いもね、まぁ敵だけど」


 ついに学校に行ってる場合じゃ無くなってしまったらしい。

 そろそろ敵も本腰入れて来る。ヒルコには悪いがここまでだろう。

 逃げに転じないと、まとめてやられる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ