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妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第一節 屋鳴り
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会いたくなかったよ

 下足場を抜け、校外へ出る。

 するとヒルコが左側に反応を示した。

 そちらを振り向けば、やはりいる。


 随分と厳つい男だ。

 サングラスに白いスーツ。

 金髪だろう染めた髪は短髪で唇のピアスがヤバさに拍車を掛けている。


 口に咥えていたタバコをぴんっと弾くように捨て、靴裏でもみ消す。

 ゆっくりと迫り来る姿が圧迫感を産む。

 どう見てもカタギの人じゃないのだが……


「よぉぅ、妖研究所暗殺班一班の荒川竜司だ」


「あら、ご丁寧にどうも」


 放課後の学園。

 玄関口から出た場所で出会った明らかに異様な雰囲気の男。

 普通、自分の名前じゃなくてコードネーム告げるはずなんだけど、なんでまた名前を?


「一応、自己紹介した方が良い? 高梨有伽よ」


「はは、俺を見て恐れを抱かねぇとかなかなか擦れてんなぁ。しっかし、ここはいい学校だな。人は少ねぇが未来が明るい。いい女になる生徒が多いねぇ」


「女性だけかい」


「そりゃそうだろ。世の中の男ってなぁ出世か趣味の独走か女にしか興味ねぇんだ。俺は女が一番。いい女が育つのは大変結構。俺の女になるならさらに良しってなぁ。まぁ、残念ながらお前さんがいい女になる前に殺さなきゃならねぇってのがちょいと辛ぇ」


 つまり、私はまだいい女じゃないらしい。ざけんな。ちゃんと女だよ!

 女ばっかり寄って来て有伽好きとか言ってくるけど、普通に私は女だよ!

 やっぱ人殺しまくってるのがいい女じゃないってことなのだろうか?


「あっはっは。そんなイラッとした顔してんじゃねーよ。安心しな。あんたはただ年齢が足りないっつーだけだ。良い女になるのは分かってる。今回殺害対象じゃなきゃぁ数年後に俺の女にしてやるところだったのにっつーことだよ」


「ああ、そうですか。ようするにクソ野郎であることに変わりは無い、と」


 こいつは俗に言う女の敵って奴だろう。

 それでも女性が寄って来るってことは彼自体にはそれなりに女性が惚れる何かがあるのだろう。


「言うねぇ。俺はクソ野郎かもしれんがそんな俺を好きだと言う女は沢山いるんだぜ? あまりに多くて何人かは捨てちまったが」


 よし、マジの最悪なクソ野郎だ。狩ろう。


「ああ、ちなみにな、俺の妖能力は【荒魂】だ。よろしくなァ!」


 言葉と共に火の玉が飛んで来た。

 危なげなく避ける。

 荒魂なのにファイアーボール撃って来るだけか? 


「有伽、アレ!」


 なんだ? と振り向こうとした瞬間、ゾクリと背筋を這う何か。

 ヤバいと思ったが既に振り返る動作をしていたので後ろを見て……ぐぎぃっとヒルコにより強制的に首の可動域が止められた。

 ちょ!? 助かったけど、痛かったんだけど。今のムチウチになったりしない?


 背後を振り向きたいけど振り向いたら終わる。

 成る程、前回もだけど今回も、敵対するとよく分かるな。

 本来あいつ単体ではそこまで脅威にならない。振り向かなければいいんだから。


 でも、パートナーが加わるとそれが脅威へと変化する。

 何しろ、荒魂は即座に移動して私の後ろに隠れてしまった。

 振り向きたいけど振り向けば死ぬ。

 背後に居るのは志倉翼の妖能力、テケテケだ。


「指示お願い」


「了解」


 小声で告げる私に耳元で囁くヒルコ。

 指示だけじゃなくそちらに向かいやすいように身体を動かしてくれるのである程度向う方角は分かった。

 無数の火の玉を避けることしばし。

 玄関口からタイミング悪くやって来る飯草正樹。


 あの馬鹿!?

 私達が何か言うより早く、荒魂の火弾が飯草を襲う。

 直撃した飯草がぎゃぁっと仰け反った瞬間、何故か妖能力である鉦五郎を発動させ、狂ったように鉦鼓を鳴らし始める。

 なるほど、荒れてやがる。


 あの火の玉、当たると荒れ狂うらしい。

 直接的にダメージは無いのだが、下手に荒れ狂うとふとした拍子に後ろを振り向きテケテケに消される気がする。

 つまり、下手にあの火の玉を受けることは出来なくなった。


 テケテケが攻撃する瞬間を狙って攻撃すればダメージは与えられそうだけど、前回それで撃破したからな、ヘタすると対策立てられてるかもしれない。

 試してみるか? いや、今はとりあえず緊急報告皆に伝えて家に逃げ込むのが一番だな。

 一斉送信、行け!


「よし、後はあいつらどうするかだな」


 とりあえず試してみるか。

 ワザと後ろを振り向く。

 そこに居たのはやはりテケテケだった。


 振り向いた私に向け、刃を振り下ろす。

 ヒルコが背中から取り出した草薙を手にして受け止める。

 攻撃の瞬間だけ実体化する半霊体のテケテケ。攻撃時が最大の弱点なのだ。


 気合一閃私の一撃がテケテケを捕らえる。

 が、すり抜けた。

 なるほど、鎌と腕だけ実体化させてそれ以外は霊体のままにした訳か。

 なかなかやるじゃん。こんなことできるまで必死に能力使い込んだってことか。

 なら、とヒルコが動いて鎌を持った手を切り落とす。


「ぐぁっ!?」


「クハハっ、おま、結局攻略されてんじゃねぇか」


「う、煩いっ」


 既に荒魂の隣に居たらしい。

 ようやく私は懐かしい顔に出会う。

 出会ってしまう。

 翼……会いたくなかったよ。

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