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妖少女Ⅱ  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四節 謳う骸骨
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エピローグ・愛しき者への鎮魂歌

「……そう」


 抑揚のない声で、私は呟いた。

 来世が死んだ後日、落ち付きを取り戻した私は、大河和馬に頼んでアンサー君を使い、来世がアンサー君から何を聞いていたのかを聞いていた。


 正直、あの時疑問に思ったりしていれば、あるいは別の未来もあったかもしれない。

 彼が聞いたのは高梨有伽を助ける方法。

 どうすれば彼女を死なさずに済むか。


 齎された言葉は簡潔だった。

 お気に入りの場所にデートに誘い、代わりに死ねばいい。

 それだけだ。それだけで高梨有伽が死なずに済むそうだ。

 ふざけてやがる。


 私はきっと、本当なら三味長老に殺されていたんだろう。

 でも、その未来は訪れなかった。

 その未来を教えられた来世が自分の命を代わりに差し出したから。

 彼の妖能力、謳う骸骨の呪いが発動し、三味長老が死んだから。


 結局、どうあっても私と来世が付き合う未来は無かったらしい。

 ……なかったんだ。

 例え、今更付き合えば良かったかなとか、好きになったのだとしても、もう……遅い。

 もう居ないんだ。

 大切だと、失いたくないと気付いた時には既に失った後なのだから。


 だから、私は、もう一つの問いをアンサー君に尋ねていた。

 私は、この先どうしたらいい? って。

 アンサー君は一瞬押し黙る。


 でも、答えを告げてくれた。

 それがあまりにも酷い道だといいながら。

 それでも行くのなら、道の先に、約束の大地が待っていると。


 ならば、私は旅人だ。

 いつか辿りつく幸福に成れる場所を探し求め、復讐心を抱き彷徨い続ける旅人だ。

 どれ程辛く厳しい旅路だとしても、どれ程の血が流れる場所だとしても。

 たとえ、道半ばで息絶える運命だとしても……


 そろそろ、休息を終わりにしよう。

 歩かなければ。

 先へと進まなければ。

 一歩でも、踏み出して歩かねば。

 たとえ……この旅路の果てが、手に入れた全てを失う道だとしても……


 ------------------------------------


 ……

 …………

 ………………


 そこは、暗い部屋だった。

 部屋の中心には淡いエメラルドグリーンに輝く筒。そこに、彼は入れられていた。

 ピィーと機械音が響く。

 ガシュンと透明なガラス部分の扉が開き、筒から彼と、容器に満たされていたエメラルドグリーンの液体が流れていく。

 筒から出た彼に、しわがれた声が掛かる。


「これで、お主の身体に新たな妖能力が宿った」


「げほっ、はぁ……実感はねぇが、これが?」


「うむ。しかし、本当に良かったのか? 幾ら小金川室長代理の命令とはいえ……」


「アイツを止めるにも殺すにも、俺の力じゃダメなんだ。隊長も上下も死んじまって、暴走してるアイツを止めてやるには、俺も相応の力がねぇと」


 彼が技術者に告げると、そうか。とだけ技術者は告げる。

 遅れ、部屋にやって来た男達が服を持って来る。

 彼はそこでようやく自分が何も着ていないことに気付く。


「しかし、こりゃ普通の生活も大変そうだな」


「仕方あるまい。まだ試験段階でしかないのだし。それは本来日本に存在する妖能力ではない、神の如き力を持った外国の妖だ」


 腕を持ち上げる。

 その腕は、赤く、まさに人外のように、太く、硬く、長く、赤銅のような光沢を持っていた。


「待ってろよ高梨……隊長や上下の代わりに、俺がお前に引導渡してやる」


 彼……志倉翼は決意に満ちた瞳を向ける。

 遥か彼方、海を越えた島に居ると連絡を受けた、高梨有伽を殺すために――――

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